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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
23章:超絶!瞬間移動要塞コーカ将軍府

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 赤く燃える空を背景に、点のような影が見える。

 …三つ…いや四つの空飛ぶ小さな影。


「あれ…は?」


 私が指差した方向をみんなが見る。


「どこだ?」

「何?」

「あそこです。かなり遠いですけど。」

「どれ?」

「いや、分からない。」


 他の人には見えてない。


「何が見えるんだ?」


 …もしかして私にしか見えてないの!?

 あれって霊的なもの? 空襲を受けたキンユー市民の亡霊?

 怖い怖い怖い。


 その時、下から複数の光が駆け上がってきた。火の玉?

 火の玉の一つが、影にぶつかって花火みたいにはじける。

 一つの影が落ちていく。

 誰かの攻撃で撃墜されたのだ。


「本当だ!何か飛んでる。何だ?」


 タラたちは目を細め、空を指差す。

 良かった。幽霊の類ではなさそうだ。


 撃墜されたのを見て、残りの影三つは高度を上げる。上空の闇に溶け込み、タラからは影が見えなくなる。


「どこだ?どこに行った!」


 かろうじて私には影が近づいてくるのが見える。テルルやブロンズには及ばないものの、オーガってのは人間より目が良いのかもしれない。


「あそこです。」

「どんなのだった?」

「羽の生えた…人。」


 人影はそれぞれに羽ばたいている。

 私はこんなシルエットを知っている。


「テルルさんみたいな…。」

「きっと羽の亜人、バードマンだな。恐らく敵だろう。」

「でも、後ろを飛んでるのは羽の形が違います。」


 タラが空を睨みつける。が、彼には見えていない。


「そっちはガーゴイルかもしれないな。全部で何体飛んでいる?」


 敵が空から飛んできているというのに、よくもまあタラは落ち着いて話せることだ。

 私は内心ドキドキしながらも、なんとか声を絞り出す。


「…三です。バードマンが一人、ガーゴイルが二人。」

「分かった。」


 早速、タラはバルボアに念話の魔法で連絡を入れる。

 しかし、すぐに首を降った。


「誰かと話をされている最中のようだ。」


***


『無理を頼む。』

『分かりましたバルボア様、間もなくそちらに向かわせます。』


 バルボアは、ギルダーに代わって各所に念話で連絡を入れていた。


 ギルダーは兵士長として、この援軍の指揮を取らなければならない立場だ。

 軍のトップがすべての連絡を把握する必要はない。本来なら司令部を設置し、その中の者たちで集められた情報を整理する。そしてその情報から判断するのがギルダーの仕事となる。


 今は非常事態だ。バルボアが司令部の代わりをするくらい仕方のないことだ。


『東のゴブリン部隊は、ほぼ殲滅。』

『歩兵隊は三割が門を出ました。』

『中央ワイバーンが暴れています!』

『騎馬兵隊出撃準備整いました。』


 各隊長から次々と報告が入ってくる。それらを逐次ギルダーに伝える。

 ギルダーの隣では、親衛隊員が手元の地図に書き込みながら情報を整理している。


「ギルダー殿、状況は分かってきましたか?」


 バルボアは軍では補佐役を任される事が多かった。性格を考えると適性があったのだろう。

 階級は年季の長いバルボアの方が高いが、将軍補佐は立場上、兵士長とほぼ同列。それに責任者は兵士長だ、自分がサブに徹する事はやぶさかではない。


「まあ、何とか。我々はシヘーの野営地の真裏に出たようですね。出会い頭の衝突事故みたいなものです。」


 ギルダーは地図を見下ろしながら、ニヤリとする。


「しかし、相手にとっては最悪の奇襲となったでしょう。」


 ギルダーは先程までの焦燥から、すぐに落ち着きを取り戻していた。さすが若くして兵士長となるだけの器は持っているようだ。


「奇襲の仕返しだな。」


 相手は、山越えをしてキンユーへの奇襲をしてきたシヘーの部隊だ。期せずして意趣返しをしたことになる。

 バルボアの言葉にリラが続ける。


「奇襲もやられたらやり返す。倍返しだっ!」

「倍返しどころか殲滅してやりましょう。バルボア殿、先に騎馬兵隊を出撃させるよう連絡お願いします。」


 ギルダーに頼まれ、再びバルボアは念話で指示を送る。


***


 空飛ぶ影はだんだん大きく濃くハッキリとしてきた。

 かなり近づいて来ている。


「バルボア様に繋がらない!何とか連絡を。」


 タラは隣りにいる兵士に声を掛けるが、近くにいる歩兵隊の兵士たちでは、せいぜい班長、小隊長レベルまでしか連絡がつかない。連絡の伝言ゲームをしていては間に合わなくなる。


 バードマンが何か手に持っているのが見えた。

 武器かな。だとするとヤバくない?


 先程までの密集状態は幾分改善したとはいえ、まだまだ自由に身動きが取れる状況ではない。

 つまり逃げられない。


 建物の中に入れば助かる可能性が上がるかもしれないが、この状況で入口まで行くのは至難の技だ。

 …いや、このオーガの怪力があれば、兵士を押しのけて動けるんじゃないだろうか。

 待て待て、よしんば入口に辿り着けたとしても、中には兵士が詰まっていて入れないじゃないか。


 打つ手なし。


 タラたちは、大きな声を出して敵が空から来ていることを伝えようとするが、壁の外の戦闘音と、出陣していく兵士の鬨の声に掻き消される。

 こういう非常時の連絡体制がきちんと取れて居ないのは、第一籠城軍が戦闘を経験していないためかもしれない。


 …あ、そうだ。


「リラになら連絡がつく!」


 忘れてた。私はリラと連絡先交換してるじゃないか。

 あ、リラに「様」つけるのも忘れてた。


「早くしろ!」


 タラが急かす。


 バードマンたちはかなり近づいて来ていた。夜に紛れていて、まだ私でないと見えないようだ。

 私はリラの顔を思い浮かべ、念話の魔法を使う。


『もしもし!』

『モシモシって、何〜?』


 こんな状況なのに、いつもの調子のリラだ。呆れると同時に、焦っていた心が少し落ち着く。


「繋がりました!」

「敵のことを。」


 タラは短く指示する。


『上空から敵のバードマンたちが来てます。もうすぐそこです!』

『オッケー。まーかっせて。』


 リラはふらりと演説台の方へ歩いていく。


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