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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
7章:特訓の鬼

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 羽音は私達の上を通り過ぎ、それが地面に舞い降りる。

 それを見た部隊全員が絶句している。


「グルルルルルルル…」


 ミニバンくらいの大きさで翼の生えた生き物は、私が聞いたことのないような声で鳴く。

 更にもう一頭が、同じ様に地面に降り立つ。


「グギャギャギャ。」


 空にはまだ別の一頭が輪を書きながら飛び続けている。


「あれは?」


 私はタラに聞く。

 あんな生き物見たことがない。いや、アニメや特撮でなら見たことある。


「ドラゴンだ。空に居るのがワイバーン、本物の…」


 やっぱりか。

 この異世界(エンドル)って、ファンタジーな生き物が実在するんだな。

 ここは私の空想で出来てるんじゃないのかと思ってしまう。もし夢なら早く冷めて欲しい…。


「ギギギギギ。」


 空を旋回するワイバーンが、変な声を上げる。

 ワイバーンの上に誰か乗っているようだ。その人がこの怪獣達を操っているのだろう。


「ヤバい。今回は本当にヤバい。」

「ドラゴンとか、比喩じゃなかったのか…」


 隊員達のざわめきが広がる。マンガンの可愛い声がそれを一喝する。


「来るぞ!気合を入れ直せ!」

「「「はい!」」」


 とりあえず全員、持っているスコップを構える。

 ここからどんな攻撃が来るのかとドキドキする。せめて革の鎧くらいあれば、安心感が違うのに。

 まあ、教導隊長本人を守るっていう特訓なんだから、私たちを突破するような攻撃にはならないはずだ。

 …はずだ。


  ゴオォォォォ


 ドラゴンの口から炎が吐き出される。

 その正面に居た隊員が炎に飲まれる。内側の円の者も炎を浴びてしまう。


「……」


 全隊員が呆気に取られ、止まってしまう。


「何をしている、救護だろう。」


 マンガンの指示で我に返った左右の隊員が、二人に消火と回復の魔法を掛ける。


「攻撃側は救護を待ってくれないぞ。」


 マンガンの言葉が終わらないうちに、同じドラゴンが炎のブレスを吐く。救護しているのを守るように今度は四人で魔法陣を張って炎を防ぐ。


「四人も使って大丈夫か?」


 マンガンの可愛い顔からは、キツイ言葉しか出てこない。

 もう一頭のドラゴンが、少しずれた所に炎をぶちこむ。円が崩れ、手薄になったところだ。マンガンの真正面に炎が迫る。

 すかさず他の隊員がカバーに回る。その辺は精鋭部隊、何とか弾き返す。


「今日は対空の訓練だったな。」


 マンガンがそう言うと、今度は上空のワイバーンから炎が降ってくる。

 タラがその炎をスコップの平たい部分で受ける。炎が四散し、火の粉が飛び散った。


 そうか、スコップはこうやって使うんだね。…じゃないよ!

 なにこれ!?

 本当になにこれ!?

 無理無理無理無理無理〜!!


 私の今までの訓練なんて、基礎体力確認のための体力測定だとか、筋力や耐久力向上のためのトレーニング程度しかしていない。

 いきなり、実戦踏まえた特訓だなんて聞いてないよ。聞いてない!


 マンガンもマンガンだ。ちょっと外れたら、自分もタダじゃ済まないような特訓すんなよ。

 その美しい顔が燃え上がるぞ。


 地上のドラゴン二匹が、私たちの円の周りをぐるぐると歩き始める。

 いつ、攻撃が来るか分からない。


  ゴオォォォォ

  ゴオォォォォ


 二つの音が嫌なハモり方をする。


 しかも、一頭は私に向かって大口を開けている。

 クーナに襲われた時も怖かったけど、今回はその倍以上の怖さだ。とりあえずスコップの平たい所を顔の前に出して構える。


 普通の人間ならともかく、このスコップ、私には小さすぎませんか?

 あー待てよ、これってシャベルだっけ?どっちだったっけ?


 なんて現実逃避気味の思考に陥っていると、炎が来る。

 でも私は恐怖で体が動かない。


 炎は私の左側に逸れた。

 私の隣に立っていたフォリントが魔法で炎を弾く。


 熱っ!

 これだけの熱、掠めただけで火傷しそうだ。


「よしっ。」


 フォリントはガッツポーズを決めるが、見ると足先から火が上ってくるではないか。


「燃えてる!」


 残念ながら、完全に弾くことはできなかったらしい。

 消火しなきゃ。

 でも私には魔法なんてできない。どうやって消す?


「土を掛けるんだ!」


 後ろからタラの声がする。


 そうか。酸素をなくしてしまえば、火は消える。

 役所の新人研修で消防局に行った事を思い出した。燃えている所を土で埋めてしまえばいいんだ。


 私はスコップで地面を掘ると、フォリントの足に土を掛けてやる。こんな事なら幾らでもできる。そのためのスコップだったのか。


「ありがとう。助かった。」


 すぐに炎が消え、フォリントは礼を言う。

 でも、彼は足を火傷したに違いない。大丈夫だろうか。

 せめて、鎧とか体を守るものがあれば良いのに。


「そうだ。」


 私は思い立って、足元の地面を掘って、自分の前に積み上げる。割と簡単に膝くらいまでの小山ができる。

 掘った穴の方に隠れれば、腰から下は守れそうだ。


「ほう、今から土塁を築くか。そのスピードで掘れるのはオーガゆえだな。」


 マンガンが感嘆の声を上げる。


「だが、その穴に入ったら動けんぞ。それで守れるのか?」


 確かにそうだ。マンガンの言うとおり。

 それなら、ということで穴を横にも広げ、自分の前に簡単な塹壕を作る。

 しかし掘っているうちに、また攻撃が来る。

 今度は真正面。ってか、ドラゴンと目があった。


 大丈夫だ私。左右には屈強な兵士が、私の後ろにはタラがいる。スコップで弾いてくれるはず。


「グギャーー。」


 しかし、空のワイバーンからも同時に攻撃が来る。タラはそちらの防御に回る。私を守ってはくれなさそうだ。


 ドラゴンから炎が吐き出される。

 今度は間違いなく、私に向かって一直線。


「うわぁぁぁあああ。」


 私はスコップに乗っていた土を、炎に向かって投げつける。しかし、それだけの土では炎の勢いを消すことはできなかった。


 地面は炎に効果抜群じゃなかったっけ?


 現実は無情だ。

 私は炎に包まれた。


ドラゴンとワイバーンの違い(エンドル設定)

 「ドラゴン」は手足と別に翼があり、独自にドラゴン類(ドラゴン綱)を構成する。

 「ワイバーン」は二本脚であり腕が翼に変化したもので、爬虫類の一種(翼竜の仲間)。

 どちらも種類によっては炎を吐くことができるが、「ドラゴン」が魔法によって炎を生み出しているのに対し、「ワイバーン」は体内で可燃性の液体を生成している。


スコップとシャベルの違い(現代日本の規格)

 足をかけるところがついているのが「シャベル」、ついていないのが「スコップ」と定義されている。

 東日本では大型のものを「スコップ」、片手で扱える小型のものを「シャベル」と呼ぶ人が多いが、西日本では逆の傾向となる。

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