四つ目の宝
Side エレノア
急激に響いた轟音。それが城を落とす合図だった。傾れ込んできた敵兵の間を縫って、私達は城から脱出した。泣くな、泣いてはいけない。必死にそう心に誓いながらも、涙は滲んできていた。カーティスと馬に跨り、必死で馬は山を駆けている。サラもマリアもみんな自分で馬に乗っている。リリアンもだ。せめて、私が馬に乗れればマグリットは一緒にここにいただろう。そんな罪悪感に苛まれていた。
「『お嬢様』。お辛いでしょうがもう少し辛抱ください。」
カーティスの言葉に頷いた。辛くなんかない。お義母様や、マグリットの方が何倍も、辛い目に合うんだ。この程度、耐えないと。
『馬の蹄の跡があるぞ!まだ新しい、探せ!』
突然響いたのは男の声と、無数の馬の足音。ビクッと体か硬直した。
「近い、まずいぞカーティス!」
叫んだのはギルベルトだった。ギルベルトは弓を構えながらも馬を走らせる。
「私が、囮となりますわ!」
リリアンの声に止めてと叫びたい。でも、それはお義母様の意志に反することとなる。その気持ちをぐっとこらえた。
「ギャロン。リリアン様と行くぞ!」
「あぁ、リリアン様。いざとなったら、俺の馬の方に飛び乗ってくれ。受け止めますからっ」
「お兄様!付添の侍女がいないのは怪しまれます、私も行きます!サラ姉様!カーティス様!なんとしても我が国の宝をお守りくださいっ!」
その瞬間、リリアン、マリア、ギルベルト、ギャロンの4人と4匹の馬は方向を変えた。
「ご武運を……っ。」
4人にそれが聞こえたかはわからない。だが、気持ちは伝わったらしい。
「いたぞっ!ガキ連れてやがる、女もいる、貴族だっ!」
男の声が響き、そして馬の群れの音が遠ざかっていく。
「こちらも行きましょう。」
重たく響くカーティスの言葉。ちらりと横を見れば、サラの目にも涙が浮かんでいた。兄と妹が辛い道を選んだのだ。耐えている。私も耐えねば。泣き叫びたい気持ちを必死で抑えながら馬の上で山を越える。
空が白んでくる。
その瞬間、軍勢が見えた。先頭にいるのは銀の髪と、紫の瞳。その姿に涙が出た。
「エドワード叔父様!」
まだ私の声がしっかり出るのだと思い知った。その声に叔父は驚いた顔で私の姿を確認した。カーティスは叔父の目の前で馬を止めた。降りて、私を降ろし、そして叔父に跪く。サラも同じように馬から降りて跪いた。
「カーティス・べモート。王妃様の命で、王印、王剣、そしてエレノア様。我が国の3つの宝を届けに参りました。」
その言葉に思い知らされる。お義母様を助ける理由などないのだと。
「ご苦労だった。ベモート卿それと、サラ嬢。」
王の隣にいた侍従らしき男がカーティスから差し出された王印と、剣を受け取り、叔父はその剣を受け取り、そして天に向ける。
「これより、4つ目の宝、エミリアを奪還する。」
天にも響く雄叫びが上がり続ける。
お願い、お義母様を助けて。
そう願うことしかできないのだ。




