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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
3章:圧迫面接

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 自分が前線に放り出されない方法を考えろ。

 ギルダーが好きそうな言い方を考えろ。


「私は事務職ですから、文官の扱い方を知っています。」


 この言葉を聞いてギルダーが座り直した。


 よしよし。食いついたかな。

 もう少し具体的に。


「私は、文官から金を引き出す方法を知っています。」


 ちょっと言い過ぎてる。

 たかだか七年目になったばかりの公務員に、そこまでの能力はない。

 ちょっと見栄を張って、ハッタリをかましてみた。


「側に置いていただければ、あなたが面倒だと思っている仕事がスムーズにいきます。」

「つまり、私の側近にしろと?その巨体でか?」


 別に…お前なんかのそばに居たいわけじゃない。

 けれど、兵士長なら一兵卒よりは安全な場所にいるに違いない。


「護衛としても働きます。兵士長の言うとおり、いざという時にこの体は最強の盾になります。」


 これでもかと自分をアピールしてみる。

 就職試験の面接を思い出すなあ。

 さすがに、あの頃はここまでハッタリかますことはなかったけど。


 ギルダーが呟く。


「護衛か…」


 ギルダーの「盾にしかならん」を尊重しつつ、その上で困っている点についても解決策を提案する。

 さらに私の身の安全も確保。我ながら完璧だ。


「悪くない意見だと思います。」


 シェケルも乗っかってきた。


 そういえば私が転生させられた時に居たのは、この親衛隊長だったな。

 きっと転生の責任者なんだろう。

 だから「使えん」者が多いと、彼の責任になるから、何とか有効活用したいんじゃないか。


 などと、想像しつつギルダーを見る。

 さっき投げ出したペンを拾って止まっていた。何かを考えているようだ。


「お前は保留だ。追って処遇を連絡する。」


 ギルダーはそう言って立ち上がり、入ってきたドアから出て行った。


「では、これで転生者の面談を終了する。各自、速やかに部屋に戻ること。」


 シェケルも紙とペンをまとめて席を立ち、事務的な締めの挨拶をすると、同じドアから出て行く。


「お疲れ様でした。」


 コロンが後ろから声をかけてくれる。

 私もホッとする。

 まあ、成功した方なのかな。最後は「使えん」とは言われなかったし。


「面談の順番が最後で良かったですよ。」

「そうですね。途中、私ハラハラしました。」


 コロンさんがハラハラしたのは、ブロンズさんが連れ出されたことだろうか。それとも私が兵士長に意見したことだろうか。


 隣のフクロウの人も侍女と話をしていた。


「さあ、テルル様。行きましょうか。」


 フクロウの人、テルルって名前なんだ。

 やっぱり女の人っぽい名前だから、きっとおばあちゃんだろうな。


「あの…テルルさん。」


 私はテルルに声をかけた。


「お互い、大変なことになりましたね。」

「そうね。長く生きてきたけど、こんな事は初めてだわ。」


 そりゃあ異世界転生なんて、人生に何度もあっちゃあ困るわ。


「これからどうなるんでしょうね。」

「私は飛ぶ練習をするみたいよ。」

「大丈夫ですか?」

「いえ、楽しみだわ。自分の羽根で飛ぶなんて素敵じゃない?」


 なんだ。このばあちゃん、この状況を楽しんでるぞ。

 やっぱ長生きすると違うな。


「こんな体にされて、怖くないんですか?」

「そうだね。怖いというよりも、体の痛みがなくなったことの方が嬉しいわ。」


 嬉しい!?


「なんだか、体も軽くなったみたい。しかも、こんな素敵な羽根まで。まるで生まれ変わったみたい。」


 いや、実際生まれ変わってるんですけど。

 大先輩の考えることは違うなぁ。


「テルル様。そろそろ。」


 テルルの侍女が急かす。


「あら、もう行かなくちゃなのね。またお話ししましょう。」


 テルルは手を振って、部屋を出ていった。


「では、私達も行きましょうか。」


 コロンが手を差し出す。手を借りなくても私が立ち上がるのに支障はないが、一応その手を取って立ち上がる。

 帰りも兵士二人に挟まれて連行されるようだ。


 私たちが扉から出ると、部屋の中からガチャガチャと金属のぶつかる音がした。多分兵士達が警戒を解いたんだろう。

 さっきと同じ通路を歩いて、部屋に戻る。来る時よりも早く戻れたと感じたのは、緊張感が全然違うからかもしれない。


 あー、喉が渇いた。

 緊張して、いっぱい喋ったし。ほんとに疲れた。ウーロン茶飲みたい。


 ガチャガチャと鍵のかかる音。また、この部屋に閉じ込められた。


「かなり警戒されてるんですね、私。」

「オーガはとても強い人種なんですよ。暴れ始めたら手が付けられないくらいに。」


 へえ、エンドルではオーガも人類に含まれるのか。

 モンスター扱いされるんじゃないにしても、これだけ厳重にされるといい気はしない。


「そんなに強いんですか?」 

「試してみます?」


 コロンは虚空に手をかざし、黄色い魔法陣から缶詰を取り出した。

 そして私に手渡す。


 あ、缶詰あるんだ。


「これを?」

「はい、ぎゅっと。どうぞ。」


 私は右手で掴む。力を入れる。


 ベキベキ。ブシュ。


 缶は、手の中でつぶれて中身がポタポタと滴る。

 柑橘系の匂いだ…中身はオレンジかな…もしかしたらオレンジジュース?

 … …

 いやいやいやいやいや!


「嘘でしょ!!」


 多分、空のペットボトル潰すくらいの力ですよ。

 オーガって、こんなに力強いもんなの?


「怖いくらいの力です。」


 コロンも滴る缶詰に驚いていた。

 できるだろうとは思っていたけど、いざ目の当たりにして驚いたといった感じだ。


「私、よく箸を折らずに持ててたな。」

「あれはですね…。」


 コロンがまた魔法陣を描き、今度はハンカチ、そして箸とカップを取り出した。

 私の手からボロボロになった缶を受け取ると、ハンカチで手を拭いてくれた。


「ありがとうございます。」

「では、こちらをご覧ください。」


 スッキリとした手に、箸とカップを渡される。


「あ、金属だ。」


 箸もカップも金属だ。箸にはご丁寧に木目まで入っている。ぱっと見、木と見間違うわ。

 アルミみたいに軽いのにステンレスみたいに丈夫。

 いや、今の私の握力からするとステンレスの硬さどころじゃないよな。


「ダマスカス鋼で特別に作っていただきました。」

「そんな簡単に作れるものなんですか?」


 私がウーロン茶が好きだと知ってから、すぐに準備したのだろうか。

 一晩でこんなものまで作れるのか。すごいな。魔法。すごいな。親衛隊。


「いえ、三日ほどございましたので、しっかりしたものを作っていただきました。」

「三日ぁ!?」

「はい、三日間寝ておられました。」


 そんなにぐっすり寝ていたのか、私。

 そりゃあ、お腹がすくのは当然だ。


 そんなことを考えつつ、カップを見つめて思い出した。


「コロンさん、あのお茶いただけますか?」

「はい。少々お待ちください。」


 のどがカラカラだ。


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