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クーナの説明を小一時間聞いたお母様は、渋い顔をしていた。
「…そうですか、分かりました。」
まあ、自分の娘が衝動的に将軍一行を襲って捕まっただなんて、親としてはショックだよな。
だけど、さっきお母様自身がやったこととほぼ同じなんだけど…。
「あのニュースになっていた将軍襲撃事件の犯人が、クーナちゃんだったなんて……。」
お母様は下を向く。
ニュースになってたんだ。
でも、犯人を知らないって事は、名前の発表をリラが止めたに違いない。
「でも、そのおかげでクーナちゃんには二人のお友達がいるわけでしょ! すごいじゃない!」
お母様の顔が急に明るくなった。
なんて前向きな考え。
そんな思考、私にはできない。
「しかも一人は王女様!王女様よ! そして、もう一人はオーガっ。」
月とスッポンみたいな言い方に聞こえる。
「クーナちゃんは絶対に凄いと思ってたけど、そんな素敵な友達を作っちゃうなんて、本当に特別だわ。」
それ、「本当に特殊」の間違いじゃないですかね〜。
「もー、母さん心配して損しちゃった。」
喋り続けるお母様に、コロンが声を掛ける。
「お母様。もし、わたしではなく、リラ王女に同じような事をされていたとしたら…」
コロンの声が怖い。
「その場でお母様は処刑です。恐らくクーナ様も、幇助で併せて処刑となった可能性が高いです。」
コロンがお母様を睨む。
「心してくださいませ。」
そう言って、お母様を縛っていた魔法陣を解く。
「ああ…ごめんなさい。」
お母様もコロンに気圧されて、謝るのがやっと。
なんとなく居辛い雰囲気になったのをお母様も察したのだろう。
「母さん、もうすぐ帰らなくちゃ。」
「え? もうですか!?」
「そうそう、クーナちゃん。これお土産ね。」
そう言って小さな鞄を開くと、荷物をドカドカとベンチに並べる。
ベンチはあっという間にお土産で埋まる。お土産の山はその鞄より大きい。魔法の鞄なのだろう。
「また、来るわね〜。」
鞄をとじると、お母様はそそくさと正門へ向かおうとする。
「お母様、駅まで見送ります。」
クーナが追いかける。
「駅? 電車があるんですか?」
私はコロンに聞く。
「でんしゃ?」
「あ、いや…。」
私は脳内辞書を開いて、電車の類語を調べる。
「汽車とか列車とか鉄道とかです。」
「鉄道ならあります。コーカ駅から南のカワセへ向かう路線と、東のホジョツゥカに向かう路線です。」
見てみたい。異世界の鉄道。
自分は鉄オタという訳ではないが、駅とか列車とか旅行に関する事は少し気になる。
「駅まで行っても良いですか?」
「ん〜。」
コロンは眉を寄せる。
私が城の外に出たのは、今回が二回目。前回はもちろん、クーナに襲われた視察の日だ。
それ以外の休暇の日でも、城内の限られたところしか行けなかった。
研究所へ来るのもコロンの転移魔法だったし、全然街を見ることができていない。
異世界の休日なんだから、いろいろ見て回りたいじゃないか。
「だめですか?」
「お待ち下さい。今、確認中です。」
許可を出すとしたら、将軍補佐バルボアか部隊長のソルになる。
しかし、念話の魔法って便利だな。
遠く離れた人といつでも話ができる。要は携帯電話みたいなものだ。
念話が苦手な人もいるけど、それは携帯電話も同じ。
落としたり電池切れしたりしない分、魔法の方が絶対に便利だ。
「行っても良いそうです。」
「ホントですか?やった!」
コロンも驚いた顔をしている。
許可が下りるとは思っていなかったようだ。
コロンは魔法陣を開いて、ベンチのお土産を放り込む。
「こんな所に放って置く訳にもいかないですから。」
「コロンさんは優しいですね。」
私も片付けを手伝う。
コロンはちょっとだけ笑った。
少しは怒りも収まっただろうか。
片付け終わると、私達はクーナを追いかける。
「バルボア様からの注意事項です。一つ目、街中を歩くときは、道の真ん中をゆっくり歩くようにと。」
「なんで?」
これから追いつかなきゃならんのに、なぜゆっくりなのか。
「オーガが走ってたら、街の皆様が不必要に怖がられます。」
「ああ、それは分かる。」
私みたいなデカいのが突然走ってきたら、何かあったかと思うな。
まあ、観光目的だし、急がない方が楽しめる。
「二つ目、寄り道をしない。帰りは魔法で戻ること。」
「なんで?」
街を見て回りたいのに!?
「何かが起きたときに、わたしだけでは対処できないから、リスクを最低限にして欲しいと言うことです。」
「そ、そうですね。」
前回の街歩きでは私が狙われているし、リスクと言われれば反論できない。
「三つ目、あまり喋らないように。」
「なんで? ほんとにこれ、何故なんです?」
コロンからも部隊では喋らないように言われていた。今まで特に理由は聞いてこなかった。
「迫力を出すためです。無口の方が強そうに見えるとのことです。当初からバルボア様にお願いされておりました。」
「あ〜、何となく分かります。」
ペラペラ喋るチンピラより、何も言わないヤクザの方が怖い。きっとそう言うことだろう。
「では参りましょうか。」
コロンの後を付いて、無口でゆっくり歩き始める。
何度か道を曲がって大通りに出る。左右に商店が並んでいる繁華街だ。
うわぁ楽しそう。いろんなお店がある。
「これが駅裏通りになります。まっすぐ行けばコーカ駅です。」
コロンが道を説明してくれる。
人通りはそこそこだが、オーガの私を見た人達が距離を取ろうとするので、進む方向の道がさっと開ける。
モーゼの海割りみたいだな。
体の大きなオーガは一歩も大きい。ゆっくりとはいえ、普通サイズの人より速く歩ける。さらに道も歩きやすいので、ドンドン進む。
ちょっとお店とか見てみたいんだが。
コロンさん歩くの速くない? ゆっくりだよ、ゆっくり。
もっと街歩きを楽しみません?
コロンはスタスタと行ってしまう。
…つまんねえな、これ。




