表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
6章:初めての任務

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/200

23


 将軍との初対面から七日後…。


 私たちは街へ買い物に出ていた。いい天気で、ポカポカとした昼下がり。ぶらぶらと買い物するにはもってこいの気温。

 リラ将軍は、さっきから洋服屋の試着室に(こも)って服を選んでいる


「うはぁ。見て~、これ可愛くない?」


 私とコロンは、その服選びを手伝わされている。

 私は試着室の横に立たされ、さっきまでリラが着ていた鎧を持たされていた。

 リラのお付き侍女二人とコロンは、リラのファッションショーを呆れた様子で見ていた。いつもの事といった感じだ。


「これどう?派手すぎ?」

「これは可愛いって言うより、かっこいい感じがしない?」

「こーゆー、フリルのやつ好きなんだよね。」


 リラはお店の人に着付けてもらって、どんどん着替えていく。魔法であっという間に着替えられるので、待ち時間はそんなにかからないが、試着の数が桁違いだ。

 今度はぴっちりとした赤い服で登場した。


「こんな際どいの、着たことないわ。」


 かなりボディラインが強調される服だ。

 リラ将軍って、実は胸おっきいんだな。お尻も安産型で…


「どうよ?」


 リラはモデルのようにポーズを取り、きりっとした顔で聞いてきた。


 どうよって言われても。その格好で外を歩くのは勇気いるよね。

 でも、将軍がその服を着て兵士を鼓舞すれば、士気は爆上がりかもしれない。


「リラ様。そんな格好は王族として許されません。はしたない!」

「将軍としても如何なものかと思いますよ。」

「似合わないんじゃない?」


 侍女三人からボロクソに言われ、少し凹むリラ将軍。


「ねえ、あなた転生者でしょ。あっちの世界の流行とか教えてよ。」


 そんな事言われても。

 特にオシャレとか興味なかったし。


「すみません、よく分かりません。」

「なーんだ、役に立たないわね。」


 そう言うとリラは、試着室のカーテンを閉める。


 役立たず…また言われてしまった。

 でもね、私は洋服を選ぶことに役立つ必要はないんです!

 心の中であっかんべーをする。


 この七日間は、ちゃんと起きて、ちゃんと食べて、ちゃんと仕事をした。転生してからは、ほとんど寝てる事が多かったから、規則正しい生活ができてホッとしていた。

 仕事と言っても、今は研修中といったところで、簡単な鍛錬と国や軍についての勉強程度だ。そして、一日の終わりにはリラ将軍のお触りタイム。

 初日のお触りタイムと比べると十分の一の時間で終わっていて、助かっている。


「まだ終わりませんか。」


 店の外で待機していたソルが声をかけてくる。

 リラは白いワンピを合わせながら叫ぶ。


「もう少し~!」

「それが最後ですよ、リラ様。」


 リラの侍女のうち、背の高い方がピシャリと言う。


 この世界の侍女ってのは、何でも言うことを聞く召使いや、お手伝いだけをするメイドさんとは違うようだ。厳しい意見も言うし、スケジュール管理もしてくれる、まるで秘書みたいなものだ。


 やっと買い物が終わり、店を出る。

 店の外には、ソルをはじめとする直轄部隊の護衛兵士が十人と将軍補佐バルボアが待っていた。


「はい、ソル。お願いね。」


 リラは大量の買い物袋をわたす。


「こんなに買われたのですか…。」

「いいでしょ。街で買い物なんて、なかなか出来ないんだから。」


 一応、今日の予定は「先日の空爆攻撃による被害および修復状況の確認と防衛計画の見直しの為の将軍による視察」である。

 しかし実態は、完全にリラのショッピングである。


 今朝の護衛室で行われた朝礼を思い出す。



『本日の将軍のスケジュールは予定を変更して、午前中が軍団長会議、午後から市中視察だ。オーガには視察の護衛についてもらう。初の護衛任務だな。』


 ソルが予定を読み上げると、コロンが『何の視察ですか?』と確認する。

 すぐにバルボアが髭を触りながら答える。


『将軍が会議を頑張ったご褒美だ。』

『ご褒美…』

『将軍の休日みたいなものかな。』



 バルボアでさえ、そんな認識なのだ。今日のリラは、しっかり羽を伸ばしている。あまりにウキウキし過ぎて、地に足が着いていない感じだ。


 洋服屋の店主が家族総出でお見送りに来ていた。店主はケガをしているようで、沢山の包帯を巻いているのを、妻の支えでやっと立っていた。

 その様子を見てリラが心配そうに言う。


「そんな無理して出てこなくも良いのに。」

「いえ、大丈夫でございます。リラ王女のお陰です。本当にありがとうございました。」


 店主は何度もお礼を言って、私たちが見えなくなるまで、見送りをしてくれた。

 リラの優しさと人望が垣間見えて少し驚いた。ただの筋肉好きのワガママ王女という訳でもってないらしい。


***


 将軍一行は次の店に向かう。リラが行きたい所をあらかじめ決めてきているらしい。

 午前中にソルから叩き込まれた護衛陣形に並ぶ。私はリラ将軍のすぐ後ろ。リラ将軍の右がバルボア、左に侍女二人。私の右にコロン。その周囲を包む感じに十人の兵士。先頭がソルだ。


 異世界の街を歩く。

 私は、今日初めて街に降りた。本当は仕事なのだろうが、まるで海外旅行に来ているような感覚だった。


 街には水路が張り巡らされ、船が通りやすいようにアーチ状に掛けられた橋が独特の街並みを形作っている。

 元の世界での自宅と役所の周辺では見られない風景があって、どこを見ても新鮮だ。


 そして、そこには普通の人たちの普通の生活があって、それぞれが楽しそうに暮らしている。違うのは、魔法が当たり前というところくらいだろうか。

 夕食の買い物をしている奥様の隣には買い物袋が空中をプカプカと浮かんでいるし、子どもたちはタイヤのないスケードボードを滑らせて乗り回っている。


 もっとも海外旅行のように感じる原因は、私を見る人々の目だ。

 外国人を見る時の、好奇と恐怖の入り混じった独特の視線。異質な者と距離を取るための視線。


 そりゃそうだ。

 私は今、オーガなのだ…。


登場人物紹介

「ソル」

種族:人間(コーカ人)

年齢:64

身長:173「最近縮んで来た気がする。」

体重:68

所属:籠城軍将軍直轄部隊長

特技:棒術・盾術

好物:ブラックコーヒー。砂糖は入れない派。

備考

 自分には子どもが居ない分、リラ王女を孫のように思っている。

 バルボアは年下だが、同期で仲が良い。直轄部隊長に推薦してくれたバルボアに感謝している。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