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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
5章:この人が将軍!?

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 窓の外は暗くなり始めていた。この部屋に来てから何時間くらいたったのだろうか。


  ジリリリリリリリリリ…


 ベルの音がする。バルボアの時と同じだが、ちょっと音が甲高い気がする。


「うわぁ、もう終わりかぁ~。」


 リラが手を止めた。


「「リラ様。」」


 赤い服の女の人が二人、部屋の奥から出てきた。

 コロンと同じ服。おそらくリラ王女の侍女なのだろう。


「王宮に戻る時間です。ご準備を。」

「あと五分だけダメかな?」

「「ダメです。」」


 コロンと背の高い方の侍女とがハモる。


「わかったよ。仕方がないな~。」


 私たちは立ち上がり、出口へと向かう。

 リラが扉の前まで見送りにくる。


「なんか、将軍の仕事をしてきて、今日が一番充実していた気がする。」


 リラは名残惜しそうに私の腕を撫でる。


「では失礼いたします。」

「じゃあ、また明日ね。」


 扉が閉まる。

 やっとリラ将軍の部屋から解放されたのだ。

 私は体のいたるところを撫でられ、とても疲れていた。部屋の扉の前で、コロンと二人、ほっとため息をつく。


「お疲れ様でした。」

「ホントに。」


 コロンの(ねぎら)いが嬉しい。

 バルボアの長話とリラの長時間のセクハラ。今日は長い一日だった。

 ご飯を食べて、お風呂に入ったのが、昨日の事のような気がする。

 待てよ。風呂に入らなかった方が、臭くて触られずに済んだんじゃなかろうか。


 部屋の前で護衛をしている兵士が、そんな私たちの様子を見て、少し笑ってから、「護衛室へどうぞ。」と、隣にある部屋を指差す。


 そうだった。ソルが「終わったら声掛けを」って言ってたな。

 まだ何かイベントがあるのか……。

 いやいや。バルボアは将軍の部屋から直帰して良いって言ってたし、もう業務時間終了でしょ。


 コロンが「コロンです。失礼します。」と言って、護衛室に入る。

 みんな、扉をノックすることはないみたいだ。この国(コーカ)では、扉の外から声を掛けるのが礼儀なんだな。

 もしかしたら、この異世界(エンドル)全部がそういう文化なのかもしれない。


 護衛室には三人の兵士が待機していた。若い兵士二人とじいさん(ソル)だ。


 ソルが、私たちに椅子へ座るよう促す。

 さっきまで座っていた高級フカフカ柔らかソファとは比べものにならないが、しっかりした作りの椅子は、私の巨体でもちゃんと支えてくれる。


(やっぱり、これから何かがあるのか…。もう帰りたいな。)


 そんな事を考えていると、ソルは私たちの前にカップを置き、暖かい飲み物を勧めてきた。


「ありがとうございます。」


 コロンが礼を言う。私は疲れ過ぎていて喋る気力もなく、無言で頭だけを下げる。


「リラ王女は、どうだった?」


 ソルが先ほどまでの様子を聞いてきた。コロンが簡単にだが答えていく。


「いつも以上にはしゃいでおられました。」

「そうかそうか。」

「彼の体のあちこちを触って、喜んでおられました。」

「だろうなぁ。」

「リラ様が軟化の魔法まで使って、あの鎧を脱がそうとされたんで、みんなです止めたんです。」

「それは傑作だな。」


 ソルは嬉しそうに聞いていた。

 五分ほど報告したら、ソルは満足したのだろう、


「明朝からは、この部屋に来てもらうという事だそうだ。今日はありがとうな。」


 そう言って、私たちを送り出してくれた。


 あれ、これで終わり?

 良かった。

 ソルから、どんな頼み事をされるのかと恐れていたのに。

 やっと一日が終わった。

 自分の部屋に戻る道すがら、コロンが話しかけてきた。


「あの飲み物は大丈夫でしたか?」


 ソルが出してきた飲み物。結局残してしまったが、あれは間違いなくコーヒーだった。香りはほとんどわからなかったが、あの苦味と酸味。


「いや、少し苦くて……」

「ですよね。実はお砂糖を入れないと飲めないんです。今日は少し我慢して飲みました。」


 コロンさんもコーヒーは苦手なのか。

 ブラックコーヒーが好きなのは、違いのわかる大人だけなんだろうな、きっと。(個人の見解です)


「私はよくコーヒーにミルクを入れます。」

「え?ミルクですか!?」

「はい。苦味が和らぐので飲みやすくなります。」

「それは今度試してみましょうか。」


 こちらの世界の人は、コーヒーにミルクを入れたことないのか…。カフェラテもコーヒー牛乳も、エスプレッソも知らないなんて。


 ゴツン。


 そんな事を考えていたら、また門に頭をぶつけた。朝と同じ所だ。少し暗くなっているから、仕方ない。

 あぁ、行きの時よりも門の歪みが大きくなってしまったような気がする。


「大丈夫ですか?」

「すみません、またやってしまいました。」

「気を付けてくださいね。」


 コロンの「気を付けて」は、私の体を案じているのか、それとも周りのものを破壊しないように注意したのか。

 そんな事を気にし始めるとマイナス思考が止まらなくなるので、話を変える。


「明日もこんな感じなんですかね?」


 戦争に駆り出されるよりは百倍ましだが、正直、あのセクハラを受け続けるとなると辟易する。


「どうでしょうね。筋肉を増やすために鍛える特訓とかではないでしょうか。」

「うへぇ。」


 二人で笑った。

 だか、それはありそうだ。あの部屋に掛けられていた絵を見る限り、今後もがっちりした筋肉を維持しないといけないんだろうな。


「きっと大丈夫ですよ。あなたなら、やり遂げられます。」


 コロンが励ましてくれる。

 でも、それって何の根拠もないですよね。


 私が浮かない顔をしているように見えたのか、今度はコロンから話を変える。


「夕食は何でしょうね。」


 今日もコロンは付きっきりだったから、別の人が作ったのだろう。

 料理は楽しみなのだが、まだお腹は空いていない。体を動かしたというほどの事はしていないからだろうか。


「ん~。お腹が空いていないので、今夜は要りません。」

「そうですか?…お疲れでしょうか。」

「きっと昼に食べ過ぎたんですよ。」


 部屋に戻ると早々に眠りについた。

 つっかれた~~~!


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