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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
14章:将軍直轄部隊 改メ お婿さん候補団

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 リラは、バルボアに連れられて会議へ行ってしまった。

 そして私は、コロンに連れられて第一兵舎の修練場まで来てしまった。


 修練場には、将軍直轄部隊のメンバーほぼ全員が揃っており、剣術の修練を行っていた。ここに居ないメンバーは、リラ将軍の会議の護衛に行っている。

 

 二人一組になって、一人は木刀を振り、もう一人がそれを避けたり弾いたりしている。


「てぃやー!!」

「おおおおおぉぉぉぉっ!」

「やー!」

「っ痛ーーっくない!」


 いろんな掛け声が聞こえる。

 私が初めて第一兵舎に来たときも、こんな声が響いていたことを思い出す。(※八話参照)


「おぉ、来たか。」


 ソルが私を見つけて近づいてくる。その後ろをプラがお供している。プラの身長はコロンよりも小さく、まるでおじいちゃんと孫のようだ。


「魔法の練習が無くなってしまって残念だったな。」

「はい。」

「でも今日は火達磨にならずに済むから良かったな。ハハハハハ。」


 ソルが笑う。


 プラめ…報告(告げ口)したな。


 私はプラを見つめる。

 睨んでいるわけではないのだが、プラは少し後ずさる。後ろめたさがあるのか、それとも私の顔が怖いのか。


 確かに。居眠りした罰として火達磨になったのだから私の自己責任だ。仕方ないことではある。

 でもそれを、いろいろと言いふらすのは違うと思う。


 私は、少し仕返ししてやることにした。


「今日は、お尻から魔法が出るのが見られないので残念です。」

「…!」


 プラは恥ずかしさで顔から火が出た。


「ん? 尻?」


 ソルには何のことか分からないようだ。やっぱり、自分の尻から火炎魔法が出た件は報告してなかったんだな。


 プラは顔を真っ赤にして睨み返してきた。でも、私を恐れてか、ソルの後ろに半分隠れている。


 この子、面白いぞ。(いじ)りがいがある。


「プラ、尻がどうかしたか?」


 ソルがプラの方を振り返る。


 ここで細かく状況を説明したり、「ナイストライ」とか言って拍手したりすると、やりすぎだ。

 あまり直轄部隊では喋るなとも言われているし、ここまでにしておく。


「私も剣術の練習ですか?」


 ソルの興味を逸らす。


「お、そうだそうだ。今やってる組手が終わったら、君たちも入ってもらおうか。」

「はい。」

「それまでは、見学しておいてくれ。」


 そしてソルは、プラにオーガ用と人間用のプロテクターを準備してくるように命じる。

 鬼教官マンガンが指導していたら、プロテクターなんて使わせてもらえないだろう。ソルの指導で助かった。


 そう言えば、ソルは「君たち」って言ってたな。


「コロンさんもこの訓練を受けるんですか?」

「そうですね。一応、身分としては直轄部隊に出向中なので。」

「いつまで?」

「侍女の任を外されるまでです。」


 コロンはそう言って、少し笑う。

 その笑顔には、寂しさが浮かんでいる様な気がする。


 同じ転生者だけど、マンガンには侍女がついていない。いつか、コロンも私の侍女でなくなる時が来るのだろう。

 私も何となく寂しさと不安を感じた。

 でも、それを気取られぬ様に明るく振る舞う。


「でも、マンガン様の訓練の時は参加されませんでしたよね。サボりですか?」

「あれは他の用事があって……あ、彼女が来ましたよ。静かに。」


 プラがプロテクター入りの袋を二つ持ってやってくる。


「あの子には魔法の講義の時に、いろいろ喋ってる所を見られてるんです。」

「じゃあ、気にしなくても良いかもしれませんね。」


 コロンはそう言ってくれるが、とりあえず言葉少なめにしようと、頭を切り替える。


「なんで、あんなこと言うんですか!」


 プラは早速怒り心頭だ。


 私は心の中で「お前の方が先に言ったじゃんか!」と叫ぶ。


「ソル隊長が気付かなかったから良かったですけど、あんな恥ずかしい話を広められたら許しませんから。」


 心の中で「私が、話を逸してあげたんだよ!」と思いながら、ニコリとする。

 オーガの笑顔は目が笑わないから、知らない人が見ると恐ろしいらしい。


「ひっ…」


 プラは怯えて、持っていた袋からプロテクターをボロボロと落としてしまう。

 この子は本当に良い反応をする。楽しい。


「あ、あぁ。ごめんなさい。」


 私の顔を見ながら、プロテクターを拾い集める。


 この「ごめんなさい」は、何に対するごめんなさいなのか。プロテクターを落とした事ですか、私の恥ずかしい話を広めた事ですか。


「あの、これ。プロテクターです。」


 ちょっと震えながら、私とコロンにプロテクターを配る。  

 プロテクターは革張りで、中にクッション素材が入っている。これなら、木刀を当てられても痛くなさそうだ。


「ありがとう。」


 私が礼を言うと、プラは明るく顔色が変わる。許されたと思ったのだろうか。


「どういたしまして。」



 その時の感情が分かりやすい人というのは、見ていて楽しい。

 私が最初の職場で三年目。同じ係に新人が入って来た。そいつも分かりやすい性格だった。


「根牧っす。よろしくお願いします。」


 私は、そいつの教育担当に当てられた。制度や業務について説明し、一緒に外回りも行く。


「先輩、マジであんな部屋あるんですね…。」


 家庭訪問の帰り道、根牧は明らかにゲッソリとしていた。出発前は「俺、ネコ大好きなんですよ」とか言いながら、あんなに元気だったのに。


「言われたとおり、マスクと使い捨てのスリッパ持ってって正解でした。あの臭いはキツイっす。」


 生活保護の受給者(ケース)の家庭訪問は大変だ。今回は、鬱で就労出来なくなって生活苦に陥ったケース。

 ネコを飼っているのだが、ちゃんと面倒見れないから、室内はボロボロ。あちこちに糞が落ちていて、ネコのおしっこの臭いが堪らなかった。


「なんか飲む?」


 私は自販機を指差す。


「奢りっすか。ありがとうございます!」


 根牧は顔色がぐっと良くなる。

 ここで遠慮とかせずに、分かりやく喜んでくれるのが良い。


「じゃあ、ビールで…」

「仕事中です。」


 こいつは、すぐ調子に乗る。


 プラもよく似ている。前回の魔法の講義で、お調子者だとよく分かった。


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