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家…の解体では、見てて吐くなんて事にはならないよな。
しかも姫様が家屋解体とかイメージつかない。
解体って、一体何をしているんだろう。マグロの解体ショーみたいなのしか浮かんでこない。
私の邪推をよそに、レウは小さな花々で可愛い花束を作っていた。
花束を持つレウ姫の天使感が半端ない。
解体ってのは、何かの聞き違いかな。
きっと、そうだろう。
もうすぐ、花束ができあがりそうという時、三人組の男たちがやって来るのが見えた。
リラが苦い顔をして呟く。
「やっぱりかー。近衛兵がコロンたちの許可を渋ったっていうんだから、もしかして…とは思ってたのよね。」
リラの苦手とする人が現れたようだ。
コロンから念話の着信が入る。
『何? コロンさん。』
『あちらからいらっしゃるのは東宮様。王子殿下です。下がってください。』
王子様?
しかも東宮だから、王位継承順第一位。次の王様だ。
私とコロンは慌てて場所を移動する。
丁度、フローリンが大変なことになっている木を隠す形で、私は跪く。
男たちの真ん中は、堂々としてゆったり歩く中年。少し太って貫禄もあり、いかにもボスって感じ。
王子って言うと、もっと若くてイケメンなイメージだったけど。王様が健在なら、年取っても王子か。
『東宮ってことは、レウ姫様のお父さん?』
『はい。そして、リラ王女の兄君です。』
『兄妹!? 歳が離れすぎてない?』
『リラ王女とは三十歳離れておられます。』
どのくらい離れているか、よりも、どうして離れているかが知りたい。
『王子殿下の御母堂は第二王妃フラン陛下で、リラ様の御母堂は第五王妃リエル陛下です。』
むむむ。思っただけのことがコロンに伝わってしまった。もう少し念話魔法の練習しないといけないな。
『リラ様は、お兄様と腹違いになるんですね。』
『はい。』
コーカの王室は一夫多妻なのか。王様ってのは子孫残さないといけないから、仕方ないんだろうな。
王子の左右の二人は、侍女たちの服に似た赤いスーツの様な服を着ている。きっと執事だ。
右側を歩く初老のエルフは、しなやかで無駄のない歩き方。できる男といった感じ。
左側はまだ若い男の子。まっすぐ顔を上げて、一生懸命付いてきている。
三人組は、私の作った花畑まで来た。
花など気にせずズカズカと踏んでいく。
雑草の花だから仕方ないんだけどさぁ。無視されて踏まれるのは、ちょっと嫌だな。
レウとリラが深い礼をする。私たちも頭を下げる。
真ん中のボス、東宮様が口を開く。
「何か…生臭くない? なにこれ…オーガの臭いなん?」
中年の見た目とは思えない言葉使いに、私の目が点になる。もっと威厳のある言葉が出てくるのかと思った。
「いやー。オーガってこんなに臭うもん?」
失礼な。私はリラ王女と会う前には、必ず風呂に入って香水までつけるんだぞ。
臭いはずがないじゃないか。
きっと、フローリンのリバースの生臭さが漂ってしまっているのだろう。
「お兄様、オーガは臭いませんよ。」
リラが反論してくれる。
「そうですわ、お父様。むしろ、爽やかな良い匂いですわ。」
レウも擁護してくれる。
香水つけてて良かった。
「んん!? そなた、レウか? 前に会った時と格好が全然違うから気付かなかったよ。アハハハハ。」
自分の娘に気付かないなんて、どんな親だ。
「五日振りですから、仕方ありませんわ。」
「えー、そんなに会ってなかったっけ。お父さん、超寂しいなぁ。」
王子がこんな調子で、この国の将来は大丈夫だろうか。
裏庭っていうプライベート空間だから、気を抜いているだけだと信じたい。
「では、そんな寂しがりのお父様にプレゼントですわ。」
「ありがとう、レウ。お父さん、嬉しいよぉ。」
レウは、今まで作っていた花束を王子に渡す。王子はそれを受け取ると、早速、花の香りを嗅ぐ。
「優しい匂いだね。小さな花々は匂いも控えめで良いや。」
さては、私が咲かせた花が生臭いか確認したな。この臭いは花のせいじゃないからっ!
そんな事を考えていると、王子がこちらを向いた。
中年の鋭い眼光にドキリとする。
今の私の考えが見抜かれた訳じゃないよな。
役所でも、課長クラスの中年からの視線には困ることがある。
人生も半分を超えて、課長くらいになる人だと、私が考えていること以上の考えを持っているから怖い。
私の心の中を探るような、何か試すような視線。
王子はそんな視線を私に向けたまま、リラに言う。
「このオーガはリラのでしょ。」
何だか私、モノ扱いされている気がする。
でも、リラは自慢気に言う。
「そっ。直轄部隊所属よ。」
「そんなので遊んでないで、早く彼氏を見つけて来なさい。」
なんか…お父さんというより、歳の近いお母さんか、仲のいい友達みたいな感じで話すんだな。
「そうは言っても、なかなか良い相手が居ないの。」
「なんのための直轄部隊なんだか。」
「あの部隊は優男ばかりなのよ…。」
え? 将軍直轄部隊って、リラのお婿さん候補の集まりだったの?
確かに、隊長のソルと事務のプラ以外は、結婚適齢期な感じの若者ばかりだ。
「隊員を鍛えてまくってるってのは聞いたけどさぁ。」
溜め息交じりに王子が言うと、リラは鼻息荒く熱弁する。
「筋肉をしっかり育てないとね〜。夫になるなら相応の努力はしてもらわないとダメでしょ。」
リラの旦那様になる人は大変そうだ。
「壊さないようにだけは気を付けてよ。じゃあ、またな。」
王子はそう言って、若い方の執事に花束をポンと渡し、行こうとする。
あれ? 五日振りに会った娘とは、もう話さないの?
さっき寂しいって言ってなかったっけ。
王子たちはさっさと王宮の方へ歩いて行ってしまった。
「はぁ…疲れた。やっぱり、あの人苦手だな。」
リラがしゃがみ込む。
えー。仲良い家族みたいで、和やかな雰囲気の会話だと思ったけどなぁ。
…やっぱり、王家の確執とかがあるのかな。
王女と姫の違い(コーカ王国設定)
「姫」は高貴な家柄の娘に使われ、その中でも君主の娘に限定して「王女」が使われる。
リラはコーカ王の娘なので「王女」。
レウはコーカ王の孫ではあるけれども、娘ではないので「姫」。
あの王子が王座についた時にレウは「王女」となる。




