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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
9章:魔法が覚えられるって本当ですか?

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ⅩⅬⅥ

ウギア目線


 吾輩は第一籠城軍の事務長である。階級としてはギルダーと同じなのに、あいつは吾輩の事を少しバカにしている気がする。

 年季も年齢も吾輩のほうが上であるのに全く敬意を感じられない。


 ギルダーに対する愚痴は延々と出てくるが、今回は出張だ。休暇を含め三日間はあいつと顔を合わせずに済む。


「さあ、行きましょう。」


 吾輩は、マンガン殿と亜人三人、その侍女三人を引き連れて将軍府の裏門まで出る。

 そこには、五人の兵士が並んで待っていた。一人の兵士がこちらに気付いて敬礼姿勢を取る。


「親衛隊エスクードと申します。我ら特務班が今回の同行、護衛を承ります。よろしくお願い致します。」


 丁寧な兵士だな。彼の爪の垢を煎じずにそのままギルダーの口にねじ込みたいくらいだ。


「では、早速駅へ参りましょう。」


 エスクードと兵士達が魔法陣を開く。瞬間移動の魔法陣だ。

 仕事が早い。きっと彼は出世するだろう。

 次の瞬間、吾輩達はコーカ駅二階のホームに立っていた。


「なんで、この魔法で直接目的地へ行かないんだ?」


 リザードマンがぼやく。さっき侍女に聞けと言った質問だ。そんな簡単な事をまだ聞いていなかったのか。


「それはですね。瞬間移動の魔法には、距離と重量によって消費する魔力が増えるんです。」


 エスクードがさらっと答える。


「我々十三人を神殿まで飛ばすには、大魔導師三十人以上の全力が必要なんです。」

「そんなに大変なのか。」


 大魔導師の全力換算が転生者にちゃんと伝わるかどうかは別にして、とりあえず大変なことだというのは分かってもらえたようだ。

 大魔導師級なんて一人確保するだけでもどれだけコストが掛かることか。


「その点、鉄道なら寝ていても着きますからね。」


 コストもお値打ちだ。


「では、みなさま。乗りましょうか。」


 吾輩は目的の鉄道が止まっているホームを指差した。


「うわぁ凄い…、ホント、ある意味凄いな。」


 オーガが真新しい物を見たような事を言う。

 もしかして、鉄道を見るのは初めてだったかな。前世は田舎者だったのかもしれぬ。


「なんか、貨物列車みたいだねぇ。」


 バードマンが言った謎の表現に、マンガン殿とオーガとリザードマンが頷く。


 後でマンガン殿に聞いたところ、異世界の車両と比べると、コーカ鉄道は一つ一つの車両が半分以下の長さしかないのだと。

 彼の言葉を借りるなら「車両の数は多いが、ワンボックスカーくらいの長さしかないし、色や形もバラバラで統一感がない。」という事らしい。


 ワンボックスカーってなんだ?

 しかも車両が長かったら、カーブで曲がれないじゃないのか。異世界は一体どんな技術で鉄道を走らせているんだ。

 一度、異世界の鉄道を見てみたい。


 最後列から五両目。青と黄色のマーブル模様の車両を案内する。


「こんな小さいのに全員が乗るんですか?」

「こんなのに押し込められるのか。」


 バードマンとリザードマンが不満をもらす。


「しかも私は人間三人分くらいの大きさがあるのに。」


 オーガが困った顔をする。


「こちらは二層式の上等車両です。わがまま言わないでください。」


 ついつい溜息が出る。この車両を手配するのにいくら掛かったと思ってるんだ。


 マンガン殿が苦笑混じりに「乗ったら分かる。」とオーガ達の背中を押す。


***


「あれ? 中は広い! これも魔法ですか?」


 オーガが感嘆の声をあげる。


「車両の中に階段がある!」


 リザードマンが驚く。


 ふふふ、もっと驚け転生者。

 上等車両を貸し切ったかいがある。


「空間圧縮魔法です。この車両は五倍くらいに圧縮してありますね。」


 エスクードがまた解説してくれる。転生者への解説役は彼に任せて置けば良い。


 転生者と侍女達は景色の良い二階に上がり、吾輩達スタッフは一階を陣取る。


  ジリリリリリリリリ


 発車のベルが鳴り、先頭の機関車が動き始める。

 鉄道は駅の二階を出発し、まずは王都上空を横切る。


「この列車、空を飛んでますよ!」

「これはなんの魔法だ。」


 二階から転生者達が騒ぐ声が聞こえる。

 空中に線路を架けることはできないから、空を飛ばす。当たり前の事じゃないか。


「自分も最初に空を飛ぶ機関車を見たときは驚きましたよ。」


 マンガン殿が笑う。笑った顔も非常に美しい。

 身体は二十歳そこそこの美女なのだが、その魂は吾輩とあまり変わらない歳の男だと言うのが残念だ。


「鉄道を走らせようにも、王都は歴史がありすぎて、線路を通すような再開発できなかったですからね。」

「どこの世界でも同じです。」

「あちらの世界には、地下を走る鉄道があると聞きましたが。」

「あるにはありますが、蒸気機関車を地下で走らせるのは無理です。排気がこもってしまいます。」


 将来、排気の出ない機関車が発明されるのを待つしかないようだ。

 そのような技術を持った転生者が来てくれれば、コーカ王国も発展するだろう。


 吾輩は、持ってきた酒瓶を取り出す。

 転生者の引率なのだ。このくらいは許されるべきだ。


「いかがです?」

「では、少しだけ。」


 二つのカップに酒を注ぎ、片方をマンガン殿に渡す。


「あんまり速くないな。」

「この羽根で飛んだ方が速いわ。」

「ゆっくりなのも、景色が楽しめて良いじゃないですか。」


 転生者達は二階でワイワイと楽しく騒いでいる。まるで旅行気分のようだ。


 今回の転生者は猟師と看護士と文官だそうだ。

 今後の戦争で活躍しそうな猟師と看護士の技術は良いとしても、本当に文官は要らない。吾輩のような長年軍の事務に関わってきたものでなければ、役に立ちそうにない。


 オーガの体で、せいぜい壁になれば良い。

 奴がどんな魔法を使えるようになるかは分からないが、壁として役に立てるような魔法であることを祈ろう。


「では、今回の試練の成功を祈って。」


 吾輩はそう言って笑うと、一気に酒を飲み干した。

 マンガン殿もにこりとしてカップに口をつけた。


ワンボックスカーとは

 ボンネット部分がほとんどない全長4~5mの自動車。

 エンジンの上に運転席がある構造が多く、収容力に優れる。

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