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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
9章:魔法が覚えられるって本当ですか?

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 久しぶりに兵士長ギルダーに呼び出された。場所は、あの面接の時の部屋。

 私と同期の転生者、テルルとブロンズも来ていた。後ろにはコロン達侍女が並ぶ。


 正直、この部屋に良い思い出はない。主にギルダーのせいだ。この席の配置だって圧迫面接された時を思い出す。

 だが今回のワタシは、ちょっとウキウキしている。


「久し振りだな、君たち。」


 ギルダーの挨拶。

 それだけでイラッとする。が、今日は許す。

 

 今回は、部屋の左右に兵士が立っていない。もう私達が暴れる心配はないということだろう。

 代わりにギルダーの横へ、ドラム医師、シェケル水軍長、ソル直轄部隊長、マンガン教導隊長が並んで座る。


 三人の転生者の上司に、先輩転生者であるマンガン。

 いかついおっさんだらけの中に、見た目は坊主頭の美少女であるマンガンが混じっていると、非常に浮いて見える。まあ、中身はおっさんなのだが。


 こっちは、鱗の亜人(リザードマン)羽根の亜人(バードマン)角の亜人(オーガ)だし、濃ゆい絵面だな。


 そんなことお構いなしに、ギルダーは座ったまま話を続ける。


「今回は、君たちに魔法を覚えてもらう。」


 そう!とうとう魔法を習得することになったのです!


 昨日コロンに聞いた時から、ずっとテンションが上がっていた。

 せっかく異世界に来たんだから、魔法の1つや2つ使えないと。


「細かい説明はウギアから。」


 ギルダーの斜め後ろに控えていた中年の男が前に出る。

 糸目で恰幅がよく、人当たりの良さそうな顔をしている。


「事務長のウギアです。今回の日程について説明させていただきます。」


 事務長の話は、事務的な長い内容なので割愛。

 要は、今から鉄道で神殿へと向かい、そこで神様から魔法を使えるようにしてもらうってことらしい。

 先日は見ることのできなかった鉄道に乗れる。しかも一泊二日の小旅行だ。


 それも神様に会いに行くためだって!

 凄いな異世界。週末アイドルに会うような勢いで神様に会えるのか。


「説明は以上です。何か質問はありますか。」


 ブロンズが手を挙げる。

 水かきのついたリザードマンの手だ。


「なぜ鉄道で行くんだ? それこそ、魔法とかでは行けないのかね。」

「後で侍女に聞いてください。他に質問は?」


 ウギアは本当に素っ気ない。丁寧な分、慇懃無礼に感じる。

 ブロンズがさらに手を挙げる。

 強メンタルだな、ブロンズさん。


「もう一つ、俺たちに魔法なんか覚えさせてどうする気だ。」

「それは吾輩の範疇では答えられません。」


 ウギアはそう言ってギルダーの方を見る。

 ギルダーは首を横に振り、目を閉じる。


 答えられない秘密でもあるのか、ただ答えるのが面倒なのか。


「では、これ以上質問も無いようですし…」

「その質問には、自分が答えよう。」


 ウギアが説明を終わらせようとした時、マンガンが立ち上がる。


「単純に言うと、魔法が使えないと不便だから。これに尽きる。」


 さすがマンガン様。ギルダーと違って、ちゃんと説明してくれそうです。


「この世界(エンドル)では、魔法は使えるが電気や電波を使えないらしい。我々の世界とは物理法則が違う。」


 電気…。私達の世界では電気がないと何もできない。

 この異世界には、その電気がないってことか。


「この世界では魔法がないと何もできないのだ。自分も魔法を使えるようになるまでは、侍女が居ないと何もできなかった。」


 確かに。今コロンが居なかったら、私は絶望するしかない。

 マンガンが「気合でなんとかなる」と言わないのだから、本当にどうしようもないのだろう。


「電灯はなくても、照明の魔法があれば良い。電話はなくても、念話の魔法ができれば良い。魔法は、我々にとって科学の代わりになるものだ。」


 マンガンもかなり苦労したようだ。

 

「自分たちの世界で電気が不可欠なように、ここで生きていくには魔法が不可欠。そういう事だ。」

「…うむ。分かった。」


 ブロンズも納得したようだ。

 ただ、リザードマンのワニ顔からは表情を伺うのは難しい。


「では、これで説明を終わります。」


 ウギアがそう言って下がり、マンガンが座る。

 代わってギルダーが立ち上がる。


「では、今から出発だ。各自、部隊長に最終報告後は、ウギアと行動を共にするように。では武運を祈る。」


 ギルダーはさっさと部屋を出て行った。

 ホントに「この人のために頑張ってやろう」という気を削ぐのが得意な上司だな。


 ドラム医師が席を立って、テルルに話しかけに行く。逆にブロンズは、シェケルに近寄っていく。

 私も立ち上がろうとしたら、ソルの方から来てくれた。


「いや、座っててくれ。お前さんを見上げるのは大変だからな。」


 ソルが笑う。


「聞いてるかも知れないが、過去には神に会いに行って魂を抜かれた者も居るらしい。お前さんは大丈夫だと思うが、無事に帰って来るようにな。」


 え?なにそれ。

 ちょ…怖いこと言わないでくださいよ。


「帰って来たら、どんな魔法が使えるようになっているか楽しみだな。ハッハッハッ。」


 ソルは高笑いをする。

 さっきまであんなにウキウキだったのに、私は逆に不安が募りはじめる。

 

「引き継ぎが必要な事もないし、観光だと思って羽根を伸ばしてきなさい。」


 ソルは私の肩をポンポンと叩く。

 はじめは私を怖がっていたソルが、今では部隊の仲間として気軽に接してくれる。


「終わりましたら、集まってください。」


 ウギアが集合を掛ける。


 でも何というか……、報告の時間というより、お別れの時間っぽくない?

 ちょっと余計に不安になるんですけど。


 そんな私の気持ちとは無関係に、ウギアはマンガンと共に部屋から出ようと歩き始める。

 私達はそれについてく。


「行ってきます~。」


 テルルが手を振る。上司たちは部屋の扉の向こうで私たちを見送っていた。


 マジでお別れ会みたいじゃないですか!

 やめてよね。


登場人物紹介

「ギルダー」

種族:人間(コーカ人)

年齢:37

身長:179

体重:75

所属:第一籠城軍兵士長

好物:甘いもの

備考:

 出世欲の塊。目上にはいい顔をするが、目下の者には…。

 隠してはいるが、実は泳げない。泳げるようになるのが簡単ではない事を「その身を持って」知っているため、リザードマンの転生者が泳げないと知ってかなり落胆していた。

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