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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
6章:初めての任務

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 将軍の視察を護衛すると聞いて、ドキドキしていたが、私は、ただただ海外旅行気分を満喫していた。初の任務ってのが、こんなので良いのだろうか。

 私は物見遊山でキョロキョロとしていただけだが、後でソルに「常に周囲を警戒して、それだけは良かった」と誉められた。


 一行は洋服屋を後にし、アンティークショップへと向かう最中だった。リラがスイーツのお店を発見して「あれ美味しそう」と指差す。

 つられて、みんながそちらを向いた時。


  バラッバラバラッ


 突然、足元に真っ黒なビー玉みたいなのがばらまかれる。


  バチバチバチッ!!


 続けて、何か弾ける音と同時にカメラのフラッシュが焚かれたような光が辺りを包む。

 黒いビー玉が弾けて光ったのだ。


「な、なんだ!?」

「襲撃!」

「将軍を守れッ!」


 兵士たちは流れるように、リラ将軍の周りを取り囲み、外向きに武器を構える。

 私は、リラやバルボアと一緒に兵士たちの輪の中に居た。

 リラとバルボアはしゃがんでおり、侍女が多い被さるように守っている。


 人々の悲鳴や混乱の声がする。


 怖い怖い怖い!

 私?私はどうするんだったっけ?


 どうして良いか思い出せず、自分のみ腕で頭を守りながら、へっぴり腰で立っていた。

 そこへ白い影が、凄いスピードで突っ込んで来た。


 なんか来た!

 どうしていいかわからない。

 私は頭が真っ白になった。


「来るっ!」


 ソルの叫び声がする。

 白いのは轟音をたてながら、私の頭上スレスレを飛びこえて行く。


 危ない当たるとこだった!

 子どもの頃のドッジボールが頭をよぎる。鈍くさいから、よく狙われたっけ。


「反対だ!」


 別の兵士の声に振り向く。

 白い影が建物の二階の壁にぶつかった。

 間違いない、白い服を着た人間だ。


 果たして、人間があんな動き出来るだろうか。普通じゃない。魔法!?


 白い襲撃者はそのまま壁を蹴って、もう一度私を狙って飛んでくる。

 私の周りは兵士で囲まれて横には逃げられない。

 上から降ってくる襲撃者。

 詰んだ…。


  ガキン!


 一瞬閉じてしまった目を開ける。


 ハサミだ。

 私の目と鼻の先にハサミがあり、刃先が私に向けられている。

 そして、ハサミを握りしめた白い襲撃者が、目の前の空中で止まっていた。

 襲撃者は、白衣を着た女だった。


「うわっ。」


 私は恐怖で座り込んでしまった。

 私の隣でコロンが、黄色の魔法陣を展開している。魔法のバリヤーみたいなものなのだろう。おかげで助かった。


 襲撃者は長いボサボサの髪で、その前髪の隙間から片目だけが覗いている。その目にはひどいクマができており、狂気をはらんで見えた。

 脚につけた長靴は、足の裏から火を噴いている。だから目にも止まらぬ凄い勢いで飛べたのか。


 長靴から火が消える。推進力を失った襲撃者は地面に落ちた。


「ぐぇ。」


 情けない高い声を出したところを、準備していた三人の兵士たちが取り囲み、襲撃者を動けないように抑えた。


 ソルたち残りの兵士はまだ警戒を解かない。襲撃の第二波を恐れているのだ。

 何も起こらないまま数分ほどすると、青色の魔法陣が現れて、応援の兵士が合流してきた。

 応援部隊が周囲の安全確認を行う。


 下手に建物などに隠れると周りが見えなくなるため、短時間なら魔法の防壁を張って、視野の広いところで動かない方が守りやすいのだと、コロンが教えてくれた。防御魔法に関しては絶対の自信があるのだろう。


 応援の兵士が、バルボアに周囲の安全を報告する。 


「警戒解除。」


 そうバルボアが宣言すると、ガチガチの守備隊形から、先程までの移動用の隊列に戻る。

 それまで襲撃者はずっと泣き続けていた。


「あとっ。あとっ、ちょっとっ、だったのにっ。」


 襲撃者は、顔を両手で覆い隠し、内股に座り込んでいた。寝グセで跳ねた髪がフルフルと揺れている。メソメソと泣いているその様子は、普通の女の子のようだった。

 まるで、囲んでいる兵士たちの方が悪者のように見える。


「オーガの髪の毛がっ、すぐそこなのにっ。」


 それを聞いた兵士たちが吹き出す。狙いは将軍ではなく、私の髪の毛らしい。


 確かに凶器はハサミだった。あれで、髪を切るつもりだったのだ。

 こいつ、私の毛を刈ろうとしてたのかっ。髪の毛なんかを狙って、将軍の一団を襲うなんて、なんてアホなんだ。 


「もう少しでっ、手に入ったっ、のにっ。」


 ぐじぐじと泣く襲撃者を一瞥し、リラは頭を切り替えた。


「さて、次へ行くわよ。」

「何を仰いますか、将軍。こんな事があったのです。今日の視察は中止です。」


 次の店に向かおうとするリラを、バルボアが止める。

 

「はぁ?何ですって~!!絶対に、あのお店に行・く・の!」

「リラ様、さすがに今日は戻りましょう。」


 侍女二人も説得するが、リラの気持ちは収まらない。


「街中を歩ける機会なんて滅多にないのよ!今日のために、どれだけ下調べしたと思ってるの!?」

「調べたのわたくしたちですよ。」

「わたしが狙われてた訳じゃないのに、なんで帰らないといけないの?」

「警備の問題もありますし、ワガママ言わないでください。」


 リラの顔が、世界の終わりを見たような絶望に変わる。その顔を見た皆が、それはそれは気の毒で、いたたまれない気持ちになってしまう程の表情だった。


 リラ様の言うことも分からないではない。狙われたのは私の髪の毛だ。

 そもそも、なんで髪の毛なのか。


「あいつ何なのよ!」


 リラは襲撃者を指差す。今度はものすごい怒りを体中で表現している。


 ま、そりゃそうだろうな。お楽しみを奪われたんだから。

 今日一日で、リラ将軍の喜怒哀楽の全ての顔芸を見せてもらった。


「身元は現在調査中です。」


 襲撃者を囲んでいた兵士のひとりが報告する。

 リラはズカズカとそこへ向かう。

 その行動があまりに突然すぎて、バルボアもソルも侍女たちも、リラを止めることができなかった。


「あんた誰?何者っ!」


 リラは足元に襲撃者を見下ろして叫ぶ。

 アグレッシブ過ぎませんか、リラ将軍!!


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