理想の女の子(JK)は泡沫の夢
*この物語はフィクションです
都内某所にあるマンションの一室。
普段はしない時間帯に、作業用机でモニターと向き合いながら必死に絵を描いている女性がいた。本来は納期には余裕がある仕事だったはずなのだが、私の期日の勘違いが一番の要因でその他にも何故か忙しくなったことにより、ちょっとまずいと思うくらいに急がなくてはならない事になった。
はじめは順調に進んでいたのだけど、普段しない時間帯であることや今までの忙しさから解放されたと思った矢先の出来事だったから、疲れもあってペンの進みが遅くなり眠気によるミスも多くなってきていたけど、それでも少しづつは完成へと近づいていけていた。だけど、睡眠と納期との葛藤の限界に負けそうになって耐えていたけど、ついには右手からペンが滑り落ちると机を転がり床へと落ちて大きな音が鳴った。
音に驚き少し眠気がさめる感覚と共に、落ちたペンを拾おうと下へと目を向けた。
下を探しているが、なぜかペンが見当たらない。くるりと周りを見渡してもどこにも見当たらない、こんなに広くて何もないのに何故見つからないのだろうと疑問を持ってなんでだろうと考えようとした時、目も前に差し出される手の上に探していたペンがあった。
お礼を言う為に顔を上げると……理想を絵にかいたような完璧美少女で制服を着た女子高生(JK)が立っていた。
お礼を言うのも忘れて立ち尽くしていると、目の前の美少女JKは手を差し出したまま不思議そうに首を傾けた。
「貴方の物ではなかったの?」
「いや、わたしのです!!!」
思わずペンと同時に彼女の手を握りしめていた。
わたしでも不思議に思ったのだけど、触れる事すら犯罪になるかもと思っていたのに、何故だか抵抗なく触れることが出来た。女子高生も振り払うことなくにこやかで、左手を包むように手を握り返してくれた後に話しかけてきてくれた。
「見たところひとりだし、もしよかったら一緒に遊ばない?」
「うっ…でも、犯罪に…」
「なんで?同い年ぐらいじゃないの?ちなみに私は高校2年生だよ」
「え?…いや、私はもっと年上…」
「え~うそだ~、どう見ても16歳ぐらいにしか見えないよ。だから一緒に遊ぼ?」
何故かと疑問は浮かべたが、コロコロ笑う明るい声と天使のごとき笑顔の前に些細な事は気にすることはないだろうと、返事に詰まりながらも彼女と話した。
「うっ…うん、遊ぼう!!」
女子高生は返事を聞くと、飛び切りの笑顔で嬉しそうにすると私の左手を取って走り出した。手を引っ張られながらついて行くのに必死で周りも見れなかったけど、手を引かれてついた場所は広い公園だった。
わたしの運動不足を実感しながら息を整えていると、女子高生は何して遊ぶ?と聞いてきたので、今の状態で激しく動くのは勘弁と思ってカバンから取り出したのはシャボン玉のセットだった。
「こ、これで…」
取り出した後に思ったけど、高校生にもなってシャボン玉で遊ぶのはあり得ないましてやこんな美少女となんてと、最悪バカにされて引かれるかもと嫌な想像までしてしまった。
「いいね!シャボン玉を作るの初めてなの!楽しそう!!」
女子高生は嬉しそうに笑って、さっき想像した事なんて一瞬で消え去ってしまった。女子高生が早くやろうと左手を引きベンチがある所まで行くと、わたしはベンチを机代わりにしてシャボン玉の準備をした。
準備をしている間も楽しそうに見続けていた女子高生は、わたしが出来たよと言って手に持っていたシャボン玉の道具から笛だけ取ると、楽しそうに色とりどりの泡を作り出した。大小さまざまな色で彩られたシャボン玉が辺りに広がり、シャボン玉は光を浴びてより鮮明に美しく見えた。
「ほら、おいで」
女子高生に左手を引かれるままに一つのシャボン玉の前まで行くと、触れてみてと言われたので触れてみると、割れる事もなく様々な形に変えることが出来たり、色すら変えることも出来る不思議なシャボン玉だった。
