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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
18章:お買い物デート?

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 シェケルとブロンズの二人は、ちょうど水路から上がってきたところだった。二人とも膝から下が、がっつりと濡れている。


 コロンは、準備だけしていた防壁魔法の魔法陣を解除した。


「どうしたんですか、こんな所で。」

「水軍隊の訓練だよ。」


 ブロンズはワニの目をクリクリとさせ、手でクロールのマネをした。

 しかし、濡れているのは足元だけなので本当に泳いだわけではなさそうだ。


「お疲れ様です。」

「今、終わったところだ。」


 シェケルがいい声で答える。

 他の水軍隊の隊員らしい人たちも、ぞろぞろと水路から上がってきた。


「こんな所を歩く怪しいオーガを見かけてね。侍女と一緒にいたから、君らに違いないと思って声を掛けたんだよ。」


 怪しいは余計だ、ブロンズ。

 そりゃあ、オーガが街中を歩いているのも珍しいのに、小さな侍女との二人組。こんな組み合わせは他になかなか無いだろう。

 ともすれば、誘拐犯と思われそうだ。

 警察に職務質問とかされてしまうかもしれない。大丈夫かな。


 コロンはシェケルと話している。

 シェケルは元親衛隊隊長だ。つまり、コロンの元上司。今は異動して、新設の水軍隊を率いている。


「シェケル様、水軍隊は順調ですか?」

「隊員の練度も上がってきた。今では水難救助もスムーズだ。」

「お忙しくはないですか?」

「まあまあだな。これから兵士長の補佐の仕事に行かねばならないが、そちらの方が大変だ。」

「それは……お疲れ様です。後で差し入れをさせていただきます。」

「ありがとう。」

「どんな料理ができるか分かりませんが…」

「君の料理の腕は信用している。」


 コロンたちの話は盛り上がっているようだ。

 買い物はもういいのかな。

 仕方ないので、私はブロンズと話す。


「ブロンズさんも、もう自室に帰るんですか?」

「いや、今夜は夜勤だよ。この先にある水軍隊の詰め所で一泊さ。」


 なんか、ブロンズさんはきちんと仕事してるみたいだ。私と違って。

 将軍直轄部隊では夜勤なんて聞いたことがない。私は待遇には割と恵まれた場所に配属になったんだな。


「意外に夜間の出動が多くてな。水路に落ちる酔っ払いがいるんだ。」


 ブロンズはそう言って笑う。

 水軍隊って、レスキューみたいな仕事もするのか。


「忙しそうですね。」

「そうだ、知ってたか? この国の籠城軍ってのは防衛だけじゃなくて、警察も消防も救急も全部やってるんだ。」


 知りませんでした。


「俺は密輸の取締りもやったし、船の消火もやった。後、川底のゴミ掃除もな。」

「本当に大変だ…。」


 私たちの世界にも、軍隊が警察をやってる国があるとは聞いたことがある。

 どちらも武器を人に向ける仕事だから、親和性があるのだろう。国民の平穏のために敵に銃を向けるか、治安維持のために国民に銃を向けるかの違いか。


 少なくとも、私に「ちょっと署でお話し聞かせてもらおうか」とか任意同行を求められる事はなさそうだ。

 軍の人なら私の事を知っているだろうし、少なくともコロンが説明してくれる。

 誘拐犯として誤認逮捕される心配がなくなってホッとする。


「毎日新しいことが起きてて、飽きることがないよ。今日も朝から船の衝突事故があって…」


 警察の仕事だけじゃなくて、消防や清掃なんていう市役所が管轄してやるような仕事まで任されるだなんて。

 水軍隊って、なんとなく便利使いにされてるような気がする。


 待てよ…それって水軍隊だけだよな。私たちにもそんな事しろとか、誰かが言い出さなければ良いけど。


「数ヶ月前まで雪の中で鳥や鹿を追ってたのが、今じゃ一日水の中さ。」


 ブロンズはさらりと言うが、本当のところはどう思っているのだろう。薄暗くなり始めたうえに、ワニの顔では表情を窺い知ることは難しい。

 果たして、新しい人生に馴染めているのだろうか。


 水軍隊のメンバーは片付けをしていた。熱の魔法で濡れた服を乾かしたり、光の魔法で辺りを照らし始める。


「ブロンズさんも魔法は使えてますか?」

「無理無理。魔法陣(あんなの)なんて形が覚えられんよ。とりあえずは、念話の魔法だけ使ってる。しかも着信専用だ。」


 良かった。私よりも魔法苦手な人がいた。


「難しいですよね。」


 魔法陣が使えないのが、私だけではなかったことに安堵する。

 私の場合は、発動はできるが解除ができないだけで、発動すらできなさそうなブロンズよりはましな気がする。


「まあ、シェケル隊長のお陰で、まだなんとかなってる感じだ。隊長には頭があがらんよ。」

「頑張ってください。」

「ああ。そろそろ片付け手伝わないとな。またどこかで。」

「では、また。」


 ブロンズは仲間のところに戻って行った。

 コロンもシェケルとの話が一段落したところだった。


「お休みなさいませ。」

「ああ。差し入れを楽しみにしてるよ。」


 シェケルも笑って、水軍隊の仲間の所に戻っていく。


 シェケルのおっさんって、あんな顔もするんだ。

 私は転生させられた時のイメージが強いから、いい声以外の印象が無かった。

 コロンからも信頼されているし、ブロンズも頼りにしている。実は良い上司なのかもしれない。


 水軍隊の一団は、あーだこーだ言いながら荷物を片付けていく。


「そっちを先に入れると、出すとき大変だろ。」

「そっち持ってくれよ。」

「もっと片付けの時間短縮しないとな…。」


 私たちは、そんな様子を知り目に水路沿いの道から脇道へと入る。

 狭い道なので、体の大きな私とコロンが横に並んで歩くと道幅いっぱいになってしまう。


「ブロンズさんが元気そうで良かった。」

「水軍隊はとてもお忙しいみたいですよ。」

「ブロンズさんも、そう言ってました。」

「今は、水路の地図を作っておられるそうです。いつ作られたか分からない水路や、水深を調べておられるとか。」


 水道局顔負けの仕事だ。

 でも、みんな魔法陣から水が出せるのだから上水道はないのかな。

 となると全部下水と河川。


 …うへぇ、大変そうだ。


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