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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
13章:かいたい☆プリンセス

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 フリヴニャの肩を借りて、フローリンが木の陰から歩いてくる。王子が去ったタイミングを見計らって出てきたのだろう。


 フローリンはまだ土気色の顔をしていて、かなりしんどいようだ。

 フリヴニャと並ぶと、同じ赤い侍女の服でもフローリンの服には深い赤色が混ざっているのが目立つ。


「辛いようでしたら、今日は休むといいですわ。」


 レウが優しい言葉をかける。

 フローリンは何度も謝ったうえで、礼を言う。


「すぐに代わりの者が参ります。」


 キナは、そう言うと瞬間移動魔法を開いて、フローリンを送り出す。


「今回の侍女は気絶しなかっただけ偉いじゃない。でも、きっとあの侍女は交代だね〜。」


 リラは平然と言う。


 前の侍女は気絶したの?

 やっぱり生き物の解体なのか。そうなのか?


 間もなく別の侍女が現れた。

 その侍女は深く丁寧なお辞儀をすると、レウを驚いた顔で見る。


「レウ様…!? すぐに着替えを用意いたします。」

「いえ、構わないわ」


 着替え?

 よく見ると、レウのドレスの赤色にもムラがある。さっきまでは、綺麗な赤色だったのに、暗い朱色に変色してきている部分があった。


  クンクン


 気になって、私は鼻を利かす。

 …待てよ。レウから漂う良い臭いって…もしかして、血の臭い?


 姫様からどうして血の臭いが?


 というより、何で私はこれを良い臭いだと感じたんだ? そもそもオーガは香りに鈍感なんじゃなかったか? 王子が気にしてた生臭さって、この臭い?


 待てよ…血!?

 よく見ると、レウ姫のドレス…もともと白い服が、赤い色で染まっているみたいだ。


 生き血で満たした風呂に浸かって、若さを保ったとかいう悪女の昔話が頭をよぎる。

 もしかして、この姫様ヤバい?


 侍女がタオルを出してきてレウに渡す。レウが頭をゴシゴシとやると、タオルは真っ赤に染まり、綺麗な銀色の髪が現れる。


 赤毛じゃない!?

 髪の毛も染まってた!?


 この銀髪が、ここまでがっつり赤色になってりゃ、王子が娘だと気付かないのも当然か。


「おケガはありませんか?」


 侍女が聞く。


「えぇ、返り血だけですわ。」


 レウ姫はこともなく答える。

 リラとキナは驚きもしない。

 コロンとフリヴニャは少し…いやドン引いている。顔が引き攣っている。髪の色の違いには気付いていたけれども、まさか血だとは思っていなかったようだ。


「何の…?」


 私はつい聞いてしまった。

 聞かなきゃ良かったのに、とすぐに後悔した。

 聞いてどうする。聞いてどうなる。


 あれだけの返り血なんだ、かなり大きな動物だよ。…動物だよな。生きてたのかもしれない。


「料理で使う牛を解体しておりましたわ。」

「……料理が得意でいらっしゃるんですね。」


 私はそう答えるのがやっとだった。

 牛か。牛なら納得だ。

 いやいや。料理だとしても、姫様が牛を解体なんてするか? できるか?


 前の侍女は気絶し、フローリンは嘔吐した。

 つまり。エンドルでも牛の解体なんて一般的な事ではないのだ。壮絶な光景だったはず。


「レウちゃんの場合は、目的が料理なのか解体なのか、よく分かんないよね〜。」


 リラは平気で笑う。

 そんな事をさらりと笑わないでくださいっ!


「ふふふ。室内では汚れてしまいますから、いつも外でやるんですわ。」


 いつも…ってことは、しょっちゅう何かを解体をしているのか。

 お姫様は、もしかしなくてもヤバい奴です。

 

 レウが侍女にタオルを返す。

 レウの銀色の髪の毛は、ドレスの血の赤に映えて美しい。


「皆様、解体の続きを見られますか?」


 そう言ってレウは微笑む。


 本当に可愛いくて、お人形みたいなのに、今まで会った人の中で一番恐ろしい。

 姫のヤバさが加速度的に増加していく。

 筋肉好きの王女様が可愛く見えてきたよ。


「あ、いや…。」


 私たちがドギマギしていると、フリヴニャが機転を効かせる


「リラ様。もうすぐ会議のお時間です。」


 そうでした。今日はあまり時間がないから、仕方ないですよね。

 さあさあリラ様、行きましょう。


「もうそんな時間? あの人のせいで、レウちゃんと話せなかったじゃん。」

「残念ですが、またの機会にいたしましょう。」


 リラは不満顔だが、仕方なさそうに立ち上がる。


「今日は、とても興味深い魔法を見せていただきましたわ。ありがとう。」


 レウは、私に向かって天使のスマイルを見せてくれる。


 可愛いっ!

 だが、その笑顔には狂気を感じる。

 血に(まみ)れた銀髪の(ひめ)天使。最凶属性じゃないかな。


「あ、いえ、恐悦至極にございます。」


 あらゆる意味での緊張で、自分でもよく分からない敬語を使ってしまう。

 なんだ、恐悦至極って。でも、使い方は間違ってはないはずだ。


「近いうちに魔法の先生に来ていただいて、また研究させていただきますわ。王宮から改めて連絡いたしますね。」

「は、はい!」


 研究って、魔法の研究だよね。オーガの身体の研究とかじゃないよね。解体されたりしないよね。


「うふふ、楽しみですわ。」


 笑顔が怖い怖い怖い怖い怖いっ!

 早く帰りましょう。 


 今回は、キナとコロンが瞬間移動魔法を開く。キナがリラとフリヴニャを、コロンが私を連れて帰る。


「レウちゃん、またね。」

「リラ様、ごきげんよう。」


***


 私たちは、リラの部屋に戻ってきた。

 リラはフリヴニャに着替えの魔法をかけてもらって、軍服に着替える。


「レウちゃんって良い子でしょ〜。あの人の子供とは思えないわ。そうでしょ?」


 これは答えないのが正解だ。

 ここで「はい」と答えたら、王子を貶めることになる。「いいえ」と答えたら、リラの気持ちに寄り添ってないことになる。


 リラの感覚は理解できないし、共感できない。

 王子も王女も姫様も、それぞれに何かが欠落している様な気がする。


 私はなんか疲れてしまった。この部屋で寝てたらダメかな。


「コロンさん、私はどうしたら?」

「ソル様に確認しましょう。」


 コロンが念話をかける。


「直轄部隊の訓練に参加するようにとの事です。」


 サボりは駄目か。


登場人物紹介

「レウ」

種族:人間(コーカ王族)

年齢:19

身長:160

体重:45

所属:王宮・東宮

別称:東宮の姫君

趣味:料理、魔法の研究

特技:生き物の解体

備考:

 東宮(=王子)の長女であり、リラの姪。

 「ですわ」口調で喋る。

 かなり落ち着いた性格だが、いざという時にはパニックになることも。先日の空爆から避難する際には、何人もの親衛隊員を蹴っ飛ばし、押し倒した。


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