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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
10章:地下迷宮

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【神殿迷宮・地下一階】


 私たち一行は順調に迷宮を進んでいた。

 先頭はルピア。中央の転生者三人を囲むように侍女を含む親衛隊が並ぶ。

 迷宮内は光の魔法が効いているそうで、昼間の室内のような明るさだ。


「右手の奥をご覧ください。あちらに見えますのが、映画『黒い魔王と白い魔女』での撮影に使われた、迷宮の広場でございます。」


 ルピアは観光ガイドのように地下迷宮を案内する。


「え、どのシーン?」

「あれだよ、『バベル』って魔法を発動させたところじゃないか。」


 ブロンズとマンガンは映画の聖地巡礼を楽しんでいる。ブロンズはこっそり観てたことを隠すのはやめたらしい。


「その通りです。『バベル』発動シーンの撮影に使われました。」

「「おおー。」」

「伝承では、こことは別の神殿で『バベル』が発動されたと伝えられています。」


 皆の反応の良さに、ルピアはノリノリで説明をしていく。


「四年前に来たときは、こんな説明を聞く余裕なかったな。」


 マンガンがキョロキョロと辺りを見回す。

 他の神官に引き連れられた一団とすれ違う。その神官もルピアのようにガイドをしている。

 ルピアも神官同士で挨拶したあと、ガイドを再開する。


「続いて左手の通路の先に見えて来ますのが…」

「ねぇ、あたしたちここに観光に来たの?」


 テルルが至極最もなことを聞く。


 そうだそうだ、魔法はどうした。

 先導する神官って、ただのガイドなのか?


 私たちは四年前のマンガンと同じで、そんな余裕はないのだ。


「神官の重要な仕事の一つが神殿の案内です。神話や伝説などに絡めて案内することで、皆様に親しみを持って貰うこが、我々神官の大きな使命でもあります。」


 ルピアは長い台詞を淀みなくスラスラと喋る。


 これはきっと用意されていたセリフだな。

 恐らく「なんで神官がガイドやってるんだ」なんて事をよく言われてるんだろう。


 市役所でも定型文というものがある。

 何回も同じようなことを聞かれるから、何度も何度も説明しているうちに、効率的な説明文が出来上がる。

 役所の人間がこちらの質問にスラスラと答えたら、それは誰もが聞いてる一般的な内容だということだ。


「じゃあ、この迷宮って何?」


 私の質問にルピアは笑顔で答える。


「それを説明するには順番があります。進みながら明らかにしましょう。」


 なんだ、その謎解きイベントみたいなセリフは。


「まあ、今は楽しみながら行こう。気合を入れるのは、もう少し先だ。」


 マンガンが軽く言う。

 やっぱり、気合を入れないといけない状況にはなりそうだ。


***


【神殿迷宮・地下二階】


「地下一階までは安全でした。先程すれ違ったように、一般の観光客も入れます。」


 ルピアについて階段を降りると、そこには金網の張ってある格子の扉があった。


「ここ、地下二階からは、気を抜かないでください。」


 階段はかなりの長さだった。地下二階はかなりの深度だ。


 ルピアは金網の向こうに何も居ないことを確認すると、その緩やかな白い袖から大きな鍵を取り出した。


  ガチャリ


 鍵が開く。

 すぐにルピアは魔法陣を展開する。


「防壁魔法です。」


 クーナに襲われた時にコロンが展開した魔法と同じだ。

 となると、何者かに襲われる可能性があるって事だろう。

 私はゴクリと息を呑んだ。


 扉が開くと、ギギギと軋む。

 ルピアの後に付いて、全員が扉をくぐり二階に降りた。


  ガシャン


 扉が勝手に閉まる。


「扉が閉まるとすぐに鍵がかかるようになっているんです。…一般の方が二階から下に入り込まないように。」


 …なんか、すっげぇ怖いんですけど。


 光の魔法の効果は届いているようだが薄暗い。周囲が見えない事はないが、恐怖感を煽るには丁度良い仄暗さ。


 映画では、地下迷宮に入ったら怪物がひっきりなしに襲って来ていた。

 それを思い出し、私たち転生者は緊張する。


「ここからは神域です。ルピアたちは神々の領域に足を踏み入れました。」


 ルピアのガイドに、疑問点が二つ。

 私はすぐさま質問する。


「と言うことは、神殿は神域の外っていうか、上にあるものなの?」

「はい。それぞれの神域に蓋をするのが各地の神殿の役目です。」


 えー、神殿ってただの蓋なの?

 だから役所みたいで、しょぼいのか。


「それから、『神々』って事は、複数の神様がいるってことですよね?」

「はい。現在、百(はしら)を超える神々を確認しています。」

「確認…?」


 神様って信仰するものじゃなくて、確認するものだっけ?


 転生者の三人が顔を見合わせる。

 それぞれ違う国で、違う文化で、違う神を信仰してきたけれど、今の表現には皆が違和感を感じたようだ。


「自分達の世界と違ってな、この世界には神様が実在するんだ。」


 そんな私たちをみて、マンガンが補足してくれる。


「自分が会った神様は、想像してたのとはだいぶ違った。少なくとも神々(こうごう)しさはなかったな。」


 そう言って、マンガンは笑う。

 コロンが続ける。


「神々にお会いして、皆様が魔法を使えるようにしてもらうのが、今回の目標です。」


 目標…

 目的じゃなくて目標。

 なんだろう。「目標」って表現には「出来なくても仕方ない」感がある。

 本当に私、魔法が使えるようになるんだろうか。


「ねぇ、ちょっと!」


 突然テルルが叫んだ。全員の足が止まる。


「奥の方から何かが蠢くような音とかするの。本当に気持ち悪いわ。」


 テルルは身震いする。

 全員が耳を澄ますが、私には何も聞こえない。コロンも首を横に振る。


「バードマンは目と耳が非常に良いそうです。テルル様は人間には聞こえない音も感じることができるそうです。」


 ナイラが解説してくれる。

 ルピアは、それを聞いて頷きながら答える。


「ここは神域ですから、そういう物も居ります。」


 そういう物って何っ!?


「俺にも聞こえる。ウゾゾゾゾって。」


 ブロンズも手元の銃を構える。


「近づいてるぞ。」

「来るわっ。」


 ブロンズとテルルが叫ぶ。

 ルピアが防壁魔法を張る。


 私にも音が聞こえてきた。

 沢山の何かが地を這うような音が…。


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