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数日後…
薄暗い部屋の中で沢山の男たちに囲まれ、私は、まわされていた。
「もう止めて…ください。こんなに無理ですっ! もぅダメっ…。」
クーナの指導のもと、複数の魔法使いが私をまわす。
それを、兵士長ギルダーが眺めてニヤつく。
「…いきなり…こんな事。なんでっ?」
私は、友達のはずのクーナに助けを懇願する。
「お願い、助けて…。ゲホッ…だめ、出る。もう出ちゃう。」
「まだまだだ。まわせ。」
ギルダーが冷たい声で魔法使いに命じる。
ギルダーめ、絶対許さない。
「朝ご飯…出ちゃうって……ぁふっ…」
私は、とうとう気を失ってしまった。
「止めろ。」
ギルダーの合図で、私を固定している回転盤がゆっくり止まる。
回転盤には軸の上に長い棒が伸びており、私はその棒に束縛魔法で磔にされていた。
「まさか…角の亜人が、こんなことで気絶するのか。」
ギルダーが目を輝かせる。
「先日は自分で回って倒れた上に、一時間以上目を覚ましませんでした。反睡眠魔法で無理矢理に起こしています。」
ソルが先日の様子を報告している。
クーナは私に梯子を掛けてよじ登り、私の口に薬を入れる。
「ぐはぁ。ペッペッペッ!」
「おお、起きましたね。」
「クーナさん!? 何飲ませたんですか?」
「だだだだ大丈夫です。たただの気付け薬です。」
「気付け薬って、匂い嗅がせるやつですよね! なんで口に入れるんですか。」
「オーガは、にお匂いに鈍感ですから、しし仕方ありません。」
そうでした…、確かに匂いには鈍感です。
だからって、こんな刺激臭の強いもの口に入れられたらキツい。
しかも動けないから抵抗すらできない。
あー、気持ち悪い。
クーナは私から降りると、梯子を外す。
「よよ良いです。」
良くない!
一体、これは何をしているんだ。
私をグルグルと回して、皆で眺めている。
何これ。儀式なの?
何か降臨するの?
まずは胃袋の中の朝ご飯が、降臨してしまうよ!
「早くこれを外してください!」
「もう一度回せ。」
ギルダーが指示する。
魔法使いたちが、回転盤に魔法を掛ける。すると、再び回転盤が回りだした。
何だこの拷問。
誰も説明してくれない。
「ギャーー、目が回るーーー。」
ギルダーたちは、回る私を観察している。
「この転生者だから気絶すると言うことではないのか。」
「いや…、これは身体の問題ですな。魂は関係ないでしょう。」
冷静に分析するのはドラム先生。
テルルの上司で、前に太っとい注射をしてきた医師だ。
「身体の大きさに対して、三半規管が人間並みの大きさしかないというのは確認しています。そのため、平衡感覚を崩されると弱いようです。」
説明モードのクーナが、ドラムと話し込んでいる。
昨日、私の頭を透視魔法で覗いていたのは三半規管を確認するためか。
「それだけじゃない。遠心力で体幹部分の血が外側に引っ張られるから、脳への血流が減るんだ。だから気を失う。」
ここには透視魔法を使う魔法使いも何人かいて、私の身体の中や体調などの様子をモニターしている。
「止めて〜! 死ぬーー!」
私は叫び続ける。
が、間もなく、
「…ぅへぇ…」
また気絶。
「血管が太いから血液が外に寄りやすいのだろう。」
「この検体は子供ですから、大人のオーガはもっと血管が太いはず。恐らくこの結果よりも早く症状がでるのではないでしょうか。」
ドラムとクーナは分析を続ける。
「で、どうなんだ。これは、オーガの弱点と言えるのか。」
ギルダーが、ドラムとクーナに聞く。
「個体差はあるでしょうが、多くのオーガが回転に弱いはずです。」
「そうか、これでオーガを恐れる必要はなくなったな。」
ギルダーは満足そうだ。
「早速、軍団長に報告だ。北部要塞の奪還も早まるかもしれん。」
ギルダーは魔法使いたちを連れて部屋の外に出て行く。ソルとドラムもそれについて行った。
***
「ごべぇ!!」
また、クーナの気付け薬を飲まされた。
私は束縛魔法の拘束を解かれ、床の上で横になっていた。
「めめ、覚めましたか。」
覚めたよ、バッチリな!
ぶん殴ってやりたい気持ちをぐっと抑える。私の力で殴れば、錬金術師殺害事件が発生してしまう。
そうだ、ギルダーは?
辺りを見回す。居るのはクーナと数人の兵士。兵士たちは回転盤の片付けをしていた。
ギルダーもソルも居ない。
今朝、私はソルに呼ばれて、コロンや直轄部隊の皆と別行動になった。
ソルに連れてこられたのが第一兵舎のこの薄暗い部屋。
有無を言わさず束縛魔法で動けなくされると、変な回転する板の上に乗せられた。そこからは地獄の拷問だった。
「何だったんです、これ?」
私はクーナを問い詰める。クーナは説明モードで答える。
「オーガが回転に弱いと言う報告があり、その実証実験でした。弱いと言っても、目を回して起き上がれない程度かと考えていましたが、まさか失神するほどとは。素晴らしいデータが集まりました。さらに、今回は新しい気付け薬の実験まで出来て一石二鳥と言わざるを…」
もういい。
とりあえず、私を気絶させる実験をしていたという事は分かった。
クーナを無視して、立ち上がる。
足元がふらつくということはなさそうだ。でも、気持ちちょっと吐きそう。
「実験なのは分かった…。」
私は怒っていた。
クーナの襟首を掴んで持ち上げる。
オーガの力なら簡単だ。
「ひゃあっ。」
クーナを私と同じ目線の高さまで持ってくる。
「でも、実験する前に、どんな事をするのかちゃんと説明してください。」
「ひゃい!わわわわわ分かりました。」
私の怒りはまだ収まらない。
クーナとの友達関係はこれでおしまいだ。
念話を掛けてきてもブロックしてやる。
「おわ、お詫びに、は母のお土産のお菓子を食べましょう。」
ん…。そこまで誠実に謝るんなら、仕方ないな。
私たちは友達だからね。
登場人物紹介
「ドラム」
種族:人間(コーカ国民)
年齢:59
身長:176
体重:66
所属:軍立病院第1病棟医師
趣味:山登り(最近は行けていない)
備考:
軍立病院で第一線で働く医師。将軍の主治医でもあり、リラの居室に入れる数少ない男性。
軍のいろいろな所から頼まれて、仕事を押し付けられている。断れない性格。




