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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
14章:将軍直轄部隊 改メ お婿さん候補団

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 役所時代を回想している間に、プロテクターの装着は終わっていた。


「この組手のやり方は分かりますか?」


 プラが確認してきた。


「一方が木刀で攻撃、もう一方は防御。時間が来たら交代といった所でしょうか。魔法の使用はダメみたいですね。」


 見ていただけのコロンが、解説してくれる。


「そうです。頭と胴体のプロテクターに木刀が当たったらワンアウト。防御側は足下の円から出てしまってもアウトです。アウトになったら、一旦、元の位置に戻ります。」


 プラの説明を聞いても、この組手にそんなルールがあったなんて気付かなかった。私はコロンほど真剣に見ていないし。


「スリーアウトで交代(チェンジ)?」

「いえ。お互い時間まで戦って、アウトカウントの少ない方が勝ちです。」


 つまり際限なしの減点方式ということか。


「一番勝った人には、夕食にオマケが付きます。」


 なぜかプラは自慢気に言う。


「ぬるい訓練ですね。」


 コロンがボソっと呟く。


 あれ? 結構、皆さん本気で組手やってると思うんですけどね。いい戦いしてる人もいますよ。

 確かに、マンガンの特訓と比べたら、ぬるいと思えるかも知れないけど。


「皆様は貴族の御子息ばかりですから怪我もさせられません。無茶な訓練をするのはマンガン様くらいです。」


 プラがそう言うので、王子の言葉を思い出した。

 将軍直轄部隊にはリラのお婿さん候補が集まってるんだった。


 マンガンの無茶な訓練とは言うが、前回の対空防衛訓練も怪我をする要素はなかった。火傷は魔法ですぐに治るし、キツイのは体力だけ。

 ぶつからないようにお互いの距離も取られていたから、転倒でもしない限り、怪我や骨折をすることのない訓練だった。

 さすがマンガン。そこまで考えての対空防衛訓練だったのか。

 ……しかし、あんな訓練はもう御免だ。


「御手柔らかに。オーガの怪力で御子息たちに怪我させないでくださいよ。」


 プラに念を押される。


「できるだけ、気を付けます。」

「お願いします。」


 プラは子供みたいだが、しっかりしている所もある。お婿さん候補集団の事務をしているのだから、ある程度の実績はあるはずだ。

 何歳なんだろう?


「すみません。プラさんって、お幾つなんですか?」


 無口モードにしたつもりが、ついつい気を許してしまった。


「女性に年齢を聞くのは失礼ですよ。」


 コロンに叱られる。


「いいの、いいの。六十過ぎたら、あんまり気にならないですから。」

「ろ、六十!?」


 まさかの年上かよ。絶対子供だと思ってた。

 ほうれい線や首筋のたるみ皺とか気にならないし、声も少年みたいだし、そもそも性格がお子様…。


「ごめんなさい、失礼なことを…」


 まさか、年下だと思ってたなんて言えない。


「若く見られるってのは嬉しいです。うちらホビットってのは、人間と比べると少しだけ長生きだから若く見えるのでしょう。」


 プラさんって小人(ホビット)なの? 道理で小さい訳だ。

 長命だから若く見えたというより、その身長と、調子に乗りやすい性格のせいでお子様に見えてるんです。

 …なんてこと言えないから、笑ってごまかす。


  ジリリリリリリリ


 丁度、部屋にタイマー魔法の音が響く。


「では、対戦相手を交代しよう。」


 ソルが叫ぶ。


「オーガと勝負したい者はいるか?」


  シーン


 私は不人気ですか。


「希望者が居らぬなら、ワシが指定しようか。……今の組手で勝った者は手を挙げよ。」


 半分が手を挙げる。わざと小さく上げている者もいる。


「フォリント、お前が来い。」

「はい…」


 中途半端に手を挙げてたのが災いした。フォリントは、ゆっくりと前に出てくる。


 彼も、何たら侯爵家の第何子とかなんだろうか。


「では、コロン嬢と勝負したい者はいるか?」

「ハイ!」「ハイ。」「ハイッ」


 次々と手が挙がる。

 おいおい。コロンは人気だなぁ。


 まあ、小さな背丈に侍女の服。組みやすい相手には見えると思う。

 君たち、女性を相手にする下心じゃないよな。


「親衛隊を甘く見ないで欲しいですね。」


 コロンがボソッと呟く。

 目が本気になってないか?


「では、ゲン。お前だ。」

「はい! よろしくお願いします。」


 ゲンは、意気揚々と前に出てきた。

 彼は、直轄部隊の中では一番若く、一番勢いのある青年だ。


「他の者は、さっきの組手で勝った者同士、負けた者同士で相手を決めてくれ。まだやってない相手を探すんだ。」


 ソルは、まるで学校の先生のようだ。


「まず、親衛隊のお手本を見せてもらおうか。」


 そう言ってソルはコロンに木刀を渡す。ゲンは円の中に入った。

 プラほどではないが、コロンも背が低いので、大人に子供が挑むような構図になる。


「思いっきり来てください!」

「良いんですか?」

「もちろんです!」


 ゲンは威勢よく胸を張る。コロンが笑顔を見せた。

 ソルが合図をして、組手が始まる。


 次の瞬間。

 ゲンは円の外に倒れていた。


「はい、ワンアウトです。」

 

 コロンがさらりと言う。ゲンは何が起きたか分かっていない。


「あれ…魔法使ってないですよね?」

「もちろんです。」


 ゲンは元の位置に戻り、構える。


「来い!」


 今度は、ゲンは円の中で寝転び、胴体のプロテクターにコロンが木刀を突き立てている。


「アウト二つ目です。」


 その後も、ゲンはアウトを取られ続けた。

 コロンも可哀相になったのか、アウトをカウントするのを途中でやめてしまった。


「貴族出身の新人二年目と現役の親衛隊員では、差が歴然だわ。」


 プラがそう言うと、ソルも頷いて組手を途中で止める。

 ゲンは泣き出しそうな顔をしている。


「分かったか。どんな相手にも油断しない事が大切だ。」


 ソルは、ますます先生のように言う。定年間近の老教師といった貫禄だ。


 でも、あれじゃあ油断とかしてなくても勝てないよ。

 地下迷宮では防御に徹してたから分からなかったけど、本当はコロンって強いんだな。


登場人物紹介

「プラ」

種族:ホビット(コーカ人)

年齢:61

身長:118

体重:34

所属:将軍直轄部隊事務員

趣味:噂話。話し始めると止まらない。

特技:お菓子作り

家族:夫、子供7人、孫2人

備考:

 ホビットの中では大柄な女性。自分をおばさんと自覚しているが、実際の反応は子供っぽい。

 職場に話し友達が欲しかったが、みんな貴族の子息ばかりなので遠慮していた。

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