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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
21章:引っ越すと、どこに片付けたか分からなくなって、結局新しく買うはめになる

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 一通り説明が終わり、会議室からリラとバルボアが退室していく。


「意外過ぎるというか、急転直下で何がなんだか。」


 フォリントが眉間にシワを寄せる。それを聞いたタラも、頷いて肩をすくめた。

 直轄部隊長ソルが、みんなに声をかける。


「聞いてのとおりだ。作戦時間の明朝夜明け前までに準備をせねばならん。」


 部屋の空気がピリッとする。兵士たちの緊張感だ。

 作戦は頭に入った。これからは実際に体を動かしていかねばならない。兵士たちの顔付きが変わる。


「では、隊を二つに分ける。第一班は、瞬間移動後の将軍府の守備計画を検討する。班長はタラ。」

「はいっ!」


 タラが立ち上がり敬礼する。


「資料作成や他の部隊との調整力が必要だ。人選はお前に任せる。四、五人ほど連れていけ。」

「はい。」

「今夜は眠れぬと覚悟しておけ。」

「はい!」


 ソルが手招きする。

 タラは周囲を見回し、覚悟のありそうな人にあたりを付けながら、正面へと歩いていった。


 私が指名されませんように。徹夜残業なんてやってられない。

 …そもそも、このオーガの体では資料作成なんてできない。折衝なんてなおさらだ。だから、絶対に選ばれない。ちょっと自信ある。


 ソルが再び全体に声をかける。


「残りの者は、第二班。将軍府から無用の物を処分したり、第一兵舎まで運び出してもらう。班長は俺だ。」


 片付け担当らしい。

 転生前なら、間違いなく頭脳労働である第一班を希望しただろう。でも、この体では力仕事のほうが向いている。

 タラがソルの横に立つと、何人かの隊員が集まってきた。


「第一班に入れてくれ。キンユー市内の地理には詳しい。」

「キンユーの南方は俺の庭だ。俺に任せて欲しい。」


 さっき、めちゃくちゃ狼狽えまくっていたキンユー周辺の貴族の子息たちだ。故郷の危機に、故郷への愛が目覚めたらしい。われもわれもと立候補する。


「任されたのは、あくまでも将軍府の守備であって、キンユー自体の防衛計画ではないんだ。」


 タラが理性的に言うが、脳が沸騰してる連中には話が通じない。


 どこかでみたな、こんな感じ。

 ああ、あれだ。地下神殿で襲われた半魚の集団にそっくりだ。幻惑魔法かけてやれば、静かになるんじゃないかな。


「と、とりあえず、フォリント! 一人目はキミに決めた。それから…」


 タラは自分と仲の良い(中でも能力の高い)隊員四人を選んで、さっさと出ていった。

 当然、キンユーの連中は誰一人選ばず。


 賢い。

 そのうちの一人でも選べば、他の者が何故選ばれなかったかの説明がいる。そんな奴らを混ぜて引っ掻き回されるくらいなら、自分の信頼できる者だけで固めれば良い。


「さあ、残りの者は俺に付いてこい。」


 ソルの号令で、残り全員が将軍府の前庭に集合する。キンユー組はしょぼくれている。


「瞬間移動魔法は、重量と距離に比例するということは知っているな。」

「「「はいっ!」」」

「だから、将軍府の中の物を減らして、兵士や物資を入れられるようにしなければならん。」

「「「はいっ!」」」

「援軍部隊は、日暮れから集合を始める。それまでに搬出を終わらせなければならない。」

「「「はいっ!」」」


 みんないい返事だ。


「まずは、全員で建物内の装飾品や道具をここに運び出す。全ての部屋を壁と床だけにしなさい。」

「「「はいっ!」」」

「隊長、将軍の居室もですか?」


 ゲンが聞く。


「うむ…短期間だ。仕方あるまい。」

「分かりました!」


 早速、隊員たちは将軍府玄関のカーペットをはがし、カーテンを外し始めた。


「お前さんには、こっちの仕事をお願いしようと思ってな。」


 私はソルに手を引かれて、玄関先から外を回って裏手に向かう。


「ここにある倉庫。全部運んでくれ。」

「はぁ。」


 百人乗っても大丈夫そうな倉庫が六つ。

 何が入ってるか知らないが、要らないものはとりあえずここに入れてます感のある倉庫だ。

 これの中身を夜までに運び出すのか。


「できれば、倉庫ごと運んでくれないか。」

「はぁああああ!?」


 まさかの倉庫ごと。

 見てわかりますよね。私より大きいんですけど!


「ここに台車を用意してある。この上に倉庫を乗っけて、運び出してくれ。」

「ひっ、一人でですか?」

「お前さんならいけるだろ。はっはっはっ。」


 ソルの高笑いが響く。

 大きくて丈夫そうな台車が足元にある。


 意味わからん。私一人でできると思う根拠を示せ、エビデンスを見せろ!

 なんてこと、おくびにも出さない。出せない。


「とりあえず、やって()みます。」


 できないのを見たら諦めるだろ。

 腰を落とし、基礎の部分に手を掛ける。


「よっ。」


  ズズズ


 動いた。見た目より軽いぞ。


「ふぬっ!」


  グググッ


 倉庫が斜めに持ち上がった。


 上がる。上がるぞ。

 何だこの微妙な重さ。全力を入れれば持てるギリギリのライン。

 というか、基礎に固定してなくて良いの?本当に、ステンレスの物置を地面に置いているだけのようだ。


 一旦基礎の上に戻す。

 呼吸を整え、一気に持ち上げる。


「ほぁ!」


 変な声出た。ちょっと恥ずかしい。

 でも何とか持ち上がる。すごいなオーガのパワー!!


「くっ…」


 ゆっくりと台車の上まで持っていき、そっと下ろす。


  ズシン


「ぷはぁー。」

「うん。行けそうだな。」


 しまった。駄目な所を見せるんじゃなかったのか。失敗した。


「では、この倉庫を運動場まで運んでくれ。」

「は?」


 台車は一つしかない。

 これを運んで、戻ってきてまた乗せる。それを六往復しないといけないのか。

 なんで出来てしまったんだ、私。


「こっちだ。」


 ソルが運動場の方に歩き始める。


 台車で運ぶのも重い。

 ピラミッド作るのに巨石を運ばされた人たちって、こんな感じなんだろうか。

 重機やトラックのある世界が懐かしいよ、全く。


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