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××のした人生最大の失敗  作者: ジョリポン
3/7

仕事の話、悲劇の始まり

「はぁ〜今日からまた学校かぁ」

 

 

僕の名前は白瀬楽人。今日で春休みが終わりまた大学が始まる。大変だなぁ。そう思いながら歩いていると、

 

 

「あっ、楽人くん! おはよ〜」

「みくちゃん!」

 

 

幼馴染のみくちゃんと出会った。出会いは確か小学校の通学班だったかな。そこで仲良くなって家も近いという事もあってよく遊んだりするようになったんだ。今も週に1〜2回出会って話したりしている。とても懐いてくれているみたいで正直凄く可愛い。

 

 

「そうか〜今日から高校生になるのか〜。いやはや早いもんだなぁ」

「あ〜、また子供扱いした! も〜」

「はははごめんごめん」

 

 

今日から高校生……矢岳高校って事は途中まで通学路が一緒になるってことか。いつも1人だったというのもあってとても嬉しい。小学の頃を思い出す。

 

そんな事を考えつつ、みくちゃんと話しながら歩く。それから数分。

 

 

「みくちゃーーん!! おっはよーーー!!!」

「あ、白瀬さん。おはようございます」

「おはよ〜」

「おはよう2人とも」

 

 

待ち合わせをしていたらしくことりちゃんの友達、結里ちゃんと芽衣ちゃんが待っていた。

 

 

「今日は結里ちゃん早いんだね」

「そりゃそうだよ! だって今日は入学式だよ!? 輝かしい高校生活最初の日だよ!? 楽しみすぎて早起きしちゃった!」

 

 

みくちゃんが楽しそうに会話している。よかった。やはりこの3人は一緒じゃないとね。

 

 

「それにしてもみんな無事入学できて本当に良かったね」

「その節はありがとうございました。ほら、穂乃果も」

「ありがとう楽人さん!!」

「どうも」

 

 

入学試験前、みくちゃんが結里ちゃんの学力を心配してたから、勉強を手伝ってあげたんだ。もしもあの時そうしてなかったらみくちゃんのこの笑顔は今なかったかもしれない。本当によかった。

そんな事を考えていると、いつの間にか交差点に着いていた。僕の学校はここから右方向にある。音ノ木坂はここを直進したところにある。つまり一緒に行けるのはここまでだ。

 

 

「じゃあ僕はそろそろここで。みんな入学式頑張ってね。」

「うん! またね。楽人くん」

 

 

そう言ってみんなと別れる。久し振りにみくちゃんと長時間過ごして、あの笑顔を見て改めて実感した。

 

僕ってやっぱ、みくちゃんの事が好きなんだなぁ。

 

 

────────────────────────

 

 

「そしたら結里ちゃんが……」

「ほうほう」

 

 

みくちゃんが入学してひと月。

毎朝みくちゃんたちと途中まで登校するのがお馴染みになっていた。今まで週に数回しか会えてなかったから毎日会えて話せるのは凄く嬉しい。

 

 

「それでね……」

ヴーヴー

 

 

スマホの通知が鳴る。正直せっかくのお話タイムなのであまり中断したくない。しかし、急ぎの用だといけないのでちらっと件名だけ確認しよう。なんてこった仕事の取引連絡じゃないか。

 

 

「おっと、ちょっとごめん」

「うん」

 

 

やむなく返事を打つ。早く返さないと久しぶりの仕事が他の人に流れてしまうかもしれないからね。

 

打ち終わってみくちゃんの方を見ると少し不機嫌そうな顔をしていた。そりゃそうだ。楽しく話してる途中に相手がいきなりメール打ちだしたら僕だって嫌だ。とりあえず何のメールだったかだけでもさりげなく伝えよう。

 

 

「ふう。久しぶりに仕事が入ったよ」

 

 

すると少し驚いた風な顔をして、

 

 

「なんの仕事してるの?」

 

 

しまった。そうだよね学費全部自腹で出してるのに久しぶりに仕事とか言ったら怪しいよね。でも何をしてるかは言えない。申し訳ないけど話を多少強引に戻させてもらおう。

 

 

