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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
8章:母、襲来…

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「お母様が来るんですぅぅぅぅぅぅ。」


 国立研究所の医学部薬学科、クーナの研究室。

 さすが上級錬金術師の部屋だ。何やかんや良く分からない物がいっぱい置いてある。

 わりと広い部屋なのに、何となく狭く見えてしまう。


 私とコロンは、その部屋の中心でさめざめと泣くクーナに呆れていた。


「何でそんなことで呼び出されなきゃいけなんですか。」

「だだだって。お母様、にに苦手なんです。一緒に会ってくれませんか。」


 知らんがな。

 仲の悪い親子とかいるけど、家族の問題は家族にしか解決できないよ。



 家族には頼れないから生活保護になるって人も多い。

 だから、生活保護の申請があった時、役所はその家族に援助できるかどうかを確認することがある。


『ずいぶん親とは連絡取ってなくて。』


 生活苦しくて相談するなら、普通は役所より先に家族だよね。

 家族に頼れないから相談に来てる人はしょうがないけど。全く、いろんな人が居るよ。


 でも、役所としては家族に一部でも援助してもらえれば助かるのだ。

 お金の援助じゃなくてもいい。緊急連絡先だったり、入院した時の面倒を見てたりしてくれるだけでも十分な援助なのである。


『親には知られたくないというか、話したくないというか。』


 ここからは担当者次第だ。

 本人を説得してでも家族に調査をする担当者もいる。二度と連絡するなと手紙が来たり、実家も生活保護を受けていたと判明したりする。実家に帰ってこいだなんて、稀の稀だ。

 本当に、いろんな人が居るよ。



 ああ、また役所での事を思い出してしまった。


「家族は大事にしなきゃ。いざという時のためにも…。」

「あなたは、お母様という人となりを知らないから。」


 知りたくもないです。


「そこに居てくれるだけでいいんです。とととっ友達でしょ~~~~。」


 まさか友達補正を逆に利用してくるとは。

 しかしそれは織り込み済みだ。


「そうだね、友達だからね。」


 クーナの顔がぱぁっと明るくなる。


「ほほほ本当ですか。ありがとうございます。」

「家族の話には入りたくないけど、仕方ない。友達だからね。」


 友達を強調しておく。


「午後には、お母様が来るんで…」

「クーナさんのお願いを聞くんだから、後で私のお願いも聞いてくださいよ。」

「わ、分かりました。」


 よっし!

 一つ貸しを作った。


「というか、リラ様にお願いした方が良かったんじゃないですか?」

「たたた頼んだんですけど、忙しいって。」


 あれ? 将軍になんか予定ってあったっけ?

 コロンの方を見る。


「リラ様は、本日王宮で来賓接待の予定です。」


 さすがコロンさん。私が見ただけで意図を汲んで答えてくれるとか、さすがデキる侍女。


「リラ様って、将軍の仕事以外に王女の仕事もあるんですか。大変ですね。」

「はい。だからストレスも多いと思います。」


 だから、筋肉お触りタイムでストレス発散してるのか。

 なんだかリラのことが可哀そうに思えてきた。

 腕毛やスネ毛を剃るくらいなら我慢してもいいか。


「で、で、で、どうしたら良いですか?」


 クーナが私達に聞いてくる。

 どうしたら良い?は、こっちのセリフだ。


「クーナ様のお母様は何が目的で来られるのですか?」


 ため息を吐く私の代わりに、コロンが聞いてくれる。


「あのっ、友達がどんな人かを見るために。」

「見て、どうするの?」


 私の質問に、クーナが慌てる。


「そうですね。適切な友達付き合いができるか調べるんだと……。」

「それって、クーナさんの友達として相応(ふさわ)しい人かを確認に来るって事?」

「あわわわわわ、そういう意味ではないと思います。」


 私のツッコミに、クーナがもっと慌てる。

 でも、結局はそう言うことだよね。


「だからクーナさんは、今まで友達少なかったんじゃないかな?」


 私の推測に、コロンが頷く。

 クーナはしゅんとして下を向く。


 クーナはお母さんが苦手な理由が、なんとなく分かってきた。

 過干渉が行き過ぎる母親というのもロクでもない。


 さて、私はどうするべきか。


 一 お母さんに気に入ってもらえるように、いい友達を演じる。

 二 むしろ逆に嫌われるようにして、クーナの自立を説く。

 三 お母さんの評価を無視。黙って笑っている。


 まあ二は無い。メリットが思いつかない。クーナのためにはなるかも知れないが、下手をするとさっきの貸しを失うことになる。

 となると、一。私は役所では人当たりの良いほうだったから、相手が常識的な人なら問題ないと思う。

 だが、相手はクーナの母親である。蛙の子は蛙、瓜の蔓に茄子は()らない、この親にしてこの子あり…の可能性が高い。

 しかも、そのクーナが苦手としているのだ。どんなタイプが気に入られるのか想像がつかない。


 待てよ…。

 私、今オーガじゃん。

 どんだけ考えたところで、はじめましては見た目が九割。頭ごなしに嫌われる可能性も…、というより、怖がられる可能性が高い。

 三の黙って笑っているのが一番な気がしてきた。


 結婚するわけでもないし、お母さんに気に入られようと無理に努力する必要なんてないじゃないか。

 クーナだって「居てくれるだけでいい」って言ってるし。


「とりあえず、ここに来てもらうなら片付けでもしますか?」


 私は部屋の中を見回す。


 おびただしい書類や様々な実験道具、端の方には汚れた白衣。山積みの缶詰…。

 ベッドもあるから、この部屋で寝泊まりしているのだろう。


 ……汚い。

 ちゃんとシーツとか洗濯してるんだろうな。


「ムムムム無理です。この部屋ではお母様には会えません。」


 ですよね〜。


「じゃあどこで会うの?」

「研究所前の広場で。」


 クーナのお母さんは、研究所までは来たことがあるらしい。研究所のエントランス前にある広場には庭園やベンチもあり、人と会うには丁度いいだろうとのことだった。


 その時、クーナの手元がキラキラと光りだした。


「あ、手紙(メール)。」


 クーナの手の上に開いた魔法陣から、三つ折りの紙が出てきた。クーナは紙を開いて読む。


「お母様、もう近くまで来てるって!?」


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