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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
9章:魔法が覚えられるって本当ですか?

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 静かな音楽が流れ、投影された映像が暗転する。

 ナイラがカーテンを開き、車内が明るくなった。


「良い…お話でした…」


 テルルはそう言って涙を拭いた。

 マンガンも目を潤ませている。


 エスクードの助言もあり、結局『黒い魔王と白い魔女』を観ることになった。

 酒を飲んで寝ているウギアと、既に観たことがあるエスクードを除く親衛隊のメンバーが二階に上がって来て、揃って映画を観る。

 私の希望していたニュースは、映画を観終わって時間があれば、ということになった。


 この映画、テルルさんの言うとおり良い話だった。


「世界が平和に近づけば近づくほど、愛し合う二人が戦わないといけなくなるなんて、悲劇ですね。」

「あの、魂を全て魔力に変えちゃう『呪いの首輪』があったから、残された時間も少ないってのが切なかったわ。」

「…でも…最後には、ちゃんと…」


 コロンもボロボロ泣いていて、感想が言えない。


こっち(エンドル)の映画は初めて見たが、意外に楽しめたな。ズズッ」


 マンガンは袖で鼻を拭う。


「エンドルにはテレビがないから、ニュースや映像は映画館に行かないと観れないんだ。面倒だから行ったことなんて無くてな。」


 そうか。電波が使えないから、配信とか放送ができない。つまり、テレビやラジオがない。

 ニュースを観るにも映画館に行かないといけないというのは面倒だ。

 そう言う意味で、この携帯映画館(携帯と言うには大きすぎる箱だが。)は画期的な発明なのだろう。

 ナイラが自慢気にするのも納得だ。


「ん? む。終わったのか。」


 ブロンズが今起きたかのように伸びをする。


 ブロンズさん、とぼけても駄目です。

 あなた、がっつり観てましたよね。

 その小さなワニの目からダバダバと涙流してたの見えてましたよ。


 ……なんてツッコむのも野暮なので、そっとしておく。


 エスクードが一階から上がってきた。


「もうすぐ到着です。食事を取っておいてください。」


 残念。クーナのニュースを見そびれた。また帰りに見せてもらおう。


***


 今日のお昼ご飯は、テルルお気に入りのピザのような料理。

 食べながら、さっきの映画の感想大会となる。


「あたしも若い頃には、あんな恋をしたものよ。壁がある程燃え上がるんですよ。」


 テルルは自分の昔話と映画を重ねて話す。ナイラはそれをふむふむと聞いている。


「これ旨いな。」


 ブロンズは映画の話ができないので、ピザっぽいのを食べまくっている。

 ブロンズの侍女は、テルルの話の方に夢中のようだ。


 可哀想に。寝たふりなんかしなければ話に入れたのに。


「コロンさん。映画の途中に出てきた『バベル』って魔法は本当にあるの?」


 映画の中盤、魔法使いマルクが『バベル』という世界中に効果のある魔法を完成させる。この魔法は、誰もが「話している言葉を翻訳して聞けるようになる」というものだ。


「はい。『バベル』は今も生きている魔法です。この映画は『バベル』誕生のおとぎ話を下地にしています。」


 やっぱり。私達の話している言葉が通じているのは、その魔法のおかげなのか。

 その言語にない言葉…例えば、この世界には電車がないから、翻訳できずに通じないということだろう。

 しかも翻訳は話し言葉だけ。だから私は書かれている文字は読めないのだ。


 なんかスッキリした。

 ちょっと気になってたんだ。いろんな国から来ているはずの転生者同士が普通に話せる事とか不思議だった。

 まさか、こんな娯楽映画で謎が解けるとは。


「今から行く神殿は、撮影にも使われてました。」

「もしかして、大きくて白い建物? 地下に迷宮のあるやつ。」

「はい。大きさは若干誇張してありましたが、ほぼ、あのままです。」


 今回の出張が、まさかの聖地巡礼となった。ちょっと楽しみだ。


「おとぎ話を膨らませて、まさか、あんな…感動作に…。」


 コロンはまた涙を流し始めた。

 そんなに感情移入するのか。

 最近、いろんなコロンの表情が見れて楽しい。


「主人公とヒロインの最後のセリフが良いよね。出会いの時のセリフと呼応してて。」


 私は更に燃料を注ぎ込んでやる。


「そう…なんです…あれが切なくて…」


 コロンだけでなく、テルルや他の侍女達もポロポロ泣き出す。

 ブロンズもこっそり目頭を押さえる。


 しかし、この状態でも私の皿を見て、お代わりをスッと準備するコロン。


 この人は…プロだな。


***


 それぞれが食べ終わり片付けが済んだ頃、ちょうど車両は駅に到着した。

 

「あぁ! 映画の話に夢中で、今回の魔法習得について説明をするのを忘れてました。」


 コロンが久し振りの天然を見せる。

 エスクードがコロンの肩をポンポンと叩く。


「今回は仕方ない。進みながら説明をするしかないよ。」

「はい、すみません。」

「大丈夫だよ。」


 そこへ寝起きのウギアがやって来る。


「さあ、降りましょう。」


 ウギアの目は細すぎて、寝ているのか起きているのか分かりにくい。

 何となく酒臭い気もするが、大丈夫か?

 まあ足取りはしっかりしているし、大丈夫だと信じよう。


 車両を降りると、ホジョツゥカ駅。

 コーカ駅ほど大きくはないがホームはそこそこ広い。乗降客も多く、賑わっていた。

 人間だけでなく、獣人やエルフのような亜人も多い。オーガは私だけみたいだが、コーカ王都ほど気にされる様子はない。


「ここは神殿の最寄り駅ですから、参拝客が多いんです。だから様々な人種が集まります。特に最近は…」


 解説中にコロンが言葉を詰まらせる。


 さっきの映画でも思い出したのだろうか。映画の影響で観光客が増えたとかよくある話だし。


「…最近は、前線の兵士の無事を祈る家族の参拝が増えています。」


 うわぁ、思っていたより重たい事実。

 そうだった、この国は戦争中だったよ。


「ゆっくりして居れませんぞ。皆様、急ぎましょう。」


 ウギアが皆を急かす。彼は私達を置いていきそうな勢いで駅の出口に向かって歩いていく。

 私達も慌ててそれを追いかける。


 あ、そう言えば、改札…ないんだ。乗るときも直接ホームに瞬間移動してたな。

 乗客の管理も魔法でしているのだろう。


 今更DVDプレーヤーが新発売のエンドルと、キップやカードがないと電車に乗れない私達の世界。どちらの文明が進んでいると言えるんだろう。


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