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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
12章:魔法陣をぐるぐると

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 魔法の特訓一日目で、魔法陣の発動は簡単にできるようになった。


 発動してから三時間半。私は常に微風を出し続けている。やはり解除ができない。


「あの…。このままだと、魔力が尽きたりしませんか?」

「魔力切れが怖いですか? そんな事を気にするような肌ではありませんのに。」


 ルーブルはさらりと言う。余計なお世話だ。


「魔力がなくなったら、訓練にならないと思いまして。」


 お肌はどうでも良い。


「転生者は魔力容量が大きいので、そうそう尽きることはありません。多くの転生者は、わたくし達の百倍以上の魔力をお持ちです。」

「え?そんなに!」

「ですから、安心して取り組んでください。」


 ルーブルはニコリとする。

 綺麗な笑顔なのだが、グダグダ言ってないで頑張れと言われている気がする。


 私はそれから半時間ほど、解除を試し続けた。


「今日はここまでにしましょう。」


 ルーブルの時間切れ宣言。

 結局、魔法陣の解除は一度もできなかった。


***


 中二日を開けて、魔法の特訓二日目。

 その二日で、ブロンズやテルルが魔法の特訓をしていたはず。


 その間、私も休みだった訳ではなく、クーナ指導のもと、筋トレをさせられていた。

 最初にクーナ特製のジュースを飲まされるのだが、これが不味い。今日は不味いジュースを飲まなくて良いぶん助かる。


 二回目のルーブル先生。今日の眼鏡は楕円形。…毎回眼鏡を変えるなんて、おしゃれさんかな。


「皆さんは、先日より円を大きく描いてください。より大きく、よりキレイな円をイメージできるよう目指しましょう。」


 ルーブルは参加する兵士たち全員にそう言った。今日も事務のプラが参加している。


「あなたは魔法陣の解除の訓練です。」


 ですよねー。

 あれから二日。魔法陣を展開する所までは何回もやってみた。展開しただけなら意識を逸らせば魔法陣を消すことができる。

 しかし、そこに魔力を注いで発動させることは怖くてできなかった。


 ルーブルは私の手をつかんで、掌を上に向ける。


「では、この紐で。」


 ルーブルは青い紐を取り出すと、私の掌の上に丸く置いた。


「この紐のように、魔法陣が解けるイメージをしてみましょうか。」


 ルーブルが掌に息を吹きかけると、紐の円が崩れた。

 再び紐で円を作り直すと、


「あなたが魔法陣を発動した後で、わたくしが紐の円を解きますので、その魔法陣にそのイメージを重ねてください。」

「え?でも…。」

「何はともあれ、まずはやってみましょう。」


 ルーブルはずっと私の親指を掴んだまま離さない。

 眼鏡の向こうの赤い瞳が睨んでくる。

 これは反論してはいけないと言うことだろう。


 まあ、魔法陣の展開や発動には関係ないから構わないか。

 私は微風魔法の魔法陣を展開し、魔力を注ぎこむ。


 心地よいそよ風が吹き始める。


 風に煽られて、紐が飛んでいく。


「あっ…」


 やっぱり。


 ルーブルは紐を追いかけて走って行った。


「この方法はダメでしたか…」


 ルーブルが凹んでいる。


「水流魔法でも流れてしまいますよね。」


 また睨まれた。

 しまった、余計な事を言った。


 いや、ルーブル先生のアイデアは良かったんですが、ちょっと魔法と合わなかっただけですよ。


「火球魔法だと燃えてしまうし…」


 ルーブルはブツブツと考えている。


「光の魔法はどうですか?」


 地下迷宮での探索を思い出した。暗闇を照らすのに使っていた魔法だ。


「…良いアイデアですね。」


 早速、微風魔法を相殺してもらう。

 ルーブルに光の魔法陣を見せてもらい、頭に叩き込む。

 展開…

 発動。


 魔法陣は光り始めるが、昼間なのでさして気にならない。

 ルーブルは私の手を掴んで、紐に息を吹きかける。

 

 これをイメージ…


 ってか、くすぐったい。

 人から掌に息を吹きかけられるなんて、あまりされたことないし。

 こういうのって、なんか…エロくない?


 いかん、いかん。魔法陣を解くイメージをしなければ…


***


 二時間。

 飽きた…。出来ねぇよ、これは。


 他の兵士たちは、だいぶ大きな円でもキレイに描けるようになっていた。

 プラは…ちょっと苦戦しているようだ。


「なんで、皆さんは円を描く練習なんですか?」


 ずーっと私の手を掴んで離さないルーブルに聞いてみる。


「キレイな円をイメージすることが大切だと説明しましたよね。」


 ルーブルの視線が刺さる。

 この目苦手。


「それは聞きましたが、私みたいに魔法陣で練習しないんですか? 皆、呪文を唱えてますけど…」


 ルーブルは「良い質問ですね」の顔をした。


「魔法陣の展開は、呪文の詠唱よりも魔力を消費するからなんです。」

「確か…前回は、魔法陣の方が効率的って仰られてましたよね。」


 ちゃんと先生の仰ったことは覚えていますよ、をアピール。


「詳しくは省きますが、魔法の発動にかかる魔力は、呪文よりも魔法陣の方が少ないのです。ただ、魔法陣の展開にも魔力を使うので、小さな魔法を何回も発動するような時は、呪文の方が魔力消費が少なく済みます。」


 魔法陣は、電源オンした時にだけ消費電力が大きい蛍光灯みたいなものって事か。


「他の皆様があなたの様な魔法の使い方をすると、あっという間に魔力を使い果たしてしまいます。できるだけ魔力消費の少ない方法で、繰り返し練習することが大事なのです。」


 納得。

 なんだか魔法の授業を受けているみたいだ。

 …あ、魔法の授業を受けてるんだった。掌の上で光る魔法陣ばかり眺めていたから、すっかり忘れてた。


「あなただけ魔法陣で訓練しているのは、転生者の魔力容量に余裕があるのと、魔法陣に早く慣れてもらうためです。」


 慣れろと言われても。解除ができないんだもの。

 もう飽きてきたよ。


 そんな私を見かねてか、ルーブルは話を変える。


「呪文も使い方次第では、便利なんですよ。」 


 呪文かぁ…私は『百花繚乱』が使える。いや、あれしか使えないんだ。


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