王妃様、始まります
Side エミリア
白雪姫の原本を読んだ私が真っ先に思ったこと。
いや、物騒!!
しかも実母のバージョンもあるし、めちゃくちゃ怖いな。そんなことを思っていた。もしも自分に継母の役が来たのなら、どちらかと言えば毒りんごよりも美味しいアップルパイを食べさせて王子を魅了した可愛い顔を綻ばせたいわ!!なーんて、ありえないことを考えていた。
で、今、私の気持ちとするならば気絶してしまいたかった。残念ながら私の心はそんなにか弱くなかったが。
「私が、王妃?」
昔からいろんな記憶があった。そして異世界転生だ!!なんて嬉々としていた。別に何かしたわけではない。元々、侯爵家の五人目の子供。三女で下にも妹が二人いるぐらいだから目立つことはなかった。そんな私に縁談は、ちょこちょこ来ていたが、決定的な縁談はなかった。
そんな私に舞い込んだのは亡くなった親友の代わりに後妻として王家に嫁ぐことだった。
「エミリア、そんな……。」
絶望したように母は呟いた。私の親友だったレイラが出産と共に命を落としてから、まだ一年しか経っていない。レイラが遺した姫は白雪と呼ばれる美しさの姫。エレノアと名付けられたその娘を抱きながら、その姫に実子とは思えない視線を向けていた王の姿を思い出す。そっと瞼を閉じた。この婚約の使者を務められている宰相閣下に向かい、カーテシーを披露した。王妃となったレイラと並ぶほどの淑女と言われた私のカーテシーに宰相閣下は満足気に笑った。
「キャンベル家の三女、エミリア・マリア・キャンベル。王妃となり、王の側にて支えることを謹んでお受けいたします。」
私、18歳と2か月。たった今、1歳2か月の娘が出来ることとなった。王は28歳。ロリコン、処女厨のクソ男から親友の忘れ形見を守るために、私の苦悩の日々が始まるのだ。