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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
4章:配属先が決定しました。

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十五


 市役所別館三階。税務部税務課。

 私の二つ目の職場。


 市の税金と言っても、個人市民税、固定資産税、法人市民税、軽自動車税、入湯税、たばこ税、いろんな税がある。

 それぞれに複雑な制度があって、非常にわかりにくい。


 鳴り止まない電話。

 受話器を置いた瞬間、次の着信が入ってくる。


 税金の担当は疲れる。

 納税通知書を発送するといつもこうだ。


「はい、もしもし。税務課です。」

「そうですか、去年より税金が高くなったと。」

「いえ、間違いではないです。法律が変わりまして、税率が上がったんです。」

「同封のチラシにも説明を記載してあります。」

「はい。二年前のチラシから説明を入れています。市の広報誌やホームページでもお知らせしています。」

「ですから、間違いではありません。」

「払われない場合は、納税の担当から督促、催告がされます。」

「間違いじゃないです。法律が変わったんです。」

「聞いてないっていわれても、ニュースでもやってましたよ。」

「知らないと言っても、法律に従って督促します。延滞金かかりますよ。」


 ガチャンと切られた。


 すぐさま、次の電話がかかってくる。

 似たような内容が多い。


「はい、もしもし。税務課です。」

「つまり、上がった税金を払うと生活が苦しいということですね。」

「納税の担当がありますので、そちらでご相談していただけますか?担当の電話番号お伝えしますね。」

「たらい回し?こちらに電話する前に、どこかに連絡されました?」

「そうですか。確かに、市の税金ですから県税事務所に連絡しても分かりませんね。」

「いえ、間違いではありません。」

「払われない場合は、督促、催告がされます。」

「納税通知書が入っている封筒に電話番号書いてありますよね。」

「捨てたと言われても、ちゃんと書いてありますから。」

「ですから、今から伝える納税担当の電話を…」


 ガチャンと切られた。


 昼休みまでトイレに行く暇もない。

 その昼休みも十五分だけ。担当者が交代しながら取る。


 やっと私の昼休みがやってきた。

 外食はおろか、コンビニで買ってくる時間もないから、朝のうちに買ってきておいたおにぎりと飲み物をお腹に入れる。

 冷たい食事だが、今月いっぱいは仕方がない。


 隣の席の別堂さん(四十八歳)が声をかけてきた。たまたま電話が途切れだのだ。


「聞いてない!って、メチャクチャ怒られたわ~。」


 別堂さんがさっきまで電話を受けていたんだろう。いきなり愚痴り始めた。

 今年は特にそう言った電話が多い。増税があった直後だ。想定されてはいたが想像以上だ。


「なんで知らなかったら、許されると思ってる人が多いんでしょうね。」


 私が受けた電話は、「そんな事聞いてない・知らない」→「だから自分は悪くない」→「だから払わなくていい」というよく分からない三段論法が多い。


「何でだろうね。その辺は適当に聞き流して、言わなきゃいけないことだけバッチリ言ってるわ。」


 別堂さんは、今年受験を控えたお子さんが居るおばさん職員だ。

 ただし、窓口や電話での市民応対はベテランの域に達している。本人は適当にと言っているが、ちゃんと相手の話を聞いて適切に回答している。


「文章を読んでないか、読めないような人が、電話でキレてくるんでしょうね。」


 私の言葉に、別堂さんが苦笑する。


 また着信だ。

 別堂さんが出る。


 私はおにぎりの残りを頬張ると、短い時間だけでも寝る。というか目を閉じる。

 少しでも、体力…いや、精神力を回復させるのだ。


 十五分のアラームが鳴る。


「さて、と。」


 私は目を開き、鳴っている電話に出る。


 今日は夕方五時までこんな感じ。


***


 開庁時間が終わった。着信は全て留守番電話になる。

 担当者全員が一息つく。


 しかしその後、毎日しなければならない仕事に取りかかる事になる。

 今日一日で机の上に溜まった資料にうんざりする。

 この時期は十二時(てっぺん)過ぎるまで終わらないときもある。


「ごめんなさいね。お先に失礼します。」


 それでも別堂さんは、お子さんが居るので残業できない。定時で帰っていく。


 仕方がないとはわかっているが、ちょっと不公平感はある。

 ちくしょー。私が結婚して子供ができたら、最大まで育児休暇とってやる。


 そんなことを考えながらも、時間内で終わらなかった分をみんなで手分けして片付ける。

 文書を発送する準備をしたり、書類に不備がないか審査したり…。


 ああ、こんな生活から抜け出したい。

 異世界に生まれ変わって、スローライフとか満喫できたら楽しいだろうなぁ。


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