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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
8章:母、襲来…

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 クーナ達には駅の手前で追いついた。ここまで来ると行き交う人も多いが、私の周りだけは混雑しない。


「あら、お友達もお見送りに来てくれたの? ありがとうー。」


 お母様は私達にお礼を言うが、コロンを見て少し引いているのが面白い。

 だが、私の目的は駅だ。


「これがコーカ駅ですか?」


 石造りの大きな建物。太い柱が何本も立っており、大きな屋根を支えている。高さは四・五階建てのビルくらい。

 ギリシャ神殿を思わすような重厚な造り。壁や柱には様々な彫刻がされていて、商店街の建物とは明らかに趣が違う。

 それぞれの彫刻にも、いろんな……


 ああ、写真撮りたい。

 カメラが無いのが悔やまれる。


「はい。コーカ鉄道の始発駅です。さあ、行きましょうか。」


 コロンが皆を誘導し、駅舎に入る。

 いや、これはもう駅ビルだ。


 一階がコンコースで、レストラン街やお土産屋が並んでいる。まっすぐ抜けると、駅前通りに出るそうだ。

 二階がホームらしい。残念、ここからは車両を見ることができない。


「母さん、お土産を買わなくちゃ。あの角煮の缶詰って駅で売ってないかしら。美味しかったのよね〜。」


 お母様がキョロキョロする。


「ここにはありません。」


 まだコロンは冷たい答え方をする。


「あ。そ、そうなの。」

「お母様…あれは友達との食事会で食べた特別な料理なんです。街では売ってないどころか、限られた人しか食べられないんです。」


 コロンにタジタジのお母様をフォローするクーナ。

 でも、限られた人しかって、ちょっと大げさじゃない?


「そっか。ざ〜んねん。」


 私達は、周りの人達からはどう見えているんだろうか。オーガの周りに侍女の制服を着た少女と、エルフの双子(みたいな親子)。

 絶対に怪しい集団だよな。

 駅構内の人通りが私達を避けているのは、(オーガ)だけのせいではないはず。


「やっぱり、王都は物も人もいっぱいね。」


 なんやかんや言いながら、お母様は保存の効きそうなお菓子っぽいのを買っていく。


 私は後ろで、どんなお土産があるのかを見てるだけ。

 あれはなんだ?と思っても、今は喋るなって言われてるから我慢。


「あら、もうすぐ発車時間ね。じゃあ、母さん帰るわ。」

「お母様、わざわざ足を運んで頂き、ありがとうございました。」

「いいのよクーナちゃん。あなたの成長が見れて良かったわ。」


 素敵な親子の会話。


「今度は、もう一人のお友達にも会わせてね。」

「駄目です。」


 お母様の社交辞令に、コロンが即答する。

 しかも容赦ないマジレス。


 私は吹き出してしまった。


 お母様は引きつった顔で手を振り、ホームへと上がって行った。


***


 コロンの転移魔法で、私の部屋の前まで戻ってきた。

 扉を開くと、ビジネスホテルみたいなワンルーム。クーナの研究室の半分の広さもない。

 私とコロン、そしてクーナが中に入る。


「で。なんで、クーナさんがいるんですか?」


 ここは私の部屋です。


「だって、友達ですし。」


 友達という立場を逆に利用されてしまっている。

 …失敗したかな。


「お母様のお土産、私の研究室に入らないからお裾分けしようかと。」


 それならしょうがない。

 ぜひぜひ、私の部屋にどうぞ。

 友達も良いものだ。


 コロンの空間魔法に片付けていたお土産を、私のベッドの上に並べていく。


「これは魚の缶詰ですね。それから野菜の詰め合わせ…」


 食料品が多いな。娘がちゃんと食べているか心配なんだろう。でも、あの研究室を見る限りは、適当に食べてそうだけど。


「あ、お菓子あった。」


 クーナが原色の複雑な模様の入った箱を取り出した。

 そう言えば異世界に来てから、スイーツは食べてないな。


「それは『粉雪舞い散る愛の灯火』ですね。しかも地域限定版ですよ、それ。」


 コロンのテンションがあがってくる。


「あと、煎り豆粉。」


 クーナが取り出した瓶に、コロンが反応する。


「それ、カワセ産のコーヒー豆じゃないですか!カワセ産は高級品。護衛室で飲むコーヒーとは比べ物になりません。なかなか手に入らない逸品ですよ。」

 

 コロンがまくし立てる。テンション爆上がりのようだ。

 今日は怒ったり喜んだり。こんなに感情の起伏の激しい彼女は見たことがない。


「早速、召し上がられますか?」

「良いよね、クーナさん。」


 クーナも頷く。

 コロンは早速ポットに湯を沸かし、テーブルに2つのコップと皿を並べる。


「コロンさんは食べないの?」

「わたしは侍女ですから。」


 あれだけ盛り上がっておいて、そこを我慢できるなんて凄いな。


「一緒に食べましょう。」

「そうそう、みんなで食べよう。」

「お二人がそこまで仰るなら、ご相伴いたします。」


 コロンはとても嬉しそうに笑う。


 小さなテーブルを囲んで、お茶会となった。


「お砂糖は幾つ要りますか?」

「このお菓子甘いから、なくても大丈夫です。」

「ホントだ、甘い。」

「ミルク入れてみます?」

「こっちのお菓子も出そうよ。」

「コーヒー合うね。」

「クーナ様は、カワセ出身でいらっしゃいますか?」

「そう、カワセにエルフの里があるの。」


 お菓子を囲んで、話も盛り上がる。

 部隊じゃあまり話さないから、こういうのは新鮮だ。


 クーナのお母様には驚かされたが、外にも出れたし、美味しい物も食べれた。

 今日はちゃんと休日を楽しめた気がする。


 やはり休みは重要だ。

 リフレッシュしないと、心も体も続かない。


「そう言えば、コロンさんって休日は何してるんですか?」


 コロンは毎日私に付いてくれている。

 いつ休みを取っているんだ?


「任務の間、休みの日はありません。」

「そうなの?なんか、申し訳ないなぁ。」


 と、言いつつも、私としては本当にコロンに休まれると困る。


「大丈夫です。こういう時間がありますから。」


 そう言ってコロンはミルク入りコーヒーを一口飲む。


 地方公務員の七割は、完全週休二日と有給休暇消化が当たり前だ。

 残りの三割はそうじゃない。だけど役所では、コンプライアンス的に「休まないで」とは言えないから、どうしてもこう言い方をしてしまう。


「ちゃんとお休みを取ってくださいね。」


 そう言って、本人に責任転嫁する。

 つまりこの言葉の意味は、時間は自分で調整しろ、体調も自分で管理しろっていうことなのだ。


コーカ王国料理講座

『粉雪舞い散る愛の灯火』

マフィンでジャムを挟み、上から粉砂糖を振ったお菓子。ジャムの味によっていろんな種類がある。

コーカ王国の大手菓子メーカーが各地の工場で生産しており、お土産の定番となっている。

カワセ地域限定版にはイチゴジャムが挟まれており、かなり甘くてコーヒーによく合う。


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