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リラ将軍とクーナ研究員は、オーガつながりで友達になりました。
「私の事はリラって呼んでね、クーナ。」
友達できて良かったね。
…とはならないみたいだ。
クーナは拘束の魔法陣でまだ動けないまま。
リラはそれに構わず話を続ける。
「なんでオーガを研究してるの?」
「そ、それはですね。子供の頃に読んだ冒険記なんですが…、オーガと仲良くなった主人公が猛毒のキノコのスープを飲む時に、オーガの髪の毛を貰って一緒に食べたところ、毒の影響を一切受けなかったという記述がありまして。そこから、オーガの髪の毛には無毒化する能力があるのではないかと。そう推察して研究を始めたのです。」
クーナは自分の得意分野になると話が長い。
「その本、私も読みました。」
コロンが話に乗っかってくる。
「オーガとの交流部分だけですが、今回の侍女をお受けした時に参考になるかと思いまして。」
さすがコロンさん。勉強熱心です。
ん?待てよ。
私はコロンに恐る恐る聞いた。
「まさか、コロンさん…今までの料理に猛毒キノコなんて入ってなかったですよね。」
「ふふふっ、大丈夫ですよ。さすがにそんな事はしません。」
「良かった~。」
私はホッと胸を撫で下ろす。
コーカ王国の料理は、ネーミングが独特過ぎて何を使って要るのかよく分からないのが怖いのだ。料理名が、闇の炎だの海の涙だの中二病極まりない。
「次の食事からキノコ試してみますか?」
「や、やめてください。」
「冗談ですよ、ふふっ。」
「ほんとに冗談だよね?」
私とコロンで笑い合う、そのやり取りを見て、クーナが驚く。
「オーガがこんな複雑な会話をしているっ!? オーガ関連の文書は少ないけれども、もっと知性の低い人種だとされていますし、少なくとも冗談が通じる相手ではないはずです! これは新発見かもしれませんね。これは人類文化学専門の同僚に報告……」
盛り上がるクーナを、リラが止める。
「あーごめんね、このオーガは転生者なの。体はオーガだけど、中身は異世界人の魂が入ってるから。」
「え゛?」
「だから、普通に会話もできるってワケ。」
「道理でこんな大人しいわけだ。」
クーナが納得する。リラはまだまだ友達とオーガ話をしたいようだ。私の方を指差す。
「このオーガって、小さい方だよね。」
「そうですね。子供です…個人差はあるかと思いますが、十~十二歳くらいでしょうか。」
私は驚く。
「子供ぉ? こんなにデカいのに?」
クーナが私に向かって説明する。
「そうです、オーガの子供ですね。大人のオーガはもっと大きいです。あと五年ほどすれば、身長は二倍くらいにはなるかと思います。」
この体、もっとデカくなるのか。
本物のオーガにはお会いしたことないけれども、絶対にお会いしたくないな。
「ねぇクーナ。その研究には、どのくらいオーガの髪が要るの?」
「そうですね…量が多いに越したことはないのですが、オーガの持つ毒耐性の成分を特定するために、とりあえずお皿一杯くらいは必要です。やはりですね。毒耐性が先天的なものか後天的なものかを特定する必要があり…」
ちょっと待って、リラ様!
なんで髪の毛の必要量を聞きましたか?
「あれでどのくらい?」
リラが私の頭を指差す。
やめてください。
「半分もないくらいでしょうか。」
クーナが私の頭を見つめる。
やめて。
「全然足りない?」
リラが不安そうにする。
マジでやめろって!
「体中の毛をかき集めれば、もう少し量があるでしょうね。」
もしかして私、全部剃られるの? 上から下まで全部!?
今度は私が泣きそうになる。
「大丈夫です。毛なんて、すぐまた生えてきます。特にあなたのようなオーガの子供の毛は柔らかく、成分の抽出にはもってこいなんですね。これは、コーカの医学が進歩するために重要な犠牲なんです。」
そんな私を見て、クーナが熱弁するけど、「犠牲」とか言っとるし…
「いいでしょ、そのくらい。」
リラは、私がこの世の終わりのような顔をしているのを見て、諭しにかかる。
「その髪型に愛着あるの?」
ないです。
とは言え、いきなり全身剃毛と言われたら泣きたくもなりますよ。
転生でオーガの体にされたあげく、つるつるてんされるなんて、私はどこまで恥辱にさらされるのか。
コロンさんが憐れみの目を向けてくる。しかし、仕方ないよねと言っているような目でもある。
「でさ。その代わりと言ってはなんだけど、オーガの専属トレーナーやってくれない?」
リラの提案に、また一同がひっくり返る。
「「「専属トレーナーぁ?」」」
「そうそう、オーガに関する知識はクーナが一番でしょ。健康管理とか筋力増加とか、その辺の管理ができる専門家が必要でしょ。」
筋力増加…それが目的かリラ将軍。ただのワガママ娘かと思っていたが、頭の回るワガママだったようだ。
「あ、!!…いや、ちょっと…。私はあくまでも薬学の専門家であってですね、生物としてのオーガの知識はそこまで…」
クーナが慌てる。が、リラは落ち着いた様子で説得にかかる。
「薬学って、生物に薬がどういう効果があるかを研究する学問でしょ。」
「…はは、はい。」
「人間に効く薬がオーガに効くかとか、オーガの健康状態が髪の毛の解毒成分に影響するかとか調べるんじゃないの?」
「あ、ははい…。いや、そうかもしれないですけど…。」
私を実験台にする気ですか?
クーナさん、もうちょっと明確に拒否るんだ。専門外の仕事をやらされることになってしまうぞ!
「研究費出す。」
「やります!」
リラの言葉に、クーナは即答した。
うわー。私、殺されてしまうかもしれん。
「やっぱり、持つべきものは友達よね!」
「そそそそそ、そうですね。」
リラとクーナは友情を確かめて笑い合う。お互い、どこか下心のあるニヤニヤとした含み笑いだ。
これって、ホントに友達関係なのかな?
まあいいや。もう、どうにでもしてくれ。
登場人物紹介
「クーナ」
種族:エルフ(コーカ人)
所属:国立研究所・上級錬金術師
年齢:27
身長:158
体重:46
専攻:薬学・オーガ研究(new!)
座右の銘:目的のためなら手段を選ぶな
備考
普段は話すときによく詰まるが、説明モードに入ると長セリフをスラスラ喋る。
上級錬金術師はコーカ王国内にも数人しかおらず、科学者としては優秀。しかし常識的な思考のできない、頭の良いバカ。




