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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
21章:引っ越すと、どこに片付けたか分からなくなって、結局新しく買うはめになる

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 将軍府に戻ると、玄関前に大量のゴミ……いや、荷物が山積みされていた。


「だぁかぁらっ!これは要るんだって!」


 ゴミの山の前で騒いでいるのはリラだ。山の中から額縁を引っ張りだしている。リラの部屋に飾ってあった筋肉ダルマの写真だ。(二十一話参照)

 他の荷物から落ちた埃にまみれながらも、彼らは誇り高くポーズを取っている。


「リラ様、緊急事態ですぞ。ある程度は諦めてください。」


 ソルは、そうは言いながらも額縁の救出を手伝う。

 このじいさん、やはりリラには甘い。


「ちょっと、手伝ってよ!」


 リラは後ろに控える侍女二人にも手伝うよう指示する。彼女たちは仕方ないなぁと動き始める。


 …あれ?侍女が二人とも小さいぞ。

 今まで凸凹だったのに。

 小さい侍女の、更に小さい方。見知った顔だ。


「あっ! コロンさんじゃないですか。おひ…」


 危ない危ない。「お久しぶりです」と言いそうになって言葉を飲み込む。

 コロンが私の侍女じゃなくなって、まだ三日じゃないか。こんな短期間を「お久しぶり」とか言ってしまったら、未練がましいやつだとか思われてしまう。


 コロンは何人もの転生者の侍女をこなしてきたプロの侍女だ。毎日一緒にいた三ケ月という感情も、きっとビジネスライクに切り替えて……


 そんなふうに考えれば考えるほど、泣きそうになる。零れそうな涙を我慢する。


 コロンも私に気が付いて、こちらの方へ挨拶にくる。


「あ、逃げないでよコロン!」


 リラの悲痛な叫びが聞こえた気がしなくもないが、コロンは私の前まで来ると、会釈をした。


「お久しぶりです。お元気でしたか?」


 あっけらかんと「お久しぶり」と言ってくれた。なんだ、そんな気にする事なかったのか。

 いつもどおりのコロンに会えたことに込み上げてくるこの感情はなんだろう。


 多分「嬉しい」んだ。

 コロンも私と同じ気持ちを持ってくれていたと分かった喜び。


「あの、その、お久しぶりって、言っても、まだ、三日しか、たって、ないです…」


 泣きそうで、上手く喋れない。


「そうですね。寂しかったですか?」


 そう言ったコロンの笑顔は、イタズラっぽく見えた。


「え、いや、そんなことは。」


 否定したが、ボロボロと流れ出る涙が肯定を認める。

 そうだ、私は寂しかったのだ。


「また泣いてる。泣き虫オーガだな。」


 ソルが揶揄する。

 私、あなたの前で何度も泣いた覚えはないんですけど。


 息を深く吸って、ゆっくりと吐く。


「だ、大丈夫です。」


 コロンは、私が落ち着いたのを見計らってから、


「昨日から、リラ様の侍女の任に就きました。宜しくお願いいたします。」

「え、あ、こちらこそ、宜しくお願いいたします。」


 コロンの丁寧な挨拶に、私もついつい頭を下げる。


「っていうか、リラ様の侍女なんですか!?」

「はい。」

「なんでまた?」

「国家機密です。」


 コロンの顔は真剣だった。冗談ではなさそうだから、これ以上は聞いてはいけない。


「っていうか、手伝ってよ!」


 リラの叫びが再度響く。

 私たちの感動(?)の再会に興味はないらしい。そりゃそうか。月曜祝日の三連休の間に会わなかったのと、変わらないもんな。


「あと、二枚あったはず。」


 ちゃんとコレクションを把握してるんだ。さすが筋肉フェチ。

 仕方なく、リラが漁っているゴミの上の方をごそっと持ち上げてやる。


「おお。もう、それをそのまま台車に載せてくれ。」


 ソルが私の持ち上げたゴミを指差す。


「第一兵舎の修練場まで運んでくれ。」


 また…またトラック代わり…。


「なんだ、まだ泣いとるのか。」


 違います。この涙は哀愁の涙です。

 私の存在意義って何なんだ、ちくしょー。


 どんどん台車に載せられる荷物(ゴミ)

 しかも、今回は魔法で軽くなんてしてないから、かなり重い。


「頑張ってね〜!」


 お目当ての絵を全て回収したリラが、能天気にお見送りをしてくれる。


***


 何度となく兵舎との間を往復し、すべてを運び終わった。日は傾き始めている。

 結局、昼食抜きだった。お腹空いた。


 直轄部隊の隊員が、第一兵舎の会議室に集まる。それぞれが座る机には、料理が並べられていた。うまそう。


「今日はみな御苦労だった。」


 ソルの労いの言葉は短くて助かる。これがバルボアの挨拶だったら、無視して目の前の料理に手を付けてしまっていただろう。


「夕食には少し早いが、俺のおごりだ。しっかり食べろ。」


 昼食には遅すぎると思うけど。

 隊員たち全員がそう思ったに違いない。ソルの言葉と同時に料理を食べ始めた。その様子を見ながら、ソルは話を続ける。


「食べながら聞いてくれ。今回の作戦に全員が行けるわけじゃない。直轄部隊からは十名だけということになった。」


 え? 逆に言うと、ワンチャン行かなくても良いってこと。


「オーガと第一班、残りは特に希望の強かった四人。」


 いきなり駄目でした。行くことは決定済みです。これは既定路線だったのでしょう。

 希望の強い四人? きっと、キンユー周辺の貴族の御子息のみなさんです。

 私をそんなやる気満々の方々と一緒にしないでください。


「残る者にはすまないが、他の部隊との兼ね合いがあってな。短期間で戻れるとは思うが、留守を頼む。」


 ソルは、全員が行けないことを本当に惜しんでいるようだが、隊員の大部分は行かずに済んで良かったと考えているはず。

 …貴族の考えがそんなんで大丈夫か、この国。


「同行する者は夜更け過ぎに将軍府玄関に集合。残りは見送りだ。正門の外に集合。この兵舎に仮眠室を準備している。各自、仮眠を取るように。」


 行かないからと言ってお仕事終わりと言うわけにはいかないようです。

 居残り組のゲンたちは、ソルには気づかれないように残念そうな顔をする。


 …でも。そういう所、多分気付かれてると思うよ。


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