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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
12章:魔法陣をぐるぐると

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 一泊二日の魔法習得の旅から戻り、三日がたった。


 私たち転生者三人は、毎日交代で魔法の授業を受けることになっていた。

 昨日がテルルで、今日は私。明日がブロンズで、次の日がまたテルルといった順番だ。


 初日は外の運動場で授業。

 先生は教導隊の魔法担当ルーブル。三人の補助講師もいる。


 彼女らはマンガンの部下で、籠城軍の兵士たちに魔法を教えるのが主な任務だとか。


「呪文を唱えるよりも魔法陣を覚えてしまえば、すごく早く、簡単に効率的に、魔法を使うことができます。」


 大人びた落ち着いた声。マンガンよりもいろいろな所が大きい。

 いかにも魔法使いといったダボダボのローブを着ているのに関わらず、出ているところが出ていると分かるほどだ。

 大きな丸眼鏡の向こうは不思議な色の赤い瞳。


「魔法陣の良さはそれだけではありません。呪文では一度に一つの魔法しか使えませんが、魔法陣なら同時に複数発動が可能です。」


 ルピアが防壁魔法と催眠魔法を同時に使っていた。ナイラは魔法陣二つを合体させていたりもしていた。


「魔法の基礎知識は、実践しながら詰め込んでいきましょう。」


 さすがマンガンの部下。細かい説明をぶっとばして、いきなり実践ですか。

 だから外に出て授業するんだな。


 今回の魔法の授業には、私の他にも魔法に自信のない若い兵士たち十人ほどが参加していた。

 将軍直轄部隊からは事務担当のプラも参加している。顔見知りがいると心強い。

 プラ以外の兵士は、私から少し距離を取っている気がする。


「まずは、(てのひら)に円を描きましょう。」


 ルーブルが私の右の掌に指を置いて何やら唱えると、キレイな黒い円が描かれた。

 油性ペンより黒い気がする。この円、ちゃんと消えるのか?


 他の人は自分で円を描く。きっと初歩的な魔法なんだろう。

 いや…、プラをはじめ何人かが少し慌ててる。

 私は背が高いから他の人の掌が見える。どうやら円が歪んでいるようだ。


「この円の中に呪文を並べていくイメージをします。」


 え、どういうこと?

 先生、質問です。

 直轄部隊のプラが居るけど、早く魔法を習得したいから、今日はどんどん喋ります。


「頭の中で、呪文の文字が円の中に並んでいるのを思い浮かべるという事ですか?」

「はい、そう言いました。」


 ルーブルは丸眼鏡越しに、きつい視線を寄こす。


「あ、あのえっと、カタカナで良いんですか?」

「カタカタ?」


 更にきつい目になる。


「…なんでもないです。」


 呪文を並べるって言ったって、私にはこの世界の文字は読めないし書けない。

 前に『百花繚乱』の魔法を発動したときも、自分の知らない言葉を唱えた。あの言葉を並べろって言われても、カタカナもひらがなも通じないんだし、どうしろと言うんだ。


 ルーブルが授業を先に進める。


「では、簡単な水流魔法をやってみましょう。もうできるって人は、やらなくていいです。座っていいです。」


 その指導に従い、私だけが立ち残る。


 ちくしょう。みんなできるのか。

 私は三日前に魔法ができるようになったばかりなんだから、仕方ないよね。

 でも、超恥ずかしいし、超申し訳ない。


「ど、どんな呪文ですか?」

「水流魔法の呪文なんて、私も覚えてないです。覚えなくて良いです。」

「は?」


 ルーブルは、私の目の前に青い魔法陣を開く。


 あ。これ、コロンが水を出すときに使ってる魔法陣じゃないか。

 ただし、コロンはお茶やコーヒーを淹れる時は、呪文を唱えている。水の質が違って、味が変わってくるそうだ。


「この形とこの色をよく覚えて、この形をイメージしてください。」


 それなら簡単だ。そんなに複雑な形じゃないし、何度も見ている。

 私は自分の掌に描かれた円を眺め、さっきのルーブルの魔法陣を思い出す。


 こんな感じかな。


  ポゥッ…


 円が光りだした。

 違う。円の少し上で、青色の光が丸く形を作ろうとしている。


「いいですよ、いいです。もっと強くイメージして!」


 ルーブルが応援してくれる。

 光が渦を巻き始め、ぼんやりと魔法陣のような模様が浮かび上がる。


「もっと魔力を集中して!」


 …?

 魔力を集中って、どうやるんだ。

 全集中する呼吸法とかしてみたら良いのかな。

 それとも、カッ!とか気合いでも入れる?


 などと余計なことを考えていたら、光がぼやけてきた。


「イメージ!!」


 ルーブルは強く言うと、自分の魔法陣を私に見せてくれる。


 そうそう、この形。


 ルーブルの魔法陣を目に焼き付け、形と色のイメージを固めるため、一度目を閉じる。

 そして開く。


 私の掌の上に、青色の魔法陣が輝いていた。

 やった。魔法陣ができた。


「うわ、やった!」


 他の参加者が拍手してくれる。

 ちょっと照れる。


「で、で、これ、どうするんですか!?」

「こうやって魔力を注ぎ込みます。」


 ルーブルの魔法陣から水が流れ出す。


 だから、その魔力の動かし方が分かんねえんだって!

 心の中でそう叫ぶと、私の魔法陣は消えてしまった。


「いいとこまで行きましたよ。」

「あの、すみません。魔力を注ぐとかのやり方が、よく分からないんですが…。」


 また睨まれる。私のほうが背が高いから、下から見上げる形で睨まれる。


「昨日の転生者はすぐできました。」


 さすがテルルさんは凄いな。長生きしてるだけの事はある。


「あなたも魔力の流れを思い出してください。」


 流れ?

 思い出すも何も、流したことも流された思い出はないです。


「テルルさんはどうやったんでしょうか?」

「彼女は空を飛ぶ訓練中に、何度も回復魔法を掛けてもらい、その度に違和感を感じたと言っていました。おそらく、その違和感が魔力の流れですね。」

「ということは、魔法をかけられた時の感覚を思い出したら良いんですね。」

「そういうことです。」


 それを一番に言ってよ。

 実践を優先するから、理解が遅くなるんだ。

 …待てよ。


「私、魔法なんて掛けられたことあったっけ?」


 クーナ襲撃。コロンに守って貰えたから、魔法を掛けてもらうチャンスなし。

 防空特訓。火傷しないから、回復魔法とか掛けてもらえなかった。

 地下迷宮。囮の時ですら、安全な所に逃げるだけだったから、強化魔法も掛けてもらえず。


 思い出せ。何かがあったはずだ。


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