表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
10章:地下迷宮

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/200

53


【神殿迷宮・地下六階】


 軽い食事休憩をとる。

 食事というより、口に含む程度しかない。全然足りない。


「魔法力を節約して進むのは、なかなか難しいですね。」


 少し疲れたようにコロンが言う。

 無理もない。ここまでルピアと二人で防壁を張り続けているのだ。

 十三人を包む大きな防壁のため、一度に消費する魔法力も大きい。


「そろそろ、神々にお会いできても良い階層なんですが。」


 ルピアも疲れているのだろうか。さらに続けて言う。


「…皆様、運が悪いですね。」


 この子はまだ元気なようだ。



「そうだ、思い出した。さっきの映画にサルン君が出てたよな。」


 突然マンガンが私に話を振ってきた。


「サルン?」

「先日の対空防衛訓練に協力してくれたドラゴンだ。」


 あー…正面から横から空からと炎を浴びせまくってくれた、あの二匹のドラゴンのどちらかか。

 私にはドラゴンの見分けなんかつかない。


「良く分かりましたね。」

「サルン君は、赤み掛かった鱗の模様が特徴的だし、何より眼の下の傷が迫力あるからな。」


 映画を思い出した。地下迷宮で主人公とヒロインが、暴れるドラゴンによって離れ離れになってしまう大ピンチのシーンだ。

 映画でのドラゴンはとても強力で、魔法使いが大怪我を負ってしまう。その怪我がもとで、彼が悲願を果たした後に力尽きてしまうシーンは涙なしには観られない。


「ああ、あのドラゴンですか。映画のも怖かったですが、実物の方がもっと怖いですね。」

「違いない。」


 マンガンと私は笑う。

 色々疲れてきているから、笑うと気分が変わってとても良い。


 突然、広い部屋に出た。

 光量が足りず、向こうの壁や天井が見えない。


「ここは?」


 声が反響が小さい。かなり広そうだ。

 神様の謁見室とかだと良いのだけれど。


「そうそう、ここだ。」


 マンガンが懐かしそうに辺りを見回す。

 ナイラとコロンが協力して光を強くする。部屋全体が明るくなる。

 本当に広い。体育館くらい。学校のじゃなくて、市営の屋内競技場くらいの広さ。


 床面は比較的平らだが、ドームのような天井には、所々に鍾乳石みたいな尖った岩が吊り下がっている。


「広いですね〜。」

「地下七階に行く通路は、ちょうど反対側の壁の所にあります。」


 全員がルピアが指差す方を見る。


「通路無いけど。」


 というか、指差す先に何かがある。

 それが通路を塞いでいるようだ。

 遠いから小さく見えるけれども、実際はかなり大きそうだ。


「あれ、ちょっと動いてない?」


 目の良いテルルが怖がる。


「ドラゴン…っぽいですね。」


 エスクードが息を呑む。


「そうですね。翼の代わりに肩の後ろへ二本の棘がありますから、きっとアースドラゴンです。」


 ルピアがあっけらかんと言う。

 私はマンガンに恐る恐る聞く。


「マンガン様…。もしかして、さっきのドラゴンの話を突然思い出した理由って…」

「そうそう、前回も地下六階でドラゴンとやりあったんだよ。」


 マンガンもあっけらかんと答える。

 …この、見た目美少女の凸凹コンビ (※1)め。意外に似た者同士か?


 エスクードが望遠鏡を取り出し、ドラゴンを観察していく。


「熟睡しているみたいですね。」

「ドラゴンが寝てる今のうちに、静かに行きましょう。」


 コロンの天然なセリフに全員が呆れる。

 すかさずエスクードがツッコむ。


「……その行き先が塞がれてるんだが。」

「あ…。」


 コロンも相当疲れているんだな。


「他に道はない?」

「この広間を抜けるしかありません。」


 ルピアが首を振る。


「マンガン様、前回はどうやってドラゴンを突破したんですか?」

「まず、囮を立ててだな…」


 その説明の始まり方は、もう嫌な予感しかしない。

 よし、話を変えよう。


「ルピアさん、ドラゴンに弱点はないの?」

「背中から心臓の位置を強く叩けば、一時間ほどは意識を失うはずです。」


 意識を失ってもなぁ。

 今いる位置から動かないと意味ないし。


「穴を掘って回り込むとかは?」


 兵士の持つスコップを見てブロンズが提案する。


「この岩盤はちょっとやそっとでは崩せません。」


 エスクードが、ペチペチと壁を叩く。


「前回のドラゴンとは違うようだが。」

「御使いは、その時に居る神によって毎回変わるんです。ここも丸呑みワームやヘルハウンドの大群だったこともあります。」


 そうだよな。出入口が小さい通路しかないのに、あの大きさのドラゴンが入れるわけがない。


「やっぱり囮だな。」


 マンガンが作戦を立てる。


「一人がこちらの通路で騒いで、ドラゴンが気を引く。その隙に残りのメンバーが先へ進む。前回と同じ方法だ。」

「囮の人はどうなるんですか?」

「あの大きさじゃ、この通路の中までは入って来れないから安全だ。」


 それなら、なんか行けそうな気がする。

 さすが教導隊長。


 しかし、エスクードが指摘する。


「でも囮役は先にも進めないですね。」

「前回、囮になった兵士はそこから引き返したよ。一人で戻るから実力者でないといけないし、進む方は戦力低下が著しくて気合が必要だったが。」


 とんだ無謀なプランだった。


「そこでだ。今回は新しい作戦を追加しようと思う。」


 さすが教導隊長!


「囮に気を取られているドラゴンの弱点を攻撃する。」

「失神させようってことですね。」

「そうだ。今居る場所から動いてから、また寝てもらう。」


 ルピアはまた首を振る。


「でも、背中を攻撃するには上からでないと。」

「適任がいる。」


 マンガンはテルルを見る。


「あたし?」


 テルルは目をパチクリとする。


「ブロンズ君を抱えて飛べるかな?」

「一人くらいなら大丈夫ですよ。」


 テルルは笑う。


「あの鍾乳石を落とすんですか?」

「それだと、狙いの場所に落ちるか不確実だ。ブロンズ君にはもう一度、射撃の腕を見せてもらおう。」

「任された。」


 ブロンズも笑う。

 なんとなく、作戦の全体が分かって来た。


「ドラゴンにゴム弾が効くだろうか。」

「先程のニセオオサンショウウオダマシをふっ飛ばす威力があれば、大丈夫です。」


 ルピアが太鼓判を押す。


 …ねえ、本当に大丈夫?


※1 凸凹コンビ

 お胸の大きさの事ではない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