「ん? 気になる?」

「うん」

「それはね……秘密〜」

「えぇー!」

「それより話の途中だったよね。その後どうなったの?」

「う、うん。えっとね……」

 

 

よかった成功だ。ごめんねみくちゃん。本当にこれだけは誰にも言えないんだ。なぜなら僕の仕事は……

 

 

────────────────────────

 

 

夕方、新宿路地裏。

今日の取引現場はここになっている。

 

 

「はじめまして。落人(おちひと)さんですか?」

 

 

今回の客は若めの青年のようだ。それなりに貯めてそうなおじさんでも1〜2ヶ月しかもたなかったから、これは結構すぐにダメになるかもしれない。この仕事上手く行く時はすごい儲かるから良いけど、すぐ客がダメになるから賭けがでかいなぁ。ちなみに落人っていうのは僕の仕事上の名前だ。

 

ん?結局何の仕事なのかって?

 

 

「……あまり時間はかけたくない。物はコレだ。代金を」

 

 

そう言いつつ粉の入った袋をちらつかす。

そう、僕の仕事は……

 

 

薬の売人だ。

 

 

────────────────────────

────────────────────────

 

 

「……あれ……?ここ、は……」

 

 

ふと気がつくと、見知らぬ部屋にいました。一体なにがあったんだっけ……? たしか新宿に服を買いにきて、帰ろうとしてた時に噂のカッコいい人に声をかけられて、一緒に店に入って……。あまり思い出せません。とりあえず外に出ないと。晩ご飯の約束、お母さんたちが待ってる。そう考えて立ち上がった瞬間、

 

 

「おはよう。やっと目が覚めたんだね」

 

 

扉からあのカッコいい人が出てきました。

 

 

「すみません! いつの間にか寝ちゃってたみたいで……。早く帰らないとお母さんが心配しちゃうので失礼します!」

 

 

そう言ってカッコいい人の横をすり抜けて

 

 

「まぁまぁまぁ、ちょっと待ってよ」

 

 

扉から薄金髪の男の人が入ってきてぶつかる。

 

 

「はじめまして〜。帰るなんて寂しい事言わずにさぁ、一緒に遊ぼうよ〜」

「す、すみません! この人は……?」

「彼は僕の友達だよ。『今から女の子と遊ぶんだけど来る?』って言ったら『行くぜ!!』って」

 

 

え?なんで知らない人まで呼ぶの?なんだかこのままだとやばい気がする。急いで帰らないと。

 

 

「ごめんなさい! 本当に、あの、用事があるので!」

「まぁまぁ、そんな事言わずに」

「でも!!」

「うーん、ねぇカズ。一旦大人しくさせた方がいいんじゃない? ほら、昨日凄いの仕入れたって言ってたよね」

「そうだな……。よし、じゃあ試してみようか」

 

 

大人しくさせる?耳を疑う。本当にまずい気がしてきた。逃げないと。

 

 

「帰ります!! 通してください!!」

「ちょちょちょっと! うわわ暴れるなって! カズ! 早くやって!!」

「やめて!! 離して!!」

「よし。こっちは準備できたよ。しっかり抑えといて」

「よっしゃ!」

 

 

後から来た薄金髪の人に床に組み敷かれる。動けない。カッコいい人……カズと呼ばれているその人はいつの間にか注射器を手にしていた。嫌だ。怖い。やめて。助けて。誰か。結里ちゃん。芽衣ちゃん。お母さん。

 

 

楽人くん。

 

 

腕にチクッとした痛みが走る。

なにかが注入される感触がす

 

 

瞬間。

 

 

今までに味わった事のない感覚が全身を駆け巡る。

 

 

「あ……ッ…………カッ…………」

 

 

全身の力が抜ける。

 

 

 

 

きもちいい。

 

 

 

今までの全ての事がどうでも良くなってしまうほどの快感が止めどなく押し寄せてくる。

 

 

動く気も湧いてこない。

 

 

身体を触られている気もするけど、それももはやどうでもいい。

 

 

そこから先の事はあまり覚えていません。ただ、何か大切なものを失ったような、そんな気はします。

 

気がつくと家の近くまで帰って来ていました。あ、そうだ。晩ご飯の約束。遅くなってしまったし謝らないといけないな。スマホで時間を確認する。知らない人からメッセージが来てる。

