平賀城2
【side栗林紅】
私が逃げれば、姉さまはコンレイなんてしなくていいんだ。
姉さまは泣いてた。平賀を離れたくないって。
1人でも隠れられたけど、誰かと一緒だと楽しかった。
いさぶろうはお城の中を良く知ってるみたいだ。
あちこち隠れたり、逃げたり。でもみんな忙しそうで誰にも捕まらなかった。
美味しそうな匂いに足を止めて覗いたら
「食べますか?」とまんじゅうをもらった。
「うまいな」
いさぶろうもうれしそうだ。
「お膳に乗せられた食べ物より、こうやって立って食べる時の方が美味しいのにね。大人は知らないんだ」
そんなこと言ってたら「こちらで食べててください」と庭に追いやられた。
「庭で食べるのもうまいぞ」
どうやら いさぶろうは話の分かるやつらしい。
次は大きな部屋に出た。
少し開いてたから中をのぞいたら、金色のびょうぶがある。
描かれている絵も2羽の鳥が楽しそうに飛んでて
「キレイ」
本当に輝いている。
「なぁ、早く行こうぜ」
もっとゆっくり見たいのに、これだからゲージュツの分からない男ってイヤだ。
「いさぶろうはこの絵を見て何も…」
思わないのか。と言いたかったけど言えなかった。
いさぶろうの後ろにばあやがいる。
「絵?見たけど?それより早く逃げようぜ」
ばか。いさぶろう、しゃべるな!
「次はどこ行く?俺の部屋に来るか?」
「いさ…」
「姫様!」
見つかった。
「どこにいらしてたのですか?みんなどれ程探したか」
「あの、ばあや」
「この子は?」
「えと…」
いさぶろうは、ばあやを目を見開いて見ている。
そりゃ驚くよね。古めかしい着物の、いかにも厳しそうなばあやだから。
「あのね、ばあや。この絵見て。ステキじゃない?こんなに輝いてるびょうぶ見たことある?」
「おぉ。さすが姫様。この屏風の見事さがお分かりに?」
でもね、ばあやはとても単純なの。
きれいな物が好きなのよ。そして古い物も。
「あの鳥は比翼の鳥と申しまして、二羽で一対。お互いがいないと死んでしまうように仲の良い鳥の夫婦を描いたものでございます」
「ヒヨクのとり……」
ほらね。このびょうぶ、ばあやも好きだと思った。
「そして下に描かれているのが、連理の枝と申します。死んでも尚、一緒にいたいとお互いが木になって枝を伸ばし合った夫婦の話から、夫婦仲が良いようにと願いを込めて描かれた屏風」
「レンリのえだ……」
夢中になって話すばあやには悪いけど、まだ捕まる訳にはいかない。
いさぶろうを見るとポカンと口を開けてばあやの説明を聞いている。
もう。行くよ。
いさぶろうの手を掴んだ。
「この屏風は栗林家に伝わる家宝。もとはと言えばこの平賀を治めていた栗林家。その証として……」
今だ!
いさぶろうを引っ張り部屋の出口に向かう。
いさぶろうも気付いて一緒に走り出した。
あと少しで廊下だ。
「伊三郎様」
知らない男の人が出口を塞いでいる。
「大瀬……」
いさぶろうの足が止まった。
「そろそろお戻りください」
優しい話し方だけど、言う事聞かないといけない感じの人だ。
「伊三郎様!」
いさぶろうが俯き悲しそうに部屋を出て行った。
そっか。もう逃げるの終わったんだ。
楽しかったのに……




