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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
15章:北部戦線異常あり

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「吐き気は、あ、ありますか?」


 クーナが聞いてきた。

 軽くはなったが、まだ気持ち悪さが残っている。組手で倒れたときは、こんな吐き気は無かったのに。


「ええ、少し。」

「気付け薬には改良の余地がありますね。オーガ用に強力にし過ぎたのかもしれません。竜脳か鹿の角の分量をもう少し調整して…」


 口に入れるからだよ…。あんなきつい薬を飲まされたら、誰だって吐き気がするって。

 私が溜め息をついていると、ソルが戻ってきた。


「目が覚めたか。ご苦労だったな。」


 ご苦労どころではない。

 私はジト目でソルを睨む。


「実験とは聞いていたが、あんな事をするとは思わなかった。大変だったな。ははははは。」


 この国の軍隊の、圧倒的な事前の説明不足は何とかならんか。

 振り回されるのは結局、下の人たちだ。


「そうだ。お前さんに客が来ておるらしい。将軍府に戻るぞ。」


 ソルが瞬間移動の魔法陣を準備する。が、


「お前さんは重そうじゃのう。」

「でででは、オーガを送りますよ。」


 クーナも瞬間移動魔法を開く。


「助かる。将軍府の正門前まで頼む。」


***


 私たちが将軍府に着くと、エスクードとコロンが待っていた。

 そして、もう一人。


「お久しぶりです。」


 ルピアだ。

 服装が違ったから、一瞬気付かなかった。明るい笑顔で、元気そうだ。


「こここ、こちらは?」

「神殿でお世話になった神官のルピアさんです。」


 クーナに紹介する。


「…? いや、なんでクーナさんが居るんですか!?」


 しれっと付いて来ていたのか。


「おオーガ専属トレーナーですから。」


 リラ将軍のお友達として将軍府によく来ているから、スルーされたようだ。

 もう放っておこう。


 ソルは私に「終わったら待機室に来るように」と言って、階段を昇って行った。


「今日はどうして?」

「ルピアさんは、休暇を使ってマンガン様に会いに来られたそうです。」


 コロンが説明してくれる。

 マンガンたち教導隊は北部要塞の攻略に行ってて、王都には居ない。


「折角来たのに、お姉様は戦場に行ってるって聞かされて…。とても残念です。」


 ルピアは俯きがちに言う。

 私は思わず聞いてしまう。


「お姉様…?」


 まだ、マンガンをお姉様と呼ぶのか。

 あれの中身は四十超えのおっさんだと伝えたはずだ。かなり凹んでいたと思うけど…


「はい。マンガン様は、ルピアの心のお姉様です。」


 この子、吹っ切れたな。


 おめでとうございます!

 マンガンに(一方的な)姉妹(スール)ができました。


 いやー、是非ともマンガンの話をなろう小説にして欲しい。『鬼教官の俺が異世界転生したら、美少女と姉妹(スール)(ちぎり)を交わしちゃいました。』とかいうタイトルなんてどうだ。

 ハラハラドキドキのバトルあり、あんな事とかこんな事とか、したりされたりのラブコメあり。


 …さておき。


「で、ついでに私たちに会いに来たと。」

「そういうことです。皆様もお元気そうで良かったです。」


 ついでにってのは否定しないんだな。


「テルルさんにもお会いできませんでしたが、ブロンズさんとは一緒におやつを食べました。」


 ルピアは、持っていた包み紙を見せる。

 神殿の絵が描かれたその包みは、神殿周辺のお土産屋さんで買ったものだろう。


 差し入れか。なんて気が利く子なんでしょう。

 …マンガンに渡す用だったお土産かもしれないけれど。


「神官のお仕事は順調ですか?」

「あれから大変だったんです! 迷宮の構造が全て変わって、地図が使えなくなったんです。」


 ボクっ娘神様が、迷宮を「模様替えするか」なんて軽い感じで言ってたのが、大事になってるみたいだ。

 上の者の気紛れで影響受けるのは、結局、下の人たちだよ。


「だから、神官が総出でマッピングしてるんですが、まだ地下四階までしかできていません。」


 一階層ごとが結構広かったし、地図を作るにも大変そうだ。


「…以前より御使いが強くて、まだ進めてないんですよ。」


 神様…、迷宮の難易度上げたんだ。

 半魚とかが、わんさかと出てくるようになったとか嫌だな。


「今の迷宮では、皆様が最深到達者です。」


 そう言って、ルピアは袖を振る。緑色の光が立体的な地図を形作る。前にも見せてもらった地下迷宮の地図だ。

 四階層分の塊の下に、少し離れて小さな塊がある。

 ルピアは端っこの三叉路を指差す。


「この地下七階から戻って来たわけですから、自慢して良いですよ。」


 カボチャの神様に送ってもらって、一瞬で帰ってきただけだから、自慢はできない気がするけど。


「あんなに混乱してたのに、ちゃんとマッピングしてたんですか。すごいですね。」


 コロンが驚きの声をあげる。きちんとやることはやっている。ルピアはデキる神官だ。


「親衛隊に入らないかい? 君くらい優秀な人材、是非ともうちに欲しい。」


 突然エスクードがスカウトを始める。


「エスクードさん、何を勝手に…。」


 コロンも止めに入る。


「彼女は親衛隊にピッタリだと思うんだ。まず、防壁魔法が完璧。高等魔法も複数使える。突発的なトラブルでもキチンと仕事をこなす。」


 エスクードが指を折りながら、ルピアの才能を褒める。

 ルピアはニヤニヤとしながら、だんだん顔が崩れていく。


「君さえ良ければ、デニ隊長に掛け合ってみるよ。」

「え…でも。」


 いきなり過ぎて、さすがにルピアも尻込みする。


「仕事は変わらないよ。神官は地下迷宮で人を守る、親衛隊は東宮で王族を守る。おんなじだ。」

「さすがに無理矢理ですよ。神官の仕事は他にもあるでしょうし、親衛隊の仕事も多岐にわたります。」


 エスクードの論理をコロンは否定する。


「似合うと思うんだがなぁ。もし、その気になったら、連絡ください。」


 エスクードがルピアと念話の契約をしようと手をのばす。

 そこにコロンが割って入る。


「そんなに強引に誘ったら、若い人には断りにくいでしょう。いい加減にしなさい。」


 コロンに怒られて、エスクードはしゅんっとする。


 夫婦漫才みたいだな、この二人。


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