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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
4章:配属先が決定しました。

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 面談が終わった後、夕食までの間にコロンさんからいろいろ聞くことができた。

 そう、念願の『説明』をしてもらえたのだ!


 ここはどこなのか。

 なぜ私はここに居るのか。

 前の転生者はどうしているのか。

 後、神話についても聞きたい。


 なんて、どんどん聞いていたら、いつの間にか窓の外は真っ暗になっていた。


「そろそろ、晩御飯にいたしませんか」

「え?もうそんな時間ですか。お願いします。」


 そう言えば、お腹が空いた。

 お昼ご飯は美味しかった。こちら(エンドル)に来て初めての食事だったが、しっかりとした中華が食べられてよかった。


 あの中華料理を残してくれた前の転生者について、もっと聞きたかったな。

 とはいえ、今日は色んな事を知りすぎて頭いっぱいだ。


「今日は私が料理当番ではありませんでしたので、どのような料理なのか分かりませんが。」

「え?ああ。」


 あ、そりゃそうか。コロンさんは私にずーっと話をしてたわけだし。今夜の中華は無理かぁ。

 でも、エンドルの料理ってのも気になってきた。

 虫や石を食べたりってことはなさそうだし。


「では、ご準備いたしますね。」


 コロンが魔法陣を作り、一旦消える。

 私はベッドに横になった。

 今日聞いたことを振り返り、整理する。


「要は…。」


 独り言だ。

 こういうのは声に出した方がうまくまとめられる。


「ここはコーカ王国の首都。その中心にあるコーカ城…。」


 コーカ王国はエンドルの中でも五本の指に入る大きな国だそうだ。


「隣のシヘー連邦と今、戦争をしていて…。」


 戦争かぁ。

 戦争なんて、歴史の教科書とニュースでしか見たことがないよ。


「私たちは戦力強化のために転生させられたと。」


 戦力として亜人の力を利用しようということらしい。

 だから、私はこんな体になってしまったのだ。


「戦い…ね。」


 今でも戦争している国に身を置いている実感はない。

 自分が戦争に巻き込まれたという実感もまだない。


「嫌だなぁ。」


 さっきまで着せられていた鎧はベッドの横に積まれている。

 その鎧を見て、大きなため息が出る。


 戦いたくない。

 あんなの着て戦いたくないよぉ。

 そもそも私には、この国のために何かしようという動機がない。 

 他の転生者はどう思っているんだろう。


 その時、再び魔法陣が現れ、コロンが皿を持って出てきた。


「さあ、晩御飯ですよ。」


 私は起き上がって、テーブルの椅子に座る。

 コロンが皿を並べる。


 焼肉かな…?

 骨付きの‥‥スペアリブみたいな。


「これは…なんっていう料理ですか?」

「コーカの伝統的な料理で『闇の炎に抱かれし深淵なるタウロスの断片』です。」


 …?

 何だって?


「え…何ですか?」

「『闇の炎に抱かれし深淵なるタウロスの断片』です。」


 まじか。

 なんだその中二病な料理名は。

 しかも、それが伝統的な料理なの?


 私は笑いをこらえながら、脳内辞書を引く。


タウロス:

 taurus(ラテン語)。タウルスとも。英語読みはトーラス。おうし座のこと。


 ってことは、牛の肉か。

 深淵なる牛…。うん、分からない。牛の種類かなぁ。松坂牛とかホルスタインみたいな?

 闇の…ってのもよく分からないが、炎に抱かれるってことはオーブンかグリルで全体から熱を加えているのだろう。

 断片ってことは肉の破片ということか。OK。これはスペアリブだ、きっと。


「それから、こちらもどうぞ。」

「おおぉ。パンだ。」


 ちゃんとしたパンだ。それにスープもついてきた。


「こちらは転生者の皆様に好評です。いかがでしょうか。」

「ええ、嬉しいです。ありがとうございます。」


 あ~、でも箸は要らないよ。コロンさん。


「ナイフとフォークってありますか?」

「あ、はい。ございますが…。こちらをどうぞ。」


 だがしかし。

 せっかく出してもらったフォークとナイフは役に立たなかった。

 ダマスカス鋼で作られた特製の箸とは違い、ちょっと握っただけでひん曲がってしまった。


「ダメかぁ。」


 力の加減ができないこの体が憎い。

 というか、ナイフとフォークこそ、特製のを準備しておいてよ。

 仕方ない。行儀悪いけどワイルドに箸で突き刺して、そのままかじりついて食べるか。


「申し訳ございません。私が切りましょう。」


 そう言って、コロンがスペアリブを切り分けてくれる。


「骨も召し上がりますか?」

「え?いや、食べないです。」


 骨も丁寧にはずしてくれた。


 やっぱり、コロンさんは天然か?

 違うな。きっとこの体(オーガ)は平気で骨ごと食べてしまう種族なのだろう。


「どうぞ、お召し上がりください。お代わりもたくさんあります。」


 箸で『深淵なるタウロスの断片』を挟んで口に運ぶ。

 普段ならスープやサラダを一口先に食べるのだが、せっかく目の前で切ってくれたので、肉からいただく。


 美味しい。やっぱり牛肉みたいだ。

 口の中で広がるジューシーな肉汁が…


 いや、食レポは昼食(※五話参照)でやったので、もういいや。

 とりあえず、エンドルの食事は怖がらなくても大丈夫そうだ。

 肉を食べ、パンをかじり、スープを飲む。


「そうだ。『闇の炎』って何ですか?…特別な魔法ですか?」

「いえいえ。蓋を閉めて焼くので、光が入らないから『闇』なんです。」


 なんだ、本当にオーブンなのか。異世界と言っても、そんなに料理方法は変わらないらしい。

 私は安心して『深淵なるタウロス』を食べ始めた。


***


 結局、今回もお代わりをいっぱいしてしまった。

 コロンさん曰わく、オーガの体が肉を欲しているらしい。


 そりゃあ、これだけの体を維持するには、大量に食べないといけないだろう。

 ただ、元の私は少食だ。こんなに食べた事がない。

 どれだけ食べても満腹にならないという違和感。というか奇妙な感覚が気持ち悪い。


「すみません。報告がありますので、一旦、失礼いたします。」


 コロンは食事の後片付けが終わると、そう言って魔法陣の中へ消えていった。

 私はまた一人になった。


 ふむ。

 やることがなくなった。


 コロンから、いろんな話を聞いている時にメモがしたくて紙とペンを貰った。だが、やはり力の加減が難しく、すぐ紙は破け、ペンは折れてしまった。


 パソコンが欲しいなぁ。スマホが欲しいなぁ。

 しかしこの体では、秒で破壊してしまうだろう。


 筆記ができない、文章が作れない事務職なんて、何の役にも立たない。


 ふと見上げると、窓の外に月が見える。

 エンドルの月も満ち欠けするんだな。


 ……。


 やることがない。

 寝よう。


 私は、ベッドに横になった。


コーカ王国料理講座

天地(あめつち)の恵みの粒子を集めて(くる)めた黄金の拳』

 ・天地の恵み=小麦 →の粒子=小麦粉

 ・集めて包めた=練って丸めた

 ・黄金=絶妙な火加減で焼き色が金色

 ・拳=こぶし大の丸

 つまりパンのことである。コーカでは手のひらサイズの丸いパンが一般的。

 コロンがパンの正式名を言わなかったのは、聞かれなかったから。

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