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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
15章:北部戦線異常あり

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 コロンが、エスクードに代わってルピアに謝る。


「ごめんなさいね。」

「いえ…軍隊に入るなんて考えた事ありませんでした。でも、今ならちょっと興味があります。」


 エスクードが、おっ!と言う表情に変わる。コロンはそれを肘で小突く。


「できたら、ルピアはお姉様の部隊に入って、お役に立ちたいです。」


 ルピアは一瞬、決意の表情を見せる。かなり前向きだ。

 本当にマンガンに心酔しているようだ。


 コロンはそれを諭す。


「良く考えてくださいね。その時の勢いや、気持ちだけで決めてしまうと後悔しますよ。」

「分かりました。軍隊を良く知ってから決めた方が良いですよね。」

「まあ、そうですね。」

「じゃあ、今から見学させてください。」


 エスクードはルピアのやる気に喜び、コロンは少し呆れている。


 ルピアは行動力もすごいな。私が十七歳の時にこれだけの事ができただろうか。

 十七歳、高校生。受験勉強してたか。


 勉強ばっかりで、あんまり楽しかったイメージはない。


「早速、親衛隊でも見に行く?」


 もうエスクードがナンパ師にしか見えない。

 大学のクラブ勧誘じゃないんだから。そんなに簡単に見学とかできるのか。軍事機密とかないのか。


 そこへ、タラが階段を駆け降りてきた。かなりの慌てようだ。


「まだ、ここに居たか。至急、謁見室へ来るように。」


 タラは私を指差す。


 なんだろう、緊急の用事? 謁見室ということならリラ将軍だろう。

 また、なんかわがままを言ってるのかな。

 もっと話をしたかったが、仕方ない。


「残念ですが、今日はここまでですね。」

「そうだ。念話の契約だけでもしておきませんか。」

「またゆっくりお話したいですね。」

「お菓子もお渡ししておきます。」

「これ、なんですか?」


 私たち別れ際をトロトロとしているので、タラが「早く早く」と急かす。


 リラなんだから、ちょっとくらい待たせても構わないんじゃないかな。

 いや…上司が来いと命じているのに、ダラダラしてるってのは良くないな。


「そろそろ行かないと。」


 将軍っていうのは、本来なら局長クラスのお偉いさんだ。

 リラと私たちとの距離感が近くなり過ぎてしまって、上司として見られなくなってきてるんだろう。

 良くない。反省、反省。


 とはいえ。しっかりお土産はもらう。コロンが空間魔法に片付けてくれる。

 ルピアは、本当に親衛隊の見学に行くらしい。これからエスクードが案内するそうだ。


「また連絡くださいね。」

「ありがとうございました。」


 そんな挨拶をしていると、また、階段を降りてくる人たちがいる。今度は割と大勢だ。


「待ちきれなくて、こちらから参りましたわ。」


 この声…まさか。


 階段の方を見る。

 銀色の髪に透き通る肌に、お人形のような美しい瞳。

 今日は黄色のドレスだ。赤くない。


「「レウ姫様!?」」


 エスクードとコロンが、驚いて慌てふためく。何とか礼をする。

 クーナとルピアは、何がなんだかわからないまま私たちの真似をして頭を下げる。


「ど、どうしてこちらへ?」

「そこに居るオーガの魔法の研究のためですわ。」


 前回会った時の最後にレウがそんな事言ってたな。私の『百花繚乱』を魔法の先生に見せたいとか何とか…。


「レウちゃんって、思い立ったが吉日だよね〜。」


 レウの隣でリラが笑う。

 その後ろにはバルボアとソル、護衛の兵士などが行列をなしている。

 将軍と将軍補佐、直轄部隊隊長に東宮の姫様まで。偉い人たちが勢揃いだ。


 あちゃー、やってしまった。これは本当に急がんとダメだった奴だ。


 コロンもエスクードも顔面蒼白になっている。エスクードに至っては、一瞬にして汗が滴り始めた。

 私も心臓がバクバクしているが、幸い冷や汗をかかない身体なので助かる。


 …助かる? いや、助かってはない。

 後でかなり怒られるんだろうなぁ。


「レウ姫様、何をこんなにお急ぎなのですか…?」


 バルボアも汗だくだくで何か言ってる。

 後で聞いたが、バルボアやソルが姫様と直接会ったのはこれが初めての事で、かなり緊張していたらしい。


「分からない事を、分からないままにしておくと眠れないからですわ。」


 レウは当たり前でしょ、と言う感じだ。

 どうやら私の魔法は、レウの安眠を妨害していたらしい。


「何か、オーガについて分からないことでもございましたか?」


 バルボアが、これ以上深く聞くのは失礼にならないかと、慎重に質問する。


 と、いうか。

 バルボアやソルは、レウが私の魔法に興味を持っているという前提を知らない。


 あの時ソルには、レウに会ってきたという報告はした。

 すると、それだけで軽率だの不敬だの羨ましいだのと、ソルたちはヤンヤヤンヤと騒ぎになってしまったのだ。


 …そもそも、真っ赤な血に染まった姫様のショックが大き過ぎて、私も詳細な報告ができなかったというのが本当のところ。


 だから、彼らは何がなんだか分からないまま、今の状況を迎えているのだろう。

 可愛そうな中間管理職…。


「分からないことだらけですわ。ねぇ、先生。」


 レウは行列の後ろの方に声をかける。


「こちらが研究対象ですね。」


 列の最後方から、聞いたことのある別の声がする。声の主が前に歩み出てきた。

 ダボダボのローブに細い眼鏡。そして眼鏡の奥の赤い瞳。


 先日、魔法の講義をしてくれたルーブルだ。彼女は握手をしてきた。そのまま、私の手を執拗にさすってくる。

 ちょっとうざい。


「あれ? 北部要塞へ応援に行かれてるんじゃ…」


 私が問うと、代わりにレウが答える。


「ルーブル先生には、今回の研究のために、戦場から戻って来ていただきましたわ。」


 レウの魔法の先生って、ルーブルだったのか。てっきり、しわくちゃのおじいさんかと思っていた。


 ってか、最前線に行ってた人を私の魔法(こんなこと)のために呼び戻しても良いのか!?

 大丈夫か、北部戦線!?


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