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㐧3話 トイレに行っトイレ

この世には、切っても切れぬ関係にある両者が存在する。さながら車の両輪のごとくに。この世の森羅万象のすべてが陰と陽にてしめされるがごとくに。


たとえばカル=スワンとダグ=アルドリッチなどそうであるし、カイ=ハンセンにはマイケル=キスクであろう。どちらもHELLOWEEN抜けたけど。他に例を示せば、ブッチャーの相棒はシークであろうし、スコットノートンの相棒はやはりヘラクレスヘルナンデス。そしてキングコングブルーザーブロディの相棒はスーパーフライジミースヌーカである。まあ、ハンセンとブロディの組んだ超獣タッグのほうが、当時世界最強の名を欲しいままとしたが故に有名であったのだが。


同じように、対となる事例が食事にも存在する。それは──『排泄』である。喰った以上出すのは当然のこと。古事記にも書いてある。喰わずにいればやがて死ぬのと同じで、出さねばやはり死んでしまうのである。これは速やかに行うがよい。尿を我慢すれば膀胱炎や尿道炎を誘発するおそれがあり、うんこを我慢すれば悪性の便秘や、それの引き起こす様々な病気のもととなり得るがためである。


この、排泄であるが、文明社会に生きる我々は通常、トイレで行う。横文字がわからんと云うのならば御手洗や厠としるす。──つまりはそこらここらでところ構わず糞尿をたれるはよくないということ。これは感染症予防の観点からも正しいこと。たれたくそを街の通りに放り投げていた近世フランスが伝染病の蔓延でどえらいことになった歴史からも、明らかなことである。


故にトイレに行って排泄するが正しいのであるが──ここに、またしても変なマナーが割って入ってきた。


「食事中にトイレに行くのは、マナー違反である!」


なにを莫迦な。今この糞尿は出口を求め、今このまたたく瞬間にも排泄口より今まさに出でんとしておるというに!


あふれ出そうとする糞どもを必死になだめすかし抑え込みつつ、この件について調べてみようではないか。


まず、食事中にトイレに行くなと申す論の根拠としては、「感染症予防の観点より、事前に排泄を済ませて手をきれいにしておくが準備」ということであり、また、「食事中にトイレに行くということは食事の相手を軽視していることに他ならぬ」と、いうものである。──なるほどもっともらしく、また、もっともであるようにも思える。街を糞尿まみれにした結果やばい病気が蔓延したフランスの例は、先ほど述べた通りであるが故に。


だが──果たしてそれは本当に正しいのか? わしは今にも漏れそうな糞尿を我慢しつつ、トイレの歴史を探るべくアマゾンの奥地へと向かった。



アマゾンの奥地にては、食事中にトイレに行くなとの確たる証は見つからなかった。各々方が好き勝手に、マナーがなっておらぬだの親のしつけの結果などと述べておるばかりにて、何らの参考にならぬ。──故にここは視点を変えて、トイレ事情についてよりの針路をとるに至る。


まずフランスにあるが、これはもうひどいもの。そもそも一般家庭にトイレというものは存在せず、『クロース・ストール』と申す箱型の、積み重ねた本を模した一種の『おまる』にて、くそをたれていた始末。これに溜まりに溜まったくそを窓より表通りに放り棄てる次第であるが、この時に作法があり、「おうい、今からくそを投げるぞぉぉ!」と、通りを歩く人にひと言声をかけてから放り棄てるのがフランス紳士淑女たちの礼儀であった。


通りより「おう」と、了解の返事があってよりくそを投げるのであるが、フランス人の皆すべてがサイ=ヤングやロジャー=クレメンスのような名投手ではない。だいたいそやつらはアメリカ人である。──当然、頭上より黄金の『洗礼』を受けた者が多数いたわけである。おお、神よ! 汝が黄金を浴びる時、汝が主が汝が顔に降り注ぐ!


