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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
23章:超絶!瞬間移動要塞コーカ将軍府

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 直轄部隊の居残り組から見送り会は非常に簡単なものだった。

 集合時刻までの短い時間。将軍府に向かう私たち十名に対して、ソル隊長から挨拶があり、居残り組の隊員たちと握手を交わす。それだけの本当につまらない見送り会だった。

 もう少し名残惜しんでくれても…とは思ったが、行って帰ってくるだけだから、そんなもので仕方ないよね。


 私は瞬間移動の魔法陣が発動していく様子を見ながら、そんな事を考えていた。



  ズズゥン……


 将軍府の振動が止まった。巨大な魔法陣が消えていく。

 空は真っ暗で、星が輝いていた。ここにはまだ夜明けの境目が来ていない。


 ボクっ娘神様(ポジトロ)は「私たちの世界は、この異世界のコピーだ」と言っていた。

 既に空が白みはじめていたコーカ王都との時差は、私たちの世界と同じで経度の差か。北部と言っても、少し西寄りの地域なのだろう。



 私は黒い夜空を見回す。

 いや、一方向だけ空が真っ赤に染まっていた。

 街の灯り…いや、あんなに激しい赤になることはないはずだ。


 火事。

 一軒や二軒の燃え方じゃない。火災。災害レベルで燃えているように見える。


 キンユーの街は燃やされているのだ。

 将軍府に詰めている全員が直感した。


 リラも思わず息を飲む。


「うおぉぉぉぉ!」


 どこからともなく兵士たちの雄叫びが聞こえる。


 同胞を攻撃された怒り、眼前まで戦争が迫っているという恐れ、そして暗闇の夜空を焦がす炎に対する昂り。


「おおおおおおぉぉぉぉ!!」


 前庭、建物の中、裏手、至るところから複雑な感情を含んだ雄叫びが響き合う。


 この息も詰まりそうな密着の中で、どこからこんな声が出てるんだろう。

 私には理解できなかった。


 そもそも、王都の防衛隊である第一籠城軍に所属する兵士たちに、最前線で戦うという意思や覚悟はなかったと思う。

 それでも彼らは戦わなくてはならない。

 自分の国を、自分の仲間を、自分の誇りを、そして自分自身を守るために。


 雄叫びは重なり合い、将軍府全体を揺らす。


 ガチャン!


 兵士たちの熱意に耐えきれず、城壁の門が勢いよく開き、兵士が飛び出していった。


 始まるんだ。私は戦争を目撃することになるんだ。

 私には恐怖しかない。どうして彼らは行くことができるんだろう。


 最初に出陣するのは魔導兵隊。人数が多いが装備は少ないので、隙間を詰めるように門の前に並んでいたのだ。

 彼らの基本的な装備は杖とローブ。身軽さが売りだ。また、奇襲を受けても、防壁魔法等である程度の対処ができる。後方支援だけではなく、尖兵としても有用な兵種なのだ。


 次々と魔導兵が赤い空の方向、キンユーに向かって整列し、陣形を取る。彼らの中には空を飛べるものも居るが、これからの長丁場を考え、少しでも魔力を温存するために門から出ていく。


 まずは魔導兵が周囲の安全を確認し、次の部隊が門から出ていくという算段になっていた。



「もー!勝手にぃ!」


 リラ将軍が地団駄を踏んで悔しがる。


「私のセリフが飛ばされた…」


 実は「そろそろいいか…。いいぞ、敵を鎮めろ!」という格好良い(とリラは思っている)セリフを準備していたのだ。

 しかし、キンユーの様子に思わず頭が真っ白になってしまった。


「将軍の一声があってから出発でしょうが!」


 リラの怒りの声は、兵士たちの雄叫びの前に掻き消された。



 魔導兵の後に続こうと、歩兵隊が準備する。

 段取りとしては、魔導兵の安全確認後に将軍府を出たところで全軍が整列し、リラの挨拶の後でキンユーに入る。私たちはリラとここに残り、問題がないことを確認したら将軍府をコーカ王都に戻すのということになっていた。


 魔導兵が出て行ってくれた分、前庭の混雑には少し余裕ができる。とはいえ、まだまだ隣の兵士と密着したままだ。

 しかし、タラが焦ったように、キョロキョロとし始めた。


「ちょっと待て。なんであっちが燃えてるんだ?」

「?」


 その焦り方は尋常じゃなかった。普段のタラはあまり慌てるような男じゃない。


「予定では、キンユーは反対側にあるはずなんだ…」


 今回の瞬間移動について、実際に制御を行っているのは工兵長指揮下の整備隊の魔法班だ。魔法陣に詳しい隊員が揃っており、瞬間移動の座標指定だの重量計算だのはそちらが専門にやっている。

 リラは魔法陣を起動するだけの簡単なお仕事しかしていない。


「到着地点が全然違うんじゃないか?」


 タラたちは今回の作戦について夜通し会議をし、調整を行った。

 しかし、実戦を控えて将軍直轄部隊の出る幕はない。あくまでもリラ将軍の護衛と将軍府の警備の任務しか与えられなかった。しかも将軍の護衛は親衛隊のおまけだ。

 だから、私たち将軍直轄部隊は蚊帳の外。前庭の端っこで他の部隊が出ていくのを待っているだけ。


「誰も止めない、気付いてないのか!?」


 タラの不安を知らずして、歩兵隊が門から出て行き始める。

 そんな事より、とにかく兵士たちは、この人口密度の高い空間から脱出するのに必死だ。


「行くぞぉぉ!」


 歩兵は最も基本的で最も人数が多い兵種だ。様々な状況で各種任務に対応でき、最終的には戦闘の勝敗を決めるのも彼らだ。

 それぞれが様々な荷物を持ち、消火、救急、防衛、反撃と全ての仕事をこなす。


 門に近い兵士から少しずつ外へと駆け出していく。


 その時だ。


「わぁぁぁぁ!」


 門の外から叫び声。


  キン!キン!


 金属同士がぶつかる音。


  パンパン


 何かの破裂音。銃声のようにも聞こえる。


「ギャアアア!」


 悲鳴? それとも鳴き声?


  ドゥン


 どう表現して良いのか分からない低い振動。


 門の外で何かがあったのだ。

 歩兵隊の足が止まる。


 魔導兵の一人が壁を飛び越えて戻ってきた。空を飛んでいるということは、魔力を節約している状況ではないということだ。

 将軍府の上空から彼は叫んだ。


「敵襲!!!!!」


 最悪だ。


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