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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
18章:お買い物デート?

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 私は耳を疑った。


「ペガサスって食べられるんですか!?」

「割とよく食べますよ。今までもお食事にお出ししたことあるはずです。」


 まじか。どの肉がペガサスだったんだ?


「ペガサスって、あのペガサスですよね。羽根の生えた…」

「お馬さん。」


 そうだ、馬だ。馬肉と思えば普通じゃないか。いや、でも羽根の部分だから鳥肉なのか?

 というより。

 ペガサスなんて、私たちの世界の人間が空想した生物だろう?

 だいたい、馬みたいに大きな体にあの程度の羽根が付いてるからって、飛べるわけはないんだ。ファンタジーだよ。


 それが実在して、しかも食べられると言う。

 俄然興味が出てきた。

 

「高いんですか?」 

「いえ、お手頃ですよ。」


 私はその唐揚げを迷わずカゴに入れた。

 その瞬間、頭の中に何かの模様が浮かぶ。多分コーカの文字だ。


「なんだこれ?」

「今、頭に浮かんだのは購入金額です。カゴに入ってる商品の合計がいくらか表示されるんです。」


 なんて便利なんでしょう。

 これで買い物しすぎるということもありません!

 ただ、私にはまだエンドルの文字は読めないけれど。


 この肉一つで、おいくらなんだろう。

 あれ…待てよ。


「私、お金持ってない。」

 

 転生前には、財布の中には一万円は必ず入れていたし、毎月の給料からちゃんと貯金もしていた。

 しかし、ここは異世界。転生したらお金もリセットじゃないか。


「大丈夫ですよ。今までの分のお給料があります。」

「給料があったんですかっ!?」


 衝撃の事実。

 正直、私の立場は奴隷みたいなもので、衣食住を保障されるだけで無給だと思っていた。


「当然ありますよ。ちゃんとお仕事しておられたではないですか。」


 はい。ちゃんとお仕事してました。

 あんな事やこんな事、辛い事ばかりでしたが、給料があるというなら報われます。

 …ちょっと泣けてきた。


 私のお金はどこにあるんだろう。どこかの銀行に給与振込口座とか用意されてるのかな。


「これ、買ってもお金は大丈夫ですか?」


 一応確認する。


「はい、三百本は買えます。」


 そんなに要らないです。


 コロンは私の口座残高をよく知っているようだ。


 このペガサスの手羽先はひとつ二キロくらいあるだろうか。

 コンビニの唐揚げが百グラムで二百円として、グラム単価が同じくらいの値段と仮定すると…この唐揚げは一本四千円。

 としたら私の残高は百二十万円…。


 ありえない。

 転生して三ヶ月、将軍直轄部隊に配属されてからはもっと短い。そんなに給料が貯まるはずがない。


 仮定を間違えたのか。

 となると、ペガサスの肉は、コンビニの唐揚げよりもっと安いということになる。

 なんか…、ペガサスが安いだなんて、いろいろと夢を壊すなぁ。

 かっと言って、高ければ良いというものでもないし…。


 そんなことを考えながら、私たちは入口の所まで戻ってきた。すると頭の中でまた声が響く。

 

『会計が終了しました。またのご来店をお待ちしております。』


 見ると、カゴの色が元の茶色に戻っていた。


「もしかして、これだけで買い物終わりですか?」

「はい。簡単でしょう。」


 めっちゃ簡単。しかも分かりやすい。


 コロンは「次は一人で買い物も来れますね。」なんて言ってる。


 どうかなぁ。

 まずはエンドルの数字の読み方を勉強しないといけないな。おいくらなのかが分からないと買い物もできない。


「では、次のお店に向かいましょう。」


 ペガサスの唐揚げをコロンの空間魔法に入れてもらい、スーパーを後にする。


「次はかなり小さいお店です。少し大通りから離れますが、そこでしか扱っていないので。」


 暗くなってきたが、まだ顔は判別できる程度の明るさはある。

 橋を渡り、水路沿いを歩いていく。だんだん人通りの少ない方へと進む。


 この辺りは昼の街なのだろう。住宅街から離れているから、夜になると人気がなくなる。


「そう言えば。ルピアさんの事、聞かれました?」


 コロンが少し深刻そうな声色に変わる。


「いえ…何かあったんですか?」

「ルピアさんは、とうとう第一籠城軍への入隊を志願されたそうです。」


 そっちか。迷宮で怪我したとかでなくてよかった。

 先日の秘密の花園クラブ(仮)で、ルーブルの話を聞いてから、お姉様の役に立ちたいオーラ出しまくってたからな。


 コロンが少し悩まし気な顔をする。


「若くて、神官として未来のあるルピアさんが、軍に入る必要はありませんのに。」

「マンガン様のために、居ても立ってもいられなくなったんでしょうね。」


 いいじゃないか。やりたい人がやれば。

 私みたいに、無理矢理に、なし崩し的に、軍人にするよりは絶対に良い。


「若い人は真っ直ぐすぎるから、怖いんです。」


 コロンがため息をつく。


 コロンだって若そうに見える。見た目だけなら未成年と言われても違和感はない。下手するとルピアよりも幼く見える。

 それなのに、この大人びた雰囲気。一体あなたは何歳なんだ?


「ルピアさんは、やっぱり教導隊に入るんですか?」


 それとも、エスクードがあれだけ勧誘してたし親衛隊かな?


「まずは士官学校です。」

「今すぐにでもお姉様の元に行きたいでしょうに…。」

「そういうわけにも行きません。まだ子供ですよ。」


 ルピアがお姉様の元へ馳せ参じるのは、まだまだ先になりそうだ。


「おぉい。」


 突然、声を掛けられた。来た道に人は居なかったはずだ。

 誰だ?

 どこだ?


 水路の方から、びちゃびちゃと濡れたような足音が聞こえてきた。

 足音は一つや二つではない。


「おーい。」


 間違いない。呼び声も足音も、私たちに向かって近づいている。

 恐る恐る呼ばれた方に振り返ると、そこには見知った顔が並んでいた。


「ブロンズさん!」

「シェケル様。」


 私とコロンはそれぞれ別の人の名を呼んだ。


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