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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
8章:母、襲来…

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 マッドサイエンティストのクーナが、とうとう釈放されてしまいました。

 その翌日。

 私は朝からリラ将軍の部屋に呼ばれている。


「やだ、行きたくない。」


 私は登園拒否の幼稚園児のように駄々をこねる。

 コロンは私の説得に苦労している。


「将軍の命令なんですから、行かないといけません。」


 命令なのは分かっているんです。でも、嫌なものは嫌じゃないですか。

 リラの部屋に行ったら、間違いなくクーナが居るでしょ。間違いなく全身剃毛ですよ。


「ほら。特訓でいろんな場所の毛が焦げちゃったから、もう少し伸びてからの方が良いんじゃないかと思うんですよ。」


 ドラゴンの火炎をあれだけ浴びたのだ。腕の毛などはほとんど無くなっていた。


「関係ありません。屁理屈はいいですから、行きますよ。」


 コロンがまるでお母さんみたいな怒り方をする。

 でも、体の大きさが私の半分くらいのコロンに怒られても怖くはない。


「今日頑張れたら、晩御飯はラーメンにしましょう。ね。」


 今度はご褒美を出してきた。なだめ方が本当にお母さんっぽい。

 見た目ロリっ子のコロンさんなのに…本当はおいくつなの?


「さあ、いい加減にしてください。行きますよ!」

「…はい。」


***


 私はコロンに押されるようにして、リラの部屋にたどり着く。


「うふふふふふふふふふふふふふふふ。」


 予想通りクーナが待ち構えていた。前回と同じ白衣だが、今日はちゃんと中に服を着ている。


 だが、彼女だけではない。他にも白衣を着た人が二人いた。

 一人は初老のおっさん。もう一人は顔がフクロウみたいな人。


「テルルさんじゃないですか!お久しぶりです。」


 私はクーナを無視して、テルルに挨拶をする。

 フクロウの丸々とした目がクリクリとして可愛い。


「お久しぶり。元気そうね。」

「はい、ありがとうございます。病院に配属されてるって聞きました。大変ですね。」

「そうなのよ。いろいろと忙しいけど、楽しいわ。」


 そうだった、テルルさんは異世界転生(この状況)を楽しめる人だった。


「今日は何でここに?」

「あなたの剃毛と採血を頼まれたのよ。」


 剃毛は分かる。いや、分かりたくはないけど。

 でも、採血もだって? 血も抜くのか。ヤだなぁ。

 本当に実験動物(モルモット)にされてるみたいだ。


「心配しなくて大丈~夫。ドラム先生は名医だから。」


 こっちの白衣のおっちゃんは医師なのか。

 テルルとドラム先生は、テキパキと準備していく。


 リラの話によると、クーナから「もらえるなら血液も欲しい」と言われたとのこと。

 流石に採血するのは素人では無理ということで、軍立病院に依頼して医師と看護師を呼んだと。

 グッジョブ、リラ様。

 クーナに剃られたり、針刺されたりしたら、多分死ぬ。


  ゴトリ。


 テルルが、特製ベッドの横のテーブルに大きなカミソリを置く。

 でかくない? 出刃包丁くらいあるよ。

 しかもなんでこの部屋で剃毛する流れなんですかね!

