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××のした人生最大の失敗  作者: ジョリポン
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最悪の出会い

あの日からみくちゃんが家から出てこなくなった。

 

毎朝家まで迎えに行くけど、スマホに『ごめんなさい今日も休みます』と返事が来るだけだ。だが、それも最初のうちだけで最近は返事も帰ってこないようになってしまった。

一体何があったんだろう。結里ちゃんとめあちゃんも何も分かってないみたいだし……。まさかこのままお別れなんて事ないよね?

 

 

ヴーヴー

 

 

仕事のメールが来る。最近多いな。金が溜まっていくのはいい事なんだけど状況が良くない。実は僕は学費を稼ぎ終わってある程度の貯金ができたら、この仕事を辞めてみくちゃんに告白する予定だったのだ。でもこのままじゃそれどころじゃない。早くこの状況を解決しないと。でも何をしたらいいのか思いつかない。とりあえず仕事に行く事にする。

 

 

────────────────────────

 

 

「どうも落人さん。今日もよろしくお願いします」

 

 

取引場所に行くとまたあの青年がいた。最近の仕事は大体この人なんだけど、おかしい。普通使用を始めて1週間くらい経つと、薬の依存性や副作用によってやつれたり精神に異常をきたしたりするはずなのだ。今までの客はみんなそうだった。それなのにこの客は薬の消費スピードも速いのに全然最初と変わった感じがしない。

 

 

「……お兄さん珍しいですね。1週間以上たったのに元気そうだ。もしかして自分で使用してないんですか?」

「お、そうなんですよ。実は僕ね、街で可愛い女の子を引っ掛けて遊ぶのが趣味でして。ほら、自分で言うのもなんですが結構見た目整ってるじゃないですか」

 

 

確かに。今までそんなにしっかりは見てなかったけど、よく見ると凄くカッコいい顔をしている。爽やか系っていうんだろうな。

 

 

「それでですね、先週凄く可愛い子を捕まえまして。今その子を薬漬けにして遊んでるんですよ。この前なんて日中なのに『お願い我慢できない』って呼び出されて。凄い興奮しますよね。あ、写真あるんですけど見ます?」

 

 

ふむ。凄く可愛いと言われると少し気になるな。まぁみくちゃんには敵わないだろうけど。そう思いながら見せてもらう。

 

 

そこに、写っていたのは。

 

 

 

「み……みく……ちゃん……?」

 

 

 

心臓が大きく脈打つ。そこに写っていたのはあられもない姿をしたみくちゃんだった。

 

 

「あれ、知り合いなんですか?」

 

 

言葉が出ない。そんな。嘘だろ? あのみくちゃんが、僕に懐いてくれていたあのみくちゃんがこんな……。いや、そんな訳ない。みくちゃんがこんな事になるなんてありえない。まだ写真で見ただけだ。もしかしたら他人の空似かもしれない。名前も偶然一緒なだけかもしれない。そうだ、そうだよ。まだ本人と決まったわけじゃない。落ち着け僕。大丈夫。違うという事を証明しないと。

 

 

「……前からこの子、気になってたんですよ。次遊ぶ時、僕も混ぜてくれませんか?」

「わかりました。じゃあ明日午前8時50分に原宿駅に来てください。いやはや、知り合いが出てきた瞬間、どんな顔するか楽しみだなぁ……ふふ」

 

 

大丈夫、別人だ。ちょっと覗いて適当なところで用事とか言ってさっさと帰ろう。僕の好きなあのみくちゃんがそんな事になっている訳がない。

 

 

────────────────────────

────────────────────────

 

 

今は何時? スマホを確認する。7時。メッセージが来ている。結里ちゃんだ。心配の言葉。苦しい。「酷いよ無視するなんて」「最低」聞こえるはずのない声が聞こえる。手の震えが止まらない。もうだめ。約束の時間は9時だけど我慢できない。もう行こう。おぼつかない足取りで玄関に向かう。

 

 

ピンポーン

 

 

インターホンが鳴る。きっと楽人くんだろう。足を止める。そういえば最近楽人くんにも返事してないなぁ。でもできない。今返事を書くと変な事を書いてしまいそうで。ごめんなさい。こんな今の私、楽人くんには見せられないよ。せめて楽人くんの中では綺麗なままの私でいさせて……

 

少しして玄関前から人の気がしなくなった。覗き穴から楽人くんがいない事を確認する。知り合いに見つからないよう人通りの少ない道を行く。

 

ようやくいつもの部屋の前にたどり着く。正直もう限界に近い。今にも倒れそうだ。インターホンを鳴らす。出ない。どうして。時間を確認。7時50分。そんな。早すぎてまだ誰も来てないんだ。一体どうしたら。その時視界の隅にガラス片が落ちているのに気がつく。なんとなく拾う。痛っ。あれ? 一瞬不安感がやわらぐ。もう一回。あ、これ、もしかして……。手首にガラス片を押し当てる。赤い血がたれてくる。

 

 

「あーすげぇ早く着いちゃったなぁってみくちゃん!? 何してんのオイやめろ!」

 

 

薄金髪の方の人が来て私を取り押さえる。

 

 

「お、おねが、お願いします……注射……早く……」

 

 

どうしようもなさすぎて涙が溢れてくる。

 

 

「あー、薬はな、カズが来る9時になるまでないよ」

「そ、そんなぁ……」

「と、とりあえず時間まで待とうか」

 

 

そして私たちは部屋に入り、9時になるのを待ちました。もう耐えられません。早く来てカズさん。早く。早く。

 

しばらくして玄関の鍵が開く音がした。やっときた。立ち上がり玄関に向かう。

 

 

「カズさん……注射、はやく……!!」

「うわみくちゃん!? まぁ待てよ。今日はみくちゃんの為にスペシャルゲストを呼んであげたんだよ」

 

 

ゲスト? そんなことより注射。早く。気が狂いそう。

 

 

「注射!! はやくください……!! はや……」

 

 

そう言って横に避けたカズさんの後ろから出てきたのは……

 

 

「……ら……楽人……くん……?」

 

 

嘘。そんな。なんで? どうして楽人くんがこの人たちと一緒に? というより見られた? この絶対に見られたくない状態を一番見て欲しくない人に。

 

 

「嫌……」

 

 

何も考えられない。頭が真っ白になる。体が鉛のように重い。動けない。

 

 

「いやぁぁぁぁ!!!!」

 

 

悲痛な叫びが室内にこだました。

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