わたしはその事に疑問も感ずに2人で辺りに広がるシャボン玉を使って、形を変えたり色を替えたりくっつけたり、消してはまた増やしたりして2人で心行くまで楽しく遊んだ。
遊んでいくうちに、シャボン玉が決まった形の気に入った色に変えると、本来のシャボン玉のように戻ってから空まで飛んだ後に花火のように虹色に弾けて消えることが分かった。そのことが分かってからは、今あるシャボン玉を全部打ち上げようと2人で左手を繋ぎながら色々試行錯誤して遊んで、いよいよ最後の一つを完成させようとしたとき、隣で声を女子高生があげたので手が止まって思わず振り向いた。
「あっ!!わたしばっかりがシャボン玉を作ってたら貴方が楽しくないよね。今度は貴方が作ってみて?」
女子高生に言われた言葉を頭が理解するのに時間がかかって動きが止まると、思考のみが高速回転し始めた。
ジ・ジ・・リ・
それってつまり、かっかんせつ…いやいや、女子高生は善意で言ってくれてるわけで相手は気にしている様子じゃないし、そもそも私から言ったわけじゃないからこれは何も問題はないという事、そっそれに女の子同士だし全然普通の事だから、最近の若い子ならそんなことは当たり前で………。
「はい!どうぞ」
考え事で返事も出来ていなかったわたしに、女子高生はさっきまで使っていた笛の吹き口を私の口に近づけてきた。
ピィ・・ピピ・、ピッ・・・ピッピッ
わたしは左手は手を繋いでいるし右手にはシャボン液が入った入れ物を持っているから持つことが出来ないから女子高生も私が吹きやすいように口に近づけてきたわけで、このままくわえても何も問題は‥‥。
ピッピッ・・チチ、チッチッ・ピピ、ピッピッ・・・・
さっきまでは静かで私たち二人の声しか聞こえなかった公園に、遠くから聞こえてくる雑音がどんどん大きく聞こえてくる事も気になりだしてうるさいと思いながら目の前に迫る笛の事も気にしないといけない状態にパニックになる寸前に、一際大きく聞こえた音と私たち以外の声に目を覚まさせられた。
ウ~ウ~・・ィン、ウ~ウ~・・・・、ウ~ウ~、ウ~ウ~
「そこまでっす~~~~!!」
「えっ!!!ス・・」
驚きとともに跳ね上がるようにして飛び起きると、見覚えのある天井が目に入った。そのまま周りを見渡して自分の作業部屋で椅子ごと倒れているのだと状況を確認した後に、握ったままだった左手のデバイスとペンを手に体を起こしてから椅子も起こすと、寝室から文鳥が鳴く声と離れていくパトカーのサイレン音が鳴っていることに気が付いた。
まずは文鳥の遮光カバーを外してあげた後、あのまま寝てしまったと思い、まだ完成させれていない絵を見るためにパソコンのスリープを解除すると、細かい修正はありそうだけど後は目の色やハイライトを入れるだけで、ほぼ出来ていると言っていいほどまで絵は描けていた。
寝る前の記憶も曖昧だったから、ここまで書けていたのか疑問に思ったけど思い出せず。起きる時にも何かあったような気がして、何か夢を見ていたのか思い出そうにも思い出せずにただなんだかとても惜しいことをしたような気がするだけに釈然としない思いをしつつも、目も覚めてきたしどうせだから完成させてしまおうと椅子に座った。
「あれ?何で机の上にこれが?・・・」
机の上にはいつも通りのデバイスの他に、何故かカバンに入れていたはずのシャボン玉のセットが置かれていた。
不思議に思いつつもペンを手に取り左手をデバイスに置くと、何故だかいつもより楽しくて嬉しい気持ちになって絵を描くことが出来た。
そして、数十分後には描き上げた絵をみて満足したときに、何かがパチンと弾けるような音がして辺りを見渡したが、音の原因となるようなものはなくて気のせいだと思い席を立った。
窓の外に小さな泡がひとつ空へと昇り、太陽の光を反射して虹色に光りながら弾けて消えていった。
読んでくださりありがとうございます
*この物語はフィクションです
・完成度は上げようと思っていますが、もしかしたらすぐに消すかもしれないです