2話 出会い
前回までのあらすじ
飲食店のアルバイトをして生計を立てているホームレスおじいちゃん「本田幸平」は、異世界転生してしまう。
幸平が出たのは森なので集落を捜すことにした。
2話 村を見つけました
森を歩いていると、人の声が聞こえました。
話しかけてみることにします。
幸平
「すいません。一体ここはどこですかな」
私が声をかけると、銀色の鎧を着た男がこちらに気づいてくれました。
銀鎧の男
「なんだお前、ここで一体何してる」
男の周りにはほかにも緑色のローブを着ている人。弓を背にかけている人。着物を着ている人がいました。
その3人も私に気づき、どうやら警戒している様子です。
幸平
「私にもよくわからないのです。気が付いたらこんな所にいたものですから・・・」
銀鎧の男
「・・・ふむ」
ローブを着た女
「きっと酒場で飲みすぎたのよ、放っといてもいいと思うわ」
着物を着た初老の男
「しかしこのまま見捨てるのもいささか可哀そうでござる」
銀鎧の男
「そうだな」
彼らの話は終わったようです。
アイバーン
「俺はアイバーン。ついてこい。村まで護衛してやる」
幸平
「なんと・・・ありがとうございます」
私はアイバーンさんに付いていき街までたどり着くことが出来ました。
少し勇気がいりましたが、声をかけてよかったです。
カレクサ村
かつて金山で栄えた国の貴族によって作られた町。現在貴族は離れ、金も取れないため生活が苦しいものが多い街。周辺には、元村人がおこした盗賊のアジトが複数存在している。
アイバーン
「着いたぞ、幸平」
幸平
「何から何までありがとうございます」
アイバーン
「護衛金、出せるか?」
幸平
「お金・・・ですか」
私は自分の財布を取り出した。ちょうど1万円が入っている。私は1万円をアイバーンに渡した。
アイバーン
「なんだこの紙は?まぁ払えないよな・・・」
着物を着た初老の男
「仕方ありませんよ、行きましょう」
アイバーン
「あぁ」
アイバーンさんたちはそう言ってどこかへと行ってしまいました。
それにしても1万円が分からないなんて、どうやら私は本当に別の世界に来てしまったようです。
私は村を歩いて回りました。
くたびれた顔の果物屋。愛想のない宿屋の受付。話を聞いてくれない雑貨屋店員。
この村に住んでいる人たちはとても幸せとは思えない。それが私の第一印象でした。
夜も更けてきたので、私は宿屋に入りました。
昔やったゲームでは宿屋に泊まることが出来たのですから、ここもきっとそういう所なんでしょう。
宿屋の店員
「お泊りですね。20銅貨です」
幸平
「銅貨?10円玉ならあるんじゃが・・・」
宿屋の店員
「ふざけてるんですか?銅貨がないなら帰ってください」
私はそう言われて店を出ました。
銅貨・・・。きっとこの世界の10円玉のようなものなのだろう。
私はそれを持ってはいなかった。
銅貨を稼ぐためにはきっと働かないといけない。
働くためには、資格や経験。人とのコミュニケーション能力が必要だ。
幸平
「仕事・・・か」
正直言って働きたくない。
私は最近アルバイトをやめたばっかりで、少し休憩しようと思っていた。
それなのに異世界に来て、1文無し。
・・・勇者様が助けてくれないのかな。
そう思いながら、私は夜を過ごした。
チュンチュン。
コーコケコ。
この世界にも鳥はいるようで、それらの鳴き声を聞いて目が覚めた。
宿屋の近くの路地で眠ってしまっていたようだ。
幸平
「仕事探すか・・・」
半分本音、半分嘘な小言を言って私は立ち上がる。
な~に。体力には自信がある。年金をもらって暮らしている老人とは違ってバリバリのキャリアおじいちゃんだぞこっちは。とりあえず面接してくれそうなところ・・・。昨日の雑貨屋に頼んでみましょうか。
そう思っていた時。
ドガーン!!
私の寝ていた路地のすぐそばで大きな物音がした。
振り向くとそこには若くボロボロの女が、3人の男に囲まれていた。
私はそれを見て見ぬふりして、路地を出た。
路地を出て街を歩きながら考えていた。
先ほど襲われていた女の事を。
私だって本当は助けにいきたい。できることなら男3人を殴り飛ばして守ってあげたいさ。
だが私には・・・そんな力は無い。年齢70過ぎの私が助けに行ったところで、彼女を助けることはできないだろう。それならば、私だけでも助かった方がいいじゃないか・・・!
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幸平
「前にも・・・こんな事あったなぁ・・・」
私が小学生のころ。クラスでいじめられている子がいた。ちょっと発言や行動が周りとは違っていて、クラスのお調子者たちはそれを面白がってからかっていた。私はそれを後ろの席で見て見ぬふりをした。昔から気は使える方だった。それとなくみんなと合わせて卒業することもできた。でも卒業した後思ったんだ。
彼の小学校は、楽しかったのかな、と。
彼はからかわれてもいつもヘラヘラ笑っていた。気にしているのか怒っているのかわからない不思議な男の子だった。学校のトイレで、彼と一緒になったことがある。彼はずぼんを限界までおろして小便をしていた。私はそれを変わってるな、と思ってみていた。
あの時、一声かけていたら。
あの時、一緒に遊ぼうって言えたら。
あの時、少しでも彼の負担を減らして上げられれば。
彼の小学校生活は、すこしマシになったかもしれない。
でも私は話しかける勇気が出なくって、1人でトイレを出たのだ。
私は気づくと宿屋に戻ってきていた。
この村は小さいから、すぐに1周してしまったようだ。
幸平
「行ってみるか・・・」
少しだけ。ほんの少しだけ。腹をくくった。
強面の男
「このドブスが!!さんざん迷惑!かけやがって!!」
女は男に殴られていた。とても見ていられない。
幸平
「やめてください、お願いします」
強面の男
「あぁ?!」
強面の男はこちらを振り返った。頭に血管が浮き出ていて昔働いていたうどん屋の店長に似ている。
強面の男は少し落ち着いた。そして
強面の男
「あんたは知らねぇだろうがこいつは俺たちを裏切ったんだ!俺の銅貨を盗んで!!モンスターの群れに置き去りにしてくれたんだぞ!こいつはこうされても仕方ないことをやったんだ!だからこれは・・・」
「仕返しなんだよ・・・!」
男はそう言って女を蹴った。女の体には力が入ってこなくなっている。
このままじゃまずい・・・。
私は駆け出した。何をするかなんてきめていない。
強面の男
「なんだ爺さん、この女に一目ぼれか!?・・・やめとけ。こいつはただの糞だ!」
男は女にめがけて思いっきり脚を振りぬいた。
幸平
「・・・かはっ!」
ボロボロの女
「・・・」
私は蹴りをお腹で受け止めて、彼女におおいかぶさった。
その後も何度も何度も蹴りを受けた。
覆いかぶさった時に見た彼女の顔は、ひきつっていて笑っているか。泣いているのかわからなかった。




