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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
22章:神様再び

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 日が沈んでいく。コーカ王都が茜色に染まる。


「夕焼けか。明日は晴れだな。」


 …いや、待てよ。


「関係ないか。異世界では天気がどう変化してるかなんて分からないよな。」


 私はブツブツと独り言を言う。

 しかし独り言を聞かれる心配はない。私は、自分の個室で仮眠を取ることができることになったのだ。他の人たちは相部屋らしいが……オーガと一緒というのは嫌だったんだろうか。

 起こしてくれるのはゲンらしい。つまり、またビンタで起こされるのか。


「そろそろ寝ないと。」


 深夜には起きて準備を始めなければならない。

 ただ、まだ眠たくない。こういう時には無理に寝ようとすると逆に眠れないって聞いたことがある。


「転送魔法?」


 コロンからだ。

 なんだろう? 魔法陣が開く。


「プリンだ!」


 プリンのカップ二つとお茶のカップ。


 さすがコロンさんです。

 まじか。すごいな。本当に気が利く。

 片付けで疲れた体に甘い物は最高です。


 あのドタバタの最中(さなか)、いつプリンを作っていたんだろう。


 早速、お茶をいただく。

 ホッとする。

 コロンの淹れてくれたお茶は美味しい。


「お礼しなきゃ。」


 と思いつつ、目の前のプリンの誘惑に勝てない私。

 とりあえず一口いただく。


「うまっ!?」


 前回よりも食感が良くなっている。舌触りの滑らかさが違う。

 甘さも少し抑え気味にして、より卵の味が分かるように……

 要は、美味しい!


 プリン一つを食べきったところで、コロンに念話魔法を掛ける。

 出てくれるだろうか。

 忙しいかな。


『もしもし、コロンさん?』

『こんばんは。』


 良かった繋がった。

 私はベッドの上に移動する。


『プリン、ありがとうございました。』

『いかがでしたか?』

『とても美味しかったです。よくプリンなんて作る時間ありましたね。』

『あの後、何度か練習しましたから、すぐに作れますよ。』


 さすがコロンだ。魔法で早く冷ませるというのも大きい。


『コロンさんは、将軍府が瞬間移動できる事を知ってたんですか?』


 もう少し話していたいから、別の話もする。


『そうですね。でも、リラ様から言われるまでは忘れてました。』

『やっぱり、この作戦はリラ様の発案ですか。』


 そうじゃないかと思っていたんだ。


『はい。リラ様はキンユーの危機を想定されておりました。』


 え、ホントに?

 そんな伏線あったっけ? (※1)


『実はそれから将軍直轄部隊に下調べや準備をさせていたようです。』


 なにそれ。


『もしかして、リラ様って優秀?』


 言ってから気付いた。今のはかなり失礼な発言だ。


『はい、とても優秀な方です。普段はそれを隠しておられます。』


 気付かれなかったようだ。コロンが天然で助かった。


『隠してって…何故ですか?』

『リラ様のご兄弟は、東宮様を除いて皆様お亡くなりになっています。』


 それは聞いたことがある。暗殺されたんだっけか。


『馬鹿なフリをしていれば、殺されることもないだろうとお考えなのです。…これは秘密ですよ。』

『もちろんです。』


 王族同士の権力争いに巻き込まれないように、あんな言動をしてたってこと?

 となると、犯人は……


 いや……なんか、怖い話になりそうだ。ちょっとだけ話のベクトルを変える。


『リラ様のマッサージ師になりたいという夢もそうなんですか? どう見ても本気だったけどなぁ。』

『あれは本気だと思います。リラ様は王位に興味がありませんから。』


 コロンはフフフと笑う。その声でコロンの笑顔が思い浮かぶ。


『コロンさんにも夢とかあるんですか?』

『そうですね。退役したら結婚して、料理店を開きたいと思ってます。』

 

 よし、怖そうな話から逸れた。


『そして、皆様に教えて頂いた異世界料理を振る舞うというか、広めていきたいですね。』

『素敵ですね。』

『ありがとうございます。シヘーとの戦いが終わったら、退役して準備を始めようと思ってます。』


 おぉい!!

 縁起でもない。

 やめてよね、変なフラグ立てないで。

 明日前線に出るというのに、「この戦いが終わったら結婚するんだ」みたいなセリフを吐いては絶対に駄目。


『え…結婚されるんですか?』

『と言っても、まだ相手がいません。』


 セーフ!

 良かった。まだフラグは立ってない。


『コロンさんならモテそうですけど。』

『気になっている方はいるのですが…。』


 おぉ、恋バナに展開した。

 ちょっと眠たくなってきたが、是非とも聞いておかねばならない。


『誰ですか?』

『秘密です。』

『そこまで言っておいて!?』


 おいおい。「気になる人がいる」なんて言葉、相手を聞いてくれって言ってるのと同義でしょう。


『教えてくださいよ。』

『明日は早いですから、早く寝てください。』


 コロンが誤魔化す。


 …まさか私ということはないか。

 大丈夫。私はそこまで自惚れてはいない。もっと突っ込んで聞いてやる。


『親衛隊の人? 直轄部隊? 私の知っている人ですか?』

『知っておられる方かもしれません。』


 キタコレ。

 誰だ、誰だ。


 しかし興味と裏腹に眠気が強くなってきた。ちょっと横になる。


『えと、あの…告白しないんですか?』

『そうですね。キンユーから戻りましたら、その方に話をしてみます。』


 おおおぉぉぉぉい!!!

 せっかく消えたフラグを、また立てるなよ。


『もうだいぶ眠たいんじゃないですか?』

『えぇ、はい。いや、でも…』


 もう目を開けていられなかった。

 プリンとお茶に催眠魔法が掛けられている事を私は知らない。


『では、お休みなさいませ。』


 …いかん、いかんぞ。

 このまま寝てしまうと、コロンさんの死亡フラグが立ったままに………


   プリン…もういっこ……


  な。


 …


***


「起きろ。」


 突然、私は起こされた。

 しかも起こしたのはゲンじゃなかった。

 そこに立っていたのは、


「ボクっ娘神様!?」


※1 「そんな伏線あったっけ?」

 ありました。

 六十九話参照「要は、キンユーがヤバいってことでしょ。」

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