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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
14章:将軍直轄部隊 改メ お婿さん候補団

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七十八


 後、どのくらい時間が残っている?

 私はまだ、一つもアウトは取られてない。


 フォリントと私は背中を巡って、回り続けている。


***


 生活保護の担当者にとって、受給者(ケース)の家庭訪問も大事な仕事だ。

 受給者に直接会って、収入や生活状況の把握、就労指導や他の支援窓口の案内などを行う。


 今日も何軒かの家を回る。受給者の情報を持ったままで、他の受給者の家庭訪問をするのは、情報漏洩の危険があるから、本当は避けた方がいい。でも、そんなことを言ってたら、百件近い受給者の家を回る事なんてやってられない。


 まずは老人の一人暮らし。古いアパートの一階の奥の部屋だ。


  ピンポーン


「………」


 居ない。

 昨日、二時に行くって電話したのに。約束したのに不在とか、マジ許せない。


「まさかね。」


 突然、先輩が第一発見者になったという話を思い出した。

 ドアが開いていたので中に入って見ると、その人は壁に寄りかかって座っていたらしい。呼びかけても返事をしないので、寝てるのかなと思って顔を覗いてみると…


 背筋がゾクっとする。

 試しにドアに手を掛けてみた。


  キイ…


 開いてる。

 背中を嫌な汗が流れていく。


 とりあえず、もう一度呼び鈴を押す。


  ピンポーン ピンポーン


「………」


 出てこない。


「マジか、マジか、マジか。」


 先輩は、参考人として警察に呼ばれて状況を色々と聞かれたらしい。


 とりあえずドアを叩いて、大声で名前を呼ぶ。


「○○さん!○○さん!?」


 よし。これで出てこなかったら、今日は誰もいなかったことにして、帰ってしまおう。


「おぉ、すまん。」


 少しして中からおじさんが出てきた。

 良かった。生きてた。


 おじさんは六十五歳になったばかりで、老人と言うには若く見える。世帯類形で、老人世帯と分類されているだけだ。


「少し寝てしまってたんだ。上がってくれ。」

「失礼します。」


 私は用意してきたスリッパを履いて、部屋にあがる。


「布団敷いてあるじゃないですか。ガッツリ寝てましたね。」


 私は思わずツッコミを入れた。「少し寝てた」じゃないよ全く。こちらは冷や汗かいたんだぞ。


「本当にすまん。」


 こちらは朝から仕事してるのに、そつちは昼寝なんかしてて良い御身分だな。


「暑そうだな。お茶でも飲むか?」

「いえ。大丈夫です。」


 汗だくで暑そうに見えるのは、あなたのせいです。

 早速、収入申告書を渡して、記入するように求める。


「この半年で、お金とか入ってないですか?」

「ない。」

「ギャンブルで勝ったとか、借金したとかでお金が入っても、申告が要りますからね。」

「勝てるわけない。マイナスだよ。」


 ギャンブルには行ってるのかよ。

 本来は勝ち負けとか関係ない。賭けた金は必要経費と認められないから、プラス分だけを生活保護費から減らさなくちゃいけない。

 今回は注意だけしておく。


「ギャンブルやっても、生活苦しくなるだけですからね。今後は一切やめてくださいよ。」

「はいはい。」


 しかも、税金でギャンブルしている奴がいると批判を受けるのは行政だ。


「家族と連絡は?」

「弟からたまに。妹とは全然。」


 緊急連絡先は弟だな。入院とかになると、家族の同意が必要になるので、家族との交流状況も把握する。


「病院は?」

「高血圧の薬だけもらいに行ってる。最近腰を痛めたから、また医療券貰いに行くわ。」


 書かれた申告書を確認する。

 収入なし。生活状況に変化なし。


「腰?」

「少し重いものを持ち上げて、ぐいっとなったんだ。」


 重いもの?

 この部屋にはそんな重そうなものはない。


「パチンコの箱じゃないでしょうね。勝ったんなら申告してくださいよ。」

「違うよ、もっと重たいものさ。」

「腰には気を付けてください。」


 私は収入申告書を鞄に片付ける。


「ギャンブルで負けた分を申告したら保護費増えないのかね。」

「増えません。でも勝った分だけは減らします。」

「損しかしねぇじゃねえか。」

「だから、ギャンブルは止めてくださいって言ってるんです。」

「はいはい。」

 

 おじさんは適当に答える。

 またギャンブル行くつもりなんだろうな。簡単にはやめられないのが恐ろしいところだ。


「なんかあったら連絡してください。」

「おう。」


 私は部屋を出た。

 このおじさんが、私に金の無心をしてくるのは半年後の家庭訪問の時だ。


 私は、次の受給者の部屋に向かう。同じアパートの二階。

 生活保護費の家賃には上限額が決まっているから、受給者は同じような場所に集まることになる。このアパートには他に三件も受給者が居る。


 私は暗い階段を上がって、次の部屋の呼び鈴を鳴らす。


  ピンポーン


***


「はっ!?」


 目が覚めた。


「大丈夫ですか?」


 コロンが私の顔を覗き込む。

 反睡眠魔法で起こしてくれたのだろう。嫌な夢で起きることになるから、この魔法、嫌いなんだよな。


「私、寝てたんですか。」

「目を回されて、そのまま倒れてしまいました。」


 やってしまった…

 オーガの三半規管はとても弱かったらしい。


「フォリント様を押し潰してしまったので、引き分けです。」


 …やってしまった。完全に漫画じゃないか。


「フォリントさんに怪我は?」

「大丈夫です。あの程度の打ち身は怪我のうちに入りません。」


 そう言ってプラは笑う。


 打ち身なのか、後で謝っておこう。

 フォリントはどこだろうと辺りを見回すと、皆は片付け始めていた。


「あれ? もう終わりですか。」

「はい。一時間くらい寝ておられましたので、起こさせていただきました。」


 まじか。目を回して一時間も寝てたなんて。

 皆が訓練している時に昼寝なんかして、良い御身分だとか思われているかも知れない。


「なんか…、ホントにスミマセン。」


 私が落ち込んでいるので、コロンとプラが慰めてくれる。


「気にすることはありませんよ。」

「そうです。後でプリンを送りますから、元気出してくださいよ。」


 なにっ!? プリンだと!!


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