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【神殿迷宮・地下六階】
軽い食事休憩をとる。
食事というより、口に含む程度しかない。全然足りない。
「魔法力を節約して進むのは、なかなか難しいですね。」
少し疲れたようにコロンが言う。
無理もない。ここまでルピアと二人で防壁を張り続けているのだ。
十三人を包む大きな防壁のため、一度に消費する魔法力も大きい。
「そろそろ、神々にお会いできても良い階層なんですが。」
ルピアも疲れているのだろうか。さらに続けて言う。
「…皆様、運が悪いですね。」
この子はまだ元気なようだ。
「そうだ、思い出した。さっきの映画にサルン君が出てたよな。」
突然マンガンが私に話を振ってきた。
「サルン?」
「先日の対空防衛訓練に協力してくれたドラゴンだ。」
あー…正面から横から空からと炎を浴びせまくってくれた、あの二匹のドラゴンのどちらかか。
私にはドラゴンの見分けなんかつかない。
「良く分かりましたね。」
「サルン君は、赤み掛かった鱗の模様が特徴的だし、何より眼の下の傷が迫力あるからな。」
映画を思い出した。地下迷宮で主人公とヒロインが、暴れるドラゴンによって離れ離れになってしまう大ピンチのシーンだ。
映画でのドラゴンはとても強力で、魔法使いが大怪我を負ってしまう。その怪我がもとで、彼が悲願を果たした後に力尽きてしまうシーンは涙なしには観られない。
「ああ、あのドラゴンですか。映画のも怖かったですが、実物の方がもっと怖いですね。」
「違いない。」
マンガンと私は笑う。
色々疲れてきているから、笑うと気分が変わってとても良い。
突然、広い部屋に出た。
光量が足りず、向こうの壁や天井が見えない。
「ここは?」
声が反響が小さい。かなり広そうだ。
神様の謁見室とかだと良いのだけれど。
「そうそう、ここだ。」
マンガンが懐かしそうに辺りを見回す。
ナイラとコロンが協力して光を強くする。部屋全体が明るくなる。
本当に広い。体育館くらい。学校のじゃなくて、市営の屋内競技場くらいの広さ。
床面は比較的平らだが、ドームのような天井には、所々に鍾乳石みたいな尖った岩が吊り下がっている。
「広いですね〜。」
「地下七階に行く通路は、ちょうど反対側の壁の所にあります。」
全員がルピアが指差す方を見る。
「通路無いけど。」
というか、指差す先に何かがある。
それが通路を塞いでいるようだ。
遠いから小さく見えるけれども、実際はかなり大きそうだ。
「あれ、ちょっと動いてない?」
目の良いテルルが怖がる。
「ドラゴン…っぽいですね。」
エスクードが息を呑む。
「そうですね。翼の代わりに肩の後ろへ二本の棘がありますから、きっとアースドラゴンです。」
ルピアがあっけらかんと言う。
私はマンガンに恐る恐る聞く。
「マンガン様…。もしかして、さっきのドラゴンの話を突然思い出した理由って…」
「そうそう、前回も地下六階でドラゴンとやりあったんだよ。」
マンガンもあっけらかんと答える。
…この、見た目美少女の凸凹コンビ め。意外に似た者同士か?
エスクードが望遠鏡を取り出し、ドラゴンを観察していく。
「熟睡しているみたいですね。」
「ドラゴンが寝てる今のうちに、静かに行きましょう。」
コロンの天然なセリフに全員が呆れる。
すかさずエスクードがツッコむ。
「……その行き先が塞がれてるんだが。」
「あ…。」
コロンも相当疲れているんだな。
「他に道はない?」
「この広間を抜けるしかありません。」
ルピアが首を振る。
「マンガン様、前回はどうやってドラゴンを突破したんですか?」
「まず、囮を立ててだな…」
その説明の始まり方は、もう嫌な予感しかしない。
よし、話を変えよう。
「ルピアさん、ドラゴンに弱点はないの?」
「背中から心臓の位置を強く叩けば、一時間ほどは意識を失うはずです。」
意識を失ってもなぁ。
今いる位置から動かないと意味ないし。
「穴を掘って回り込むとかは?」
兵士の持つスコップを見てブロンズが提案する。
「この岩盤はちょっとやそっとでは崩せません。」
エスクードが、ペチペチと壁を叩く。
「前回のドラゴンとは違うようだが。」
「御使いは、その時に居る神によって毎回変わるんです。ここも丸呑みワームやヘルハウンドの大群だったこともあります。」
そうだよな。出入口が小さい通路しかないのに、あの大きさのドラゴンが入れるわけがない。
「やっぱり囮だな。」
マンガンが作戦を立てる。
「一人がこちらの通路で騒いで、ドラゴンが気を引く。その隙に残りのメンバーが先へ進む。前回と同じ方法だ。」
「囮の人はどうなるんですか?」
「あの大きさじゃ、この通路の中までは入って来れないから安全だ。」
それなら、なんか行けそうな気がする。
さすが教導隊長。
しかし、エスクードが指摘する。
「でも囮役は先にも進めないですね。」
「前回、囮になった兵士はそこから引き返したよ。一人で戻るから実力者でないといけないし、進む方は戦力低下が著しくて気合が必要だったが。」
とんだ無謀なプランだった。
「そこでだ。今回は新しい作戦を追加しようと思う。」
さすが教導隊長!
「囮に気を取られているドラゴンの弱点を攻撃する。」
「失神させようってことですね。」
「そうだ。今居る場所から動いてから、また寝てもらう。」
ルピアはまた首を振る。
「でも、背中を攻撃するには上からでないと。」
「適任がいる。」
マンガンはテルルを見る。
「あたし?」
テルルは目をパチクリとする。
「ブロンズ君を抱えて飛べるかな?」
「一人くらいなら大丈夫ですよ。」
テルルは笑う。
「あの鍾乳石を落とすんですか?」
「それだと、狙いの場所に落ちるか不確実だ。ブロンズ君にはもう一度、射撃の腕を見せてもらおう。」
「任された。」
ブロンズも笑う。
なんとなく、作戦の全体が分かって来た。
「ドラゴンにゴム弾が効くだろうか。」
「先程のニセオオサンショウウオダマシをふっ飛ばす威力があれば、大丈夫です。」
ルピアが太鼓判を押す。
…ねえ、本当に大丈夫?
※1 凸凹コンビ
お胸の大きさの事ではない。




