最終話
いつも本当の娘のように優しく抱きしめてくれた義母の前で膝を折り、ヴェールを下ろしてもらう。
長い間、自分から手を伸ばすのを待ってくれていた義父の手を取り、バージンロードを進む。
兄に、友に、仲間に祝福され、目指す先にいるのは愛しいあなた。
生きる支えとなった人。
可愛くて、優しくて、かっこよくて、少し変で。
でもやっぱり、可愛い人。
この世界で一番に私を愛してくれる人。
アイシャは義父の手を離し、イアンの手を取った。
そして彼に導かれ、神の御前に立つ。
壇上の司祭は二人の顔を見やり、小さく頷いた。
「汝、病める時も。健やかなる時も。富める時も貧しき時も。互いを妻として、また夫として。愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
「はい、誓います」
「誓います」
二人は司祭の問いに答えた。
とても力強く。少し性急に。
司祭はにっこりと微笑み、イアンにヴェールを上げるよう促した。
そしてコホンと咳払いをする。
「えー、それでは、お二人に誓いのキ…………スはもうしてましたね」
自分の言葉を待たずに熱い誓いの口付けを交わした二人に、司祭は苦笑した。
らしい、と言えばらしいオチである。
会場は大きな歓声と拍手と、微かな笑い声で埋め尽くされた。
遥か北の空には二人の結婚を祝うかのように、祝砲が上がった。
この日、アイシャ・ブランチェットもとい、アイシャ・エレノアはアッシュフォード男爵夫人となった。
(完)
皆様ごきげんよう、七瀬でございます。
いつも読んでいただきありがとうございます。
本作はこれにて、本編を終了とさせていただきます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
妄想と性癖を詰め込んだ結果、書き上げてみると、何故か30万字を悠に超えておりまして大変驚いております。
こんなに書くつもりはなかったのですが……、思いの外、筆が乗ってしまいました(^^;;
多分、二部が良くありませんでしたね。平和な南部から嫁いで来て、すぐにアッシュフォードに馴染むのも都合が良すぎるかなと思い、入れたお話だったのですが、思ってたよりも重くなりました。笑
しかしまあ、なかなかに楽しく書けた作品でしたので、良しとします。
さて、今後の予定です。
お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、本編ではリズとテオとランの三角関係が結末を迎えておりません。
というわけで、完成次第にはなりますが、番外編として3人の物語を更新する予定です(但し、予定は未定)。
彼らの恋の行方が気になる方はもう少々お待ちくださいませ。
それではまた。
長い間お付き合いいただき、ありがとうございました。
七瀬菜々