 せめて自室とか、病院でやって欲しいもんです。


 続いて注射器が並べられる。私が見たことのあるシリンダータイプ。

 異世界でも注射器はあるんだね。まあ、何人も転生者を迎え入れてるんだから、私たちの世界の技術も伝わっているということなんだろう。

 T字カミソリも伝えて欲しかった。


 あれ?さっきより大きい注射器も置いたぞ。

 え?さらにもう一本。もっとでかい。浣腸用の注射器かよ。

 うは、もっと大きいのが出てきた…


 大小四本の注射器が並ぶ。

 私、どんだけ血を抜かれるんだろう…


***


 終わった。…拷問だった。

 なんで、みんなに見られながら毛を剃られなきゃならんのか。

 クーナめ…、「そこに毛が残ってます。」とか言ってんじゃないよ。


 本当に私の体中の毛という毛は全て剃られた。ついでに爪まで切られた。ちょっと深爪。

 色々な所に冷たい包丁を当てられて、何度となく変な声を出してしまった。そのたびにリラが笑う。ひどい上司だよな。

 でもコロンさんたち侍女は、顔色一つ変えなかった。さすがだ。でもね、できれば見ないで欲しかった。


 続いて採血。

 小さい注射器は針が通らず、結局二番目に大きいのを刺された。ドラム先生が注射器を刺したまま、血管を探してあーだこーだする。

 テルルさんが「痛いね。もう少しだけ我慢してね~。」というが、私は泣きそうだった。


 採血量は常識的だったのは、さすが医師ってとこだ。これがクーナだったら、私は出血多量で死んでいたかもしれない。

 私の血液が入った小瓶を手渡された時のクーナは最高に可愛い笑顔だった。

 しかし、あの顔は私のトラウマになる。満面の笑みで血液を眺める様子は一生忘れられないと思う。


「ツルンツルンだね。」


 そう言ってリラは私の頭を撫で回す。そのまま首筋へ…いや、僧帽筋から三角筋へと手を伸ばしていく。そして上腕二頭筋をさすりながら、しみじみと言う。


「毛の無い方が、筋肉ってキレイに見えるわ。」


 自分には筋肉の良さは全く分からないので違いは不明だが、リラにとっては毛の有無は大きいようだ。


 鏡を見せてもらう。

 が…正直そんなに印象が変わった感じがしない。髪型だって、さっぱりしたな〜くらいにしか思えない。

 オーガって毛があってもなくても一緒なんだな。

 なんか…凹む。


「よく頑張りましたね~。」


 テルルが甲高い声で私を褒める。


 なんとなく子ども扱いされている気がする。

 私、社会人六年目だよ。しかも体は人一倍大きなオーガ。コロンといい、なぜ私を子ども扱いするのか。


 対して、ドラム先生はあんまり喋らない。

 黙々と私の健康診断をして、何かを紙に書き込んでいく。こっそり覗いたのだが、何が書いてあるかは読めない。


 そういや、なんで話している言葉は分かるのに、書いてある文字は読めないんだろうな。


 クーナはその紙を受け取り、白紙の紙と重ねて持つ。そして紫色の魔法陣を展開する。

 元の紙と同じ模様が白紙に描かれていた。


「うぉ、なにその便利魔法!?」


 私は驚いた。魔法でコピーができるなんて最高じゃないか。

 うわ~、良いなこの魔法。

 コピー機に並んだりとかないし。

 トナー交換しなくてもいいし。

 網掛け文字が読めなくならないだろうし。

 超便利じゃん。あの魔法欲しいな。


 コピーした資料を見ながらクーナがほほ笑む。可愛いのだが、私は背筋が凍る。


「では、これで失礼します。」


 片付けを終わらせ、テルルとドラム先生が出ていく。

 もっとテルルさんとお話ししたかったなぁ。また会えると良いな。


「あ、ありがとうございました。ではこれでっ。」


 慌ててクーナも、それぞれ毛と爪と血液を入れた瓶を鞄に片付ける。


「もう、行くの?」

「は、はい。研究室に戻ります。研究を再開しないと。」

「もう少しゆっくりしてもいいんじゃない?そうだ、晩ご飯一緒に食べようよ。」


 リラがクーナを食事に誘う。


「いえ、あの早く、研究しないと。試料が傷むといけないですし。」

「その鞄の中なら保存できるんでしょ。」

「な、中は低温に保たれているので、数日は大丈夫です。」


 持ち歩けるサイズの冷蔵庫ってことか。この魔法も便利だな。


「じゃあ、ご飯決定ね。」

「でででで、でも、でも。」


 渋るクーナにリラが一言。


「友達でしょ。」


 その言葉を聞くと、クーナはニヤけながら承諾した。

 待てよ、私もクーナと友達になっておいたほうが、後々何かと便利なんじゃないだろうか。


「私も食事ご一緒してもいいですか?」


「テルル」

種族:羽の亜人(バードマン)・転生者

年齢:38(中身の年齢74)

身長:175

体重:42

所属:軍立病院第1病棟・看護士

好物:ブルスケッタ

特技:毎朝目覚ましが鳴る前に起きる。

座右の銘:人生は楽しまなければ。

備考:

 前世は個人経営の小さな医院で看護士をしていた。

 夫は医師で、医院の院長をしていた。二年前に高齢のため二人とも引退。

 子どもはいなかった。

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