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続いての料理は、フライドチキン&フライドポテト。
肉が大きい。ちゃんと火が通ってるんだろうか。
骨の付き方からして、鳥もも肉だ。何の肉かをあえて聞こうとは思わないが、鳥と信じてかぶりつく。
「美味しい!」
外の衣がパリッとして、少しスパイシーな味がついている。
中からジューシーな肉汁が溢れ出てきて、口の中に広がる。衣のスパイシーさとピッタリだ。
肉は弾力があって歯応え十分。肉を食べているんだ!という満足感を与えてくれる。
バリッ
ありゃ、骨まで噛んでしまった。
オーガの咀嚼力は流石だ。太い骨でもバリバリといける。
骨の中の髄の味も美味しい。
鳥ガラスープの出汁に使うくらいだから、骨に旨味があっても何らおかしくない。
骨まで食べてしまうなんて…オーガの体が欲しているのだろうか。
「これも食べる?」
テルルが自分のフライドチキンを私の前に寄せる。
「良いんですか?」
「ええ。この体になってから鳥肉を食べるのが、何か悪い事のように思えてきて…」
確かに、バードマンが鳥肉を食べてたら、共食いに見えなくもない。
ありがたく、フライドチキンをいただく。
「このポテトは最高だ。」
一方、ブロンズはポテトを大喜びで食べている。
この人はワニ肉食べてても違和感ない気がする。
チキンがスパイシーな分、ポテトの味付けは薄く抑えてある。しかし、そのおかげで芋の持つ甘さが堪能できる。
カリッとホクホク。そして舌の上に乗る甘さ。美味しい。
酒の消費が加速する。
この店では今、乾杯が流行しているから、他のテーブルからもどんどん酒の注文が入る。
給仕たちは目の回るような忙しさに、嬉しい悲鳴をあげる。
私は二本目のフライドチキンをいただく。この辛さが病みつきになる。
流石に骨までは食べないが、ついついしゃぶってしまう。
***
「真ん中をあけてください。」
給仕が大きな鍋を持ってきた。
みんなで空になった皿を重ね、鍋を置くスペースを作る。
そこへ給仕が熱々の鍋を置く。
ドーン!
実際にはそんな乱雑な置き方をされたわけじゃない。私の心の中に響いたドーン!である。
鍋から立ち上る湯気。
白みがかったスープに浮かぶ、赤黄緑の様々な野菜。その上に乗る白い物体。
あれは、なんだろう。ジュルリ。
「取り分けますね。」
ルピアがさっと動く。この子、女子力高いな。
いや…待てよ。鍋に人参みたいなのが入ってる。
もしかしてと思って見ていると、案の定。自分の皿は人参を避けて盛り付ける。その分、私のところに人参が多めに入った。
私は人参嫌いじゃないから良いけど。
野菜に隠れる白い物体…なんだろうこれ。スプーンで持ち上げ、じっくりと見る。
小麦粉を練ったような白い皮の中に、肉団子らしきものが透けて見える。
ワンタンにしては具が大きい。餃子…形は少し違うけど、餃子か。
「これ、餃子ですかね。」
マンガンに聞いてみる。
「ううぅ…。」
いつの間にかマンガンがグロッキーだ。カップを握りしめたまま、うつらうつらとしている。
「…しまった。…この体は、酒に…弱いんだった。」
いや、強いと思う。
常人なら、すでに5回目の乾杯で死んでる。きつい酒をガブガブとお代わりして、あんなに飲んでたじゃないか。それで今まで平気だったんだから、絶対、酒に強い。
それなのに弱いだなんて、転生前の体はどんだけザル だったんだと呆れる。
ルピアがマンガンの背中をさする。
「大丈夫ですか?お姉様。」
「あ?…ん、だいじょうぷ…」
大丈夫じゃないよ。背中なんてさすって、ここでリバース したらどうするんだ。
「ちょっと横にしてあげましょう。」
テルルが長椅子を借りてきて、マンガンを寝かせる。
さすが看護師、手慣れている。
マンガンをテルルとルピアに任せ、私とブロンズは餃子鍋をいただく。
「こんな料理は見たことがない。さすが異世界の料理は違うな。」
ブロンズは目を輝かせ、自分の皿をがっつき始めた。
私は転生前の居酒屋で似たような鍋を見たことがある。
まずは汁を飲む。
豚骨スープ…薄いがそんな味がする。
お、この鍋も少し辛味がある。フライドチキンとはまた少し方向の違う辛さだ。
そして餃子をいただく。
私の拳くらいあるから、かなり大きい。
一口目。
餃子の皮は厚くモチモチとしている。鍋の汁を吸って、ぷるんとした食感。
そして、具から滲み出た肉汁。
小籠包のように、皮に閉じ込められていた旨味がこぼれそうになる。もったいない。
慌ててもう一口。
今度は口の中で具を堪能する。豚肉の団子のようだ。生姜のような薬味のピリリ感がある。
豚と生姜の組み合わせは、異世界でも定番なようだ。他にもいろいろな薬味が混ざっているのだろう。鍋に入っていなくても、肉団子だけで酒が進みそう。
餃子のボリューム感も楽しい。私はオーガだから二口と少しで食べられてしまうが、人間ならかなり大きく感じるはずだ。
「うまい! 辛いのにうまい!」
ブロンズが感動している。
こんなに喜ぶんなら、うちの近所の居酒屋に招待したいな。
餃子の三口目。
これは野菜と一緒に食べてみる。
肉団子の旨味をはじめ、野菜の甘味と汁のコク、薬味の辛さがマッチして、口の中に深みのある味を与えてくれる。
これはもう、鍋の宝石箱や~! 。
あっという間に自分の皿を平らげてしまった。まだ物足りない。
あぁぁぁぁ。締めにラーメンが欲しい。うどんでも良い。
…いや、やっぱりラーメンだ。豚骨ラーメンがいい。
テルルとルピアが席に戻ってきた。
「マンガン様は大丈夫ですか?」
「吐き気もなさそうだし、寝かせておけば良いわ。酒酔いには回復魔法って効かないのね。」
看護師のテルルが言うのだから間違いない。ルピアは少し心配そうだ。
「じゃ、じゃあ。マンガン様の分、いただいても良いですかね?」
「どうぞ食べて。あの人はもう食べられないわ。」
テルルのお言葉に甘えて、マンガンの餃子をもらう。
うっはー!やった!
※1「ザル」
飲んでも飲んでも酔わない人。ウワバミとも。
※2「リバース」
食べたものが上から出てくること。窒息や急性アルコール中毒の危険がある。
※3「○○の宝石箱や~!」
一世を風靡した食レポコメント。怪しい関西弁のイントネーションがポイント。




