表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
14章:将軍直轄部隊 改メ お婿さん候補団

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/200

76

 

「次は俺が。」「ぜひとも、わたくしめと組手を!」「いや、貴殿よりも…」


 ゲンが円から出ると、まだ数人が我も我もと手を挙げる。

 段違いというか、桁違いの強さを見ておいて、それでも手を挙げるなんて、


「みんな、やる気が凄いなぁ。」

「それは当然です。」


 私の独り言にプラが答えてくれる。


「彼女とリラ様は、とても仲が良いのを皆様知っておられます。彼女に認められれば、リラ様に近づけると皆様はお思いです。」


 圧倒的な強さを見てもなお、やる気が出た。とかではなく、単に下心丸出しなだけだった。


「王女様の伴侶となれば、家柄の格も上がりますから。」


 そうか。彼らは、リラを妻にしたいと考えてるだけの狼じゃなくて、それぞれの「家名」を背負っているのか。

 責任重大だ。


「タラ、お前がやってみろ。」


 ソルは手を挙げていないタラを指名する。


「はい。しかし、自分の力量では…」

「お前が勝てないんじゃ、他の隊員も勝てんよ。早く出てこい。」

「はい。」


 タラは、微妙な面持ちで出てきて、円の中に入る。

 タラはできる男だ。いろいろお世話になっているし、どちらにも頑張って欲しい。


「宜しくお願いします!」

「お願いします。」


 ソルが開始の合図をする。


「タラ様は、南海の島々を領土とする子爵家の長男です。子爵家としては、王都の貴族に近づく千載一遇のチャンスなんですよ。」


 プラって、じっくり喋るとゴシップ好きのおばちゃんって感じだわ。

 お子様だなんて思っててすみません。


 タラは、コロンの攻撃をうまく避けていた。

 コロンはバランスを崩すために、足元を重点的に攻めているが、タラはそれを見抜いてステップやジャンプを効果的に使っている。


 周りから拍手が起きる。

 コロンを応援する声、タラを応援する声。盛り上がり始めた。


 コロンが攻撃のリズムを変え、上半身を狙う。

 さすがのタラも、これには対応しきれず右頬に一発貰う。


 隊員たちから歓声があがる。「やった」とか「惜しい」などと聞こえてきた。


「さすがです。」

「まだまだですよ。」


 タラが円に戻ると、コロンも木刀を構え直す。

 再度、それぞれを応援する声があがる。


「タラ様を応援しているのは、ほとんどが王都の貴族の皆様。逆に、辺境や新興の貴族の皆様は、競争相手が潰れるのを期待しています。」


 プラが直轄部隊のドロドロの内実を教えてくれる。


 あんまり聞きたくなかったなぁ。

 直轄部隊って、もっと仲の良い人たちだと思っていたかったよ。


「貴族にも色々と立場があるんだな。」

「王都の貴族の方々は、リラ様とのご縁をそこまで重視しておりませんので、あくまでも貴族同士のパイプ作りとして御子息を部隊に出しておられます。」


 プラが喜々として説明する。今までこんなゴシップを話せる人が居なかったのか、とても楽しそうに話す。


「仲間意識の方が強い人はタラさんを応援するのか。」

「はい。一方の辺境や新興の貴族にとっては、他の方を出し抜くために必死です。」

「訓練でやる気を見せている人は、そういう貴族の出ってことですか。」

「だいたい、そうです。」


 なんか、納得できる所がある。


「でも、私相手にやる気を出す人はいなかったんですね。」

「そりゃあ、オーガ相手じゃあねぇ。」


 私とプラは笑う。

 

 私が貴族について知識を得ているうちに、組手の攻守交代の時間が来た。

 結局、タラはアウト三つだけで済んだようだ。


「ゼハァ、ゼハァ。」


 タラは息を切らせ、起き上がるのがやっとだ。

 コロンの攻撃を受けたり避けたり、時間までずっと動き続けていたのだから無理もない。

 コロンから木刀を受け取ると、杖のようにして移動する。


「スタミナ不足だな。全員、毎日の走り込みを増やさねばならん。」


 ソルの言葉を聞いて、隊員全員がゲッソリとする。


 コロンがタラの様子を心配する。


「続けますか?」

「もぉ、もちろんです。」


 タラは何とか呼吸を整え、背筋を伸ばして木刀を構える。


 ソルの合図で、タラの攻撃が始まる。


「ふっ、はっ。」


 タラは何とか木刀を振る。

 コロンはそれを軽く踊るようにして避ける。


「コロン殿の視線がどこに行ってるか見てみろ。お前らのように、切っ先だけを見てないだろう。」


 ソル先生の解説が入る。


「体全体の動きを見て、次にどこを攻めてくるかを読んでいるから、最小限の動きで攻撃が避けられるのだ。」


 タラがあまりにも疲れてて、素早く木刀を振れないせいじゃないかな。


 アウト一つも取れないまま、どんどん時間が経っていく。


「やっ!」


 突然、タラのスピードと動きのパターンが変わる。先程のコロンの攻撃のように、足元を重点的に狙いはじめる。


 コロンも跳ねたりして、さっきよりも大きく避けざるを得ない。

 侍女の服は厚手で、普段はほとんど形が変わらないのだが、さすがにこれだけ動くと、ヒラヒラと波打つ。


「ははははは。前半は体力回復に当てておったな。それと、遅いパターンに慣れさせておいて、虚を突く効果もあると見た。」


 ソルが、タラにあっぱれを送る。


「っ!!」


 コロンも必死になる。

 タラは今まで木刀を大きく振っていただけだったが、今度はコロンが止まれないように、突きも加えて、細かく早い動きに変わった。


「…!」


 足元への連続の突き。コロンはタップダンスを踊るように避ける。

 タラは息を止めたままで木刀を振り続ける。どんどん顔が赤くなる。


 そして、上半身へ大振りの一撃。

 コロンは(かが)んで避ける。足の止まった所へ、また細かい突きが襲う。

 コロンも息つく(ひま)がない。


 それを見ている私も、無言になっていた。

 先程まで盛り上がっていた隊員たちも、固唾を呑んで組手を眺めている。


  ジリリリリリリ


 時間が来てしまった。


「ぶはぁ。」


 タラは深呼吸して、その場にへたり込む。全力を出し切ったと言う感じだ。


 残念。それでも勝てなかった。


「ワンアウト…ですね。」


 コロンが笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