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私は地下迷宮の中で神様と対談している。
神様の見た目は小学生くらいの普通の女の子だ。(まあ、光っている事は置いといて。)
そんな神様と同じ高さの椅子に座ってるから、座高が高い分私が神様を見下ろしてる感じになってる。
なんなんだこの状況は。大丈夫かな、私?
「そうだね…。ボクの世界で言う神々ってのは、例えると『オンラインゲームの運営』みたいなものなんだ。」
「オンラインゲーム…ですか?」
いきなり神様から、ファンタジー感のないセリフが出てきた。
インターネットのない異世界で、何でこの神様はオンラインゲームなんて知ってるんだ?
「ボクは、あっちの世界によく遊びに行くんだよ。」
世界を飛び越えてゲームで遊ぶとは、さすが神様。
「そう。オンラインゲーム楽しいよね。」
「分かります。」
私も前の世界ではオンラインゲームをやっていた。
プレイヤーにゲームを提供するのが『運営』だ。イベントやサポート、アイテム配布など色々な事をしてプレイヤーを楽しませる仕事。そして課金で搾り取る仕事。
「ボクら神々が『運営』で、『プレイヤー』は人を始めとした生き物全てみたいな感じかな。」
「人生をゲームに例えるのと同じですね。」
「まさにそのとおり。ゲームと違うのは『プレイヤー』が自由にリセットできないことだね。」
「じゃあ、『運営からのお知らせ』が『神託』になるみたいな?」
「ふふふっ、そうだね。」
良かった。当たっていたらしい。
「ボクらは、この世界がうまく回るように、常々調整をしているのさ。」
「調整…『アップデート』ですか。」
「良いねキミ。すんなり分かってくれる人がいて嬉しいよ。」
神様はニコニコしている。笑顔が可愛い。
「神々には、自分が持つ権限の範囲で世界を変える力があるんだよ。」
ゲームでもスキルやアイテムの効果がゴロッと変わったりとか、強キャラが弱体化したりとかよくある。
この世界の神様は、そんなことができるってことなんだろう。
「そういうこと。でも、一方に偏った利益を生むような変え方をすると、世界がうまく回らなくなるだろ。」
「よく聞きます。新しい武器出したら、その武器持ってないと勝てなくなったり。」
「それそれ。そういうやつ。」
神様が身を乗り出してくる。
『アップデート』すると古い『プレイヤー』から文句が出るってのはよく聞く。
「調整するたび、上の神殿に人が願いに集まるんだよ。」
神殿ってサポートへの連絡手段みたいなものだったのか。
「なんか…大変ですね。」
「ホントそう。ふふふっ。」
なんか…普通に仕事の愚痴を聞いてるみたいだ。
「あっちの世界には、そんな神はもう居ないだろう。」
「分からないです。神様とお会いするのは生まれて初めてで。」
こんなふうに神様とお話しできるとは思ってませんでした。
「この話さ、あっちの世界でゲームやってて気付いたんだ。ボクら神々の役割って『運営』ぽいなって。」
神様はそう言って笑う。
「お聞きしてると、確かにそうかもしれませんね。」
「誰かに話したかったんだけど、こっちでオンラインゲームを分かってくれる人がいなくてね。」
そりゃそうだ。このファンタジーな異世界でオンラインゲーム知っている人なんて、そうそう居ないだろう。
転生者だって…テルルさんは当然知らない。ブロンズも多分知らない。マンガンが、ギリギリ知っているかもしれない。
「ふふふっ。色々と聞いてくれて、ありがとう。」
「あ、いえ。こんな事で良ければいつでも。」
「お礼にキミの願いを叶えてあげる。」
魔法が使えるように『アップデート』してもらえる?
いや、でもさっき無理って言われた所だし。
「仲間と合流したいんじゃないの?」
それだ!それです!
神様……。皆とはぐれて不安だった私の深層心理を、良くぞ見抜いてくれました。
私は立ち上がってお礼を言う。
「そのとおりです。ありがとうございます。」
「お安い御用さ。」
神様が手をかざすと、私の目の前に扉が現れた。木目のきれいな古い扉だ。
「あっちの世界のアニメで見たんだ。扉を開けて中に入れば、仲間のところへ行けるよ。」
神様、猫型子守ロボットのアニメも見たんだ…。
「本当に、ありがとうございます。」
「ボクはキミが気に入った。また会おうね。」
そう言うと神様は、ふっと消えた。
一気に辺りが暗くなる。
「おおう。」
いきなり過ぎて変な声が出た。
神様って面白い子だったな。なんかいい友達になれそう。
…いかんいかん。こんな事考えてたら不敬で怒られるか。
私は最後に一つ残った腕輪の光を頼りに、ノブを掴んで回す。
扉は音もなく開いた。
***
「「「うわっ!!」」」
皆には盛大に驚かれた。
そりゃ突然目の前にオーガが出てくりゃ誰でも驚くわな。
コロンが防壁魔法を張り、エスクードと兵士達は武器を構えて臨戦体勢、マンガンはテルルとブロンズを庇う。
ルピアは…腰を抜かして倒れ込んでいた。
「こ、この迷宮に、擬態するような神の御使いは居ません。」
ルピアがやっと声を出す。
あー、私の偽物だとか幻影とかの可能性があるのか。
それでも皆は警戒を解かない。
「死体を操る奴は?」
「それは絶対にありません。神々はそれを嫌がります。」
エスクードの質問にルピアは即答した。
「…もしかして私、死んだ事にされてます?」
私がそう言うと、コロンは防壁を解除して、私の胸に飛び込んできた。
「無事だったんですね!」
「はい…、何とか。」
皆が私を囲んで大喜びしてくれる。
「あの状況でまさか怪我一つないとは。」
「神の奇跡ですわ。」
涙を流してまで、私の生還を喜んでくれている。
皆と生きて合流できて良かった。
私ももらい泣きしてしまう。
…そうだ。そうだよ。
確かに神々はこの世界をゲーム感覚で見ているのかも知れない。
でも、こっちは『プレイヤー』なんかじゃない。みんな命懸けで生きてるんだ。