 

 

『今日は楽しかったね。アレ、気持ちよかったでしょ? みくちゃん凄かったもんね。明日も今日のとこ来てよ。また色々してあげるからさ。

p.s. 今日の事は全て録画してあります。明日来なかったり、誰かにこの事を言ったらわかるよね?』

 

 

血の気が引く。気分が悪い。家に駆け込む。

 

 

「みく? 遅いじゃない! 心配したのよ?」

「ご、ごめんお母さん……。今日の約束は無かったことにして……」

「え? ちょっとみく? 待ちなさいみく!」

 

 

お母さんの言葉を無視して自室に飛び込む。

あぁ、どうしてこんなことになっちゃったんだろう。考えるまでもない。親との約束を蔑ろにして知らない人について行ってしまったからだ。高校生になったからって調子に乗ってしまったからだ。どうしよう。自分の選択を悔やむ。誰か……誰か助けて……

 

 

 

 

それから毎日あの人たちに呼ばれて、注射を打たれて色々な事をしました。録画された映像を見せられたりもしました。こんな姿、誰にも見せられません。せめてみんなの前ではいつも通り元気でいよう。

 

 

────────────────────────

 

 

水曜日、朝、待ち合わせ場所。

今日も頑張っていつも通りを装いながら楽人くんと芽衣ちゃんとで話しながら結里ちゃんを待つ。みんなと一緒に笑い合うこの時間だけは嫌な事を忘れられる。もしこの時間が無くなってしまったら……いや。やめよう。最近なぜか暗い事ばかり考えてしまうようになってしまった。いけないいけない。今は楽しい時間なんだ。気付かれないようにしないと。

 

 

………………

 

 

あれ? いつの間にか話が終わってる。話題が尽きたのかな。なにか話さないと。

 

 

「そういえばこの間服を買いに行ったんだけど、凄いかわいいのがあって……」

「……みくちゃん、大丈夫?」

「……ふぇ?」

「いや、最近なんか無理してない? 週明けくらいから元気が無いように見えてさ」

「そうだよみく。いつも一緒にいるんだよ? 隠そうとしていても分かるよ」

 

 

よく見ると2人とも心配そうな顔をしていた。そんな。いつも通りに振る舞っていたつもりだったのに、全て筒抜けだったの? 猛烈な不安に襲われる。

 

 

「そ、そんな事な

「みくちゃん!!! おっは「ひぃぃ!!!」よ……あれ?」

 

 

気がつくとしゃがみこんで丸まっていた。あれ? なんで? どうしてこんなに怯えてしまってるんだろう。周りの人がこっちを見ている。3人が心配そうな目で私を見つめてくる。やめて。何か話しかけてきてる。よくわからない。とりあえず謝らないと。

 

 

「あ……ご、ごめん……結里ちゃん……な、なんでもないの。少し、驚いちゃった……」

「少しっていうか……」

 

 

結里ちゃんたちが何か言おうとしている。やめて。聞かないで。言えないよ私があんな事になってるなんて。

 

 

「あの」

「ご、ごめん! 結里ちゃん芽衣ちゃん楽人くん! 私先に行ってるね!」

「み、みくちゃん!?」

 

 

その場から逃げ出す。周りの視線、3人の心配そうな言葉が突き刺さる。もうだめだ。私、いつの間にか普通の生活もできなくなってしまったみたい。

 

学校に着く。周りの人たちがこっちを見ている気がする。私の事を話している気がする。やめて。見ないで。

 

 

 

結局その日は早退した。

 

 

 

もう嫌だ。どこに行っても見られている感じがする。噂されている感じがする。震えが止まらない。不安が押し寄せ続ける。どうしよう。

 

 

そうだ。

 

 

 

 

あの注射を打ってもらおう。

 

 

 

 

あの間は何も考えなくていい。全身に広がるきもちよさに身を任せるだけでいい。不安も何もかも全部アレで吹き飛ばしてもらおう。

 

今日はまだ約束の時間になってないけど連絡をとる。

 

 

『もう我慢できません。早く、早くお願いします。なんでもします』

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