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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
13章:かいたい☆プリンセス

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「現在の戦況を説明します。」


 説明役はフリヴニャ。

 リラの侍女で、背が高い方だ。


「先日、北部要塞がシヘー軍により陥落しました。このため要塞に駐留していた第七侵攻軍は壊滅。残存兵力はキンユー郊外まで後退しています。」


 フリヴニャは、魔法で空中に絵を描きながら説明する。


「シヘー軍が部隊を立て直す前に要塞を奪還するため、北東方面から第四進攻軍が北部要塞に向かいます。」


 今日はいつものリラの部屋。

 ここに居るのも、いつものメンバー。

 まずはリラ将軍。

 …に腹筋を撫で回されている私。

 そして、お友達のクーナと、リラ将軍の侍女キナとフリヴニャ。私の侍女コロン。


「第四進攻軍が到着するまでの間、キンユー市街を防衛する第十五籠城軍が北部要塞を包囲します。各籠城軍から部隊を増援することになりました。」


 クーナはお菓子をポリポリと食べながら聞いている。


「第一籠城軍からは戦車中隊と救護隊、教導隊が増援に向かいました。」


 教導隊といえば、マンガンやルーブルのいる部隊だ。

 だから、今日の魔法の授業は中止になってしまった。予定がなくなったので、私は将軍の側で待機を命ぜられた。


「これが現在の戦況です。リラ様…聞いてます?」

「ちゃんと聞いてるってば。」


 リラは私の腹筋に手を添えたまま答える。


「要は、キンユーがヤバいってことでしょ。」

「…そんな事は言ってません。」


 リラの的外れな要約に、フリヴニャが呆れる。


「そう?」


 リラは肩をすくめる。


「リラ様が言い出したんですよ。会議や資料だと分かりにくいから、どうなってるかを簡単に教えてって。」

「すごい分かりやすかったわ。ありがとうね、フリヴニャ。」


 リラがお礼を言うが、フリヴニャは不満顔だ。


 でも、私にとっては、とてもありがたい説明だった。この国が戦争中だと言うことを再認識させてくれる。


「せ、戦争のお陰か、けん、研究予算が増えて助かってます。」


 クーナが微笑む。私にはマッドサイエンティストの暗黒微笑にしか見えない。


「研究は順調なんですか?」


 そう聞くと、クーナは説明モードになり、スラスラと話し始める。


「非常に順調です。数十種の生物毒を分解できるタンパク質と魔法毒を弱毒化する成分を三種類、新発見しました。特にこのタンパク質は優秀で、免疫細胞内に存在し、細胞が取り込んだ毒を判別して分解までしてくれます。現時点では材料さえ揃えば薬剤を量産させられる所まできていて、もうすぐ治験に移るための許可を貰いに行こうかというところなんです。」


 お…おぅ。何を言っているかよく分からないけど、それは良かった。


「そ、その材料となる髪も生え揃う頃なのに、なな、なぜ毛が無いんですか。」


 クーナは少々お怒りのようだ。


 魔法の訓練で皆に囲まれて燃やされたからね。仕方ないね。

 文句はルーブル宛てに言って貰わないと。


「仕方ないです。ま、また血をもらわないと。病院にお願いしておきます。」


 あの、ぶっとい注射針でまた血を抜くの?

 オーガの私よりも、クーナの方が「鬼」じゃないか?


「ま、また念話の魔法で連絡します。念話の契約を…。」

「まだ魔法はダメなんです。」

「あれ?魔法を、つ使えるようになったんでは?」


 残念ながら、まだ魔法の授業が終わっていない。

 魔法陣の解除ができないから、魔法を発動すると止められない。つまり、私は自由に魔法が使えない。


 そんな事情を知っているリラが笑って言う。


「大丈夫。念話の魔法は、魔法陣なくても使えるから。」

「え、そうなんですか?」


 コロンが補足説明を入れてくれる。


「はい。念話魔法は、魔力さえ注ぐことができれば使えます。」


 それ、早く言ってよ。

 魔力を注ぐってのはできる!


「契約ってどうするんですか?」

「まず、腹筋に力を入れて。」


 リラが私の服をめくりあげ、直接お腹に触る。


「で、触れた相手と念話の契約をするの。ほら今、魔力を注いでみて。」


 最悪な寝起きの気分を思い出す。


「オッケー。これで完了。」


 まじで?

 カボ様に魔法を使えるようにしてもらった時もそうだったが、あっさりしすぎだろう。


「念話するね〜」


 リラがそう言うと、突然私の頭の中にリラの顔が思い浮かぶ。

 目の前にリラが居るのに、見ているリラとは別に、頭の中にリラがいるのだ。

 よく分からないだろうけど、私もよく分からない。


「魔力を注げば通話開始。」


 リラの言うとおりに、魔力を注ぐ。


『やっほー!聞こえる?』


 頭の中にリラの声が響く。

 リラの口は動いていない。耳から聞こえている訳ではない。


「聞こえます。」


 私は答える。

 リラは不満げになる。


『口を使わずに、頭の中のわたしに向かって話しかけてよ。』


 頭に響くリラの声の言うとおりにしてみる。


『これでいいのかな?』

『そうそう。』

『これが念話の魔法ですか。』

『遠くにいても話ができるし、近くで秘密の話もできるわ。』


 すっごい便利だ。

 これは携帯電話要らないわ。


「すごいですね。コロンさんも、念話の契約良いですか?」

「はい。大丈夫です。」


 私は服を捲りあげる。


「お腹を出す必要はありません。直接触れ合えれば、手で構いません。」


 コロンが少し笑いながら教えてくれた。

 私はリラの方を向く。ちょっと恨めしい視線で。


『お腹じゃなくても良いって!?』

『どこ触ったって良いんだから、腹筋でも問題ないでしょ。』


 まだリラとの念話は続いている。


『お腹出しちゃったんですけど!! 恥ずかしい…』

『「アハハハ。」』


 リラはリアルでも念話でも大笑いだ。


 笑い事じゃないって。


 とりあえず、私はコロンと掌を合わせて念話の契約を済ます。

 その流れでクーナとも契約をする。


「念話をする時は、相手の顔と名前を思い浮かべて、魔力を注ぐだけ。」


 早速やって見る。


『もしもし、コロンさん?』

『はい。』


 良かった。私はもう一つ魔法が使えるようになった。花を咲かせる魔法より、実に有用な魔法である。


『モシモシって、なんですか?』


 あ…。


『気にしないでください。』


登場人物紹介

「フリヴニャ」

種族:クォータードリアード(コーカ人)

年齢:23

身長:176「まだ伸びてます。」

体重:「50台をキープしてます。」

所属:第一籠城軍親衛隊エスクード班(特務担当)

特技:強化魔法・光合成

好物:おいしい水

備考:

 リラ将軍の侍女。背が高い方。

 祖母がドリアードであり、わずかながら光合成ができる。一ヶ月くらいなら水だけでも平気。

 仕事に忠実であるがゆえに、融通がきかない点がある。


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