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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
8章:母、襲来…

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 クーナが新しい白衣を羽織り、私達は研究所のエントランスへと向かう。


 私は、コロンの瞬間移動の魔法を使って国立研究所へ直接来たので、エントランスから外がどうなっているか知らなかった。

 外へ出ると、広い敷地がよく見える。


 正門から建物までは、舗装された道がまっすぐ伸びており、左右に広場や花壇がある。

 広場では大がかりな実験を行ったり、臨時の研究棟を建てたりするらしい。こちらの花壇は、植物学科が研究に使う植物を育てているそうだ。


「クぅぅぅぅーナちゃぁぁああ〜ん!!」


 正門から、大声でクーナの名前を叫びながら走ってくる人がいる。


「お母様っ!?」


 クーナのお母様は、脇目も振らずダッシュしてくる。目的物に一直線なのは、クーナが私の髪を狙って来た時と一緒だ。さすが親子。


「クーナちゃんっ!!」


 お母様は体当たりするような勢いで、クーナを抱きしめた。


「……そっくりですね。」


 本当に母親?双子じゃなくて?

 クーナとお母様は、顔も髪型も全く一緒。違いといえば、クーナが白衣を着ているくらいだ。

 少なくとも親子には見えない。


「エルフの人種は長命で、若い期間が長いのです。二百歳を超えてから一人目の子どもを儲けるのが一般的だと聞いた事があります。」


 すかさずコロンが解説を入れてくれる。


「ってことは、お母様は二百歳超えてるかも知れないってことですか!」

「女性の年齢を推し測るのは失礼ですよ。」


 コロンに怒られてしまった。

 しかし、クーナが二十七歳と言うのは見た目で納得できるが、全く同じ容姿のお母様が二百歳超えってのが信じられない。


「変わってないねぇ〜。」


 お母様は、クーナの顔を撫でたり伸ばしたりしている。

 過保護な母親といった感じだが、クーナは研究室で一人暮らししているわけだから、束縛毒親というわけではないはずだ。


「ちょ、お母様。みんな見てます。」

「あんたはホントにお子ちゃまだから、母さんは心配で心配で。」


 この二人、入れ替わっても分かんないな。


「こちら、新しい友達で…」


 クーナが私達を紹介しようとする途中で、


「じゃあ、あたしの可愛いクーナちゃんを(たぶら)かしたのは、あいつかいっ?」


 お母様の目がこちらを睨みつける。

 ヤバい。あの目は怖すぎる。クーナが私を襲って来たときと同じ目つき。

 背筋が凍る。


「あ、やっ。えっと。」


 私は一歩引いてしまう。

 この人、オーガ怖くないの?


「違うんです、お母様。誑かすだなんてことはありません!」


 クーナがお母様を抑える。

 しかし、お母様は構わず私達の方へ歩いてくる。


「お友達とか言って、こんな子どもに手を出して。あんたを許さないよっ!」


  ビシッ!


 お母様が指差したのは、コロンだった。


「え、わたしですか?」

「あんた以外に誰が居るって言うの?」


 コロンは私の方を見る。

 かなり困った顔をしている。


 私も困った。

 クーナを見る。


「お母様、違うんです。」


 ちゃんと、何が違うかを説明してください。


「クーナちゃん黙ってなさい。用心棒を連れてくるような奴に、まともな人は居ないよっ。」


 お母様の手に赤い魔法陣が展開する。


  ドゴーンっ! 


 次の瞬間、コロンが爆発した。


「コロンさんっ!?」


 何やらかすんだ、お母様っ!

 問答無用で攻撃したよ、この人は。

 警察、警察呼んで!

 ヤバい人がいますっ。


 砂煙がおさまる。

 しかし、コロンは無傷だった。

 黄色い魔法陣を展開し、バリヤーみたいな魔法で爆発から身を守ったのだ。

 さすが第一籠城軍親衛隊、とっさの判断は一流だ。


「話も聞かずに、いきなり攻撃するのは失礼です。」


 コロンは黄色の魔法陣を消し、次に青い魔法陣を開く。


「なっ!」


 お母様の体を魔法陣が取り囲み、その自由を奪う。


 この光景は前にも見たぞ。

 やっぱり親子。同じような事やらかして、同じような目に合うんだな。


「放せ!こんにゃろ。」

「大人しくして、いただけますか?」


 コロンさん、怒ってる?

 いつもの丁寧な言い方は変わらないが、明らかに怒気がこもっている。

 コロンが怒っているところなんて初めて見た。


 コロンが別の魔法陣を出そうとしたところへ、クーナが駆け寄ってくる。


「お母様、落ち着いて。」

「クーナちゃん、助けて!!」


 クーナはウェストポーチから小瓶を取り出すと、お母様に瓶の中の粉を振りかけた。


「クーナちゃ…」


 お母様は、すぐに眠りに落ちる。


「即効性の眠り薬です。効果は短時間ですが、高揚した精神を落ち着かせる効果があります。こちらは獏の内臓を〜」


 さすが薬学科の上級錬金術師。そんな薬を持ち歩いているのか。

 …いや、こんな状況になることを想定して準備したような気もする。


 クーナの説明モードは無視して、とりあえず私がお母様を抱えて近くのベンチまで運ぶ。

 こうやってクーナも運んだな。何から何まで親子そっくりだ。


 ベンチにお母様を横たえると、警備の人がやってきた。


「何があったんですか?」

「すすすすみません、実験中に爆発しまして。」


 クーナが言い訳をする。


「上級錬金術師の方ですか。それなら仕方ありませんが、危険な実験をする場合には周囲に十分気を付けてください。」


 警備の人はそう言って持ち場へと戻って行った。

 おいおい、上級錬金術師なら仕方ないですむのか。しかも倒れている人が居るのにスルーするなんて、警備としてどうなんだ。


「クーナさん、どうしてこうなった?」


 私達には、なぜお母様がコロンを襲ったのか分からない。

 クーナは指を額に当てて考え始めた。


「ああ!!そうか。」

「分かった?」

「は、はい。あのですね。お母様には、まだ女友達ができたとしか伝えていません。」


 コロンは納得した。


「…ということは、わたしをリラ様と間違えたということですね。」

「でも、何で攻撃なんか……」


 私とコロンは、揃ってクーナを睨む。

 きっと何か変なことを吹き込んだか、説明不足だったに違いない。


「あのその…お母様はですね。その友達のせいで逮捕されたと。」


 クーナは一呼吸おく。


「そのうえ、部屋に連れ込んでハレンチな事をしたと勘違いしているのです。」


 私とコロンの目が点になった。


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