それに比べるとローマ帝国は偉大であった。上下水道を完備し、水洗トイレまでもを中世の世に築き上げた。偉大なるローマ! それに引き換えフランスはどうか。ローマの支配より解き放たれた対価がこれか。


まあこのように、ローマ亡き後の欧州は慘憺たるもので、近世に入っても多かれすくなかれこのような有様。──故に当時、戦国時代真っ盛りな本邦に来訪した伴天連(バテレン)どもは、整備された上下水道に眼を見張り大いに文化的衝撃を受けたと記録に残るほどであった。


それもそのハズ。乾燥し冷涼な欧州とは気候が異なり、温暖にて湿潤つまり動植物、果ては病原菌に至るまでが棲息繁茂しこの世の春を謳歌する気候にあるが本邦にある。衛生管理をしっかりやらねば、疫病であっと云う間に全滅してしまうのであるから。


ではこのような、徹底した衛生管理からなされたが、食事中にトイレに行くなとのマナーであろうか?──それがどうも、異なるらしく、欧州発生のマナーであるとの説が、幾らか見受けられた。


欧州はあのような始末にあるが、しかし英国は事情が異なる。近世に於けるトイレ先進国にて、たとえばフランスはベルサイユ宮殿に唯一あるトイレは英国からの贈り物であるという。


これは期待できるやもしれぬ。英国のトイレをめざしまたしてもアマゾンの奥地へと向かう次第にあるが──



その結果、驚くべきことがわかった。



英国はイングランドの駅。そこにはビクトリア朝の様式にてつくられた格式ある看板が掲げられており、そこには、“Gentlemen, Please Adjust Your Dress Before Leaving” と、しるされていたではないか!


これは、「紳士方、どうか外へ出る前に身なりをお改めください」との文言にて、つまりこれがなにを意味するかと申すと、立派な英国産のイチモツをもろ出しにしたままであるとか、最後の何振りかをして雫を飛ばしながらトイレの外に出てはいけませんよ、とのことである!


ああ、偉大なる大英帝国の紳士からしてこうなのであるから、これはもうトイレに行った後に手を洗うを期待するが初手からの誤りである。そのような決まりごとがつくられたも、無理もないことかと思える。


だがどうであるか。本邦にてはうがい手洗い顔洗いは小学校にてしっかりと教え込まれる。「先生トイレ」と授業中に云うと咎められるは決して授業中にトイレに行くなと云う意味ではなく、「先生はトイレではない」との意味なのである!


無理もないこと! 先生がトイレであると認めてしまったが最後、2 Minuta Drekaの『KASUMI TOILET』のジャケのごとく物理的にトイレ人間に改造されかねぬのであるから! 縫い痕が離れた場所からも視認できるあたり、施術者は根来忍者ではないらしい。──こんなことでは安心して(マテリアル)には到底なれぬ。


いや2 Minuta Drekaの話はどうでもよい。確かにすばらしいポルノグラインドバンドではあるが。今現在はトイレの話である。西洋はもうだめだ。潔く見切りをつけ、眼をふたたび東洋に向ける。


するとどうしたことか。日本海を渡った大陸に、宴会中のトイレに関する記述があったではないか。


それによると、こうである。後の秦の宰相となる范雎は、もとは魏の人にあったが他人にねたまれ、謀略をもってして陥れられ、処刑をされることとなった。──それがなんともエゲツなく、簀巻きにされて宰相の家の厠に放り込まれると云うもの。宰相は人を呼び集めて宴会を開いた。酒が進むにつれ厠に人が立ち、それらが簀巻き人間范雎に尿をかけてゆくと云う次第。これにて、尿の海に溺死させる算段にあった。


宰相と申せば、君主を除いては最高権力者にある。当時は儒教真っ盛りにて、当然ながら異常に礼儀にはきびしかったであろうことは云うまでもないであろう。


そのような宰相の家にて開かれた宴会にて、食事中にトイレに立つが当たり前のように行われており、また宰相もそれを計算に入れてこのような手の込んだ処刑を思いつき実行したのであるから、これはもう疑いの余地はないであろう。



結論! 食事中にトイレに行くのはマナー違反ではない! 史記にもそう書いてある!



安心したら腹が減った。なにかわすれているような気がするが飯を喰う。腹が減っては戦はできぬ。


くちゃくちゃ……もぐもぐ…… あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!


見よ! 床がよごれてしまったではないか! 拭きたまえ!


いやだというのか! 嘘マナー吐きッ! きさまが云いだしたのだ! 責任はとってもらうぞ!


きさまのような連中は軽視されても当然だッ! 拭けいっ!

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