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公務員が異世界に転生したら、ただの役立たずでした  作者: M
3章:圧迫面接

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「さて、次。」


 兵士長ギルダーが真ん中の席を指差す。

 フクロウの人だ。

 あの嘴からどんな声がするのかと思っていたが、その体の大きさの割に甲高い声で話し始めた。まるで鳥のさえずりのような声。子どもみたいに可愛い声だ。


「あたしはテル…」

「名前は要らんぞ、羽根の亜人。」


 ああ、ギルダーめ。いちいちイライラするなぁ。

 名乗りなんて五秒もかからないって。そのやりとりをするほうが余計時間がかかるっての!


 怒っても仕方ないことがわかっているから、フクロウの人も静かに続ける。


「そうでした。前世をお知りになりたいのでしたね。」

「そうだ。」


 前世という言葉にドキリとする。

 前世かあ…やっぱり、私は一回死んだんだろうな。なんで死んだんだろう。

 私の最後の記憶は発令式。もし市長の訓示中に死んでたら、市役所は大騒ぎになってるよな。


 そんなことを考えているうちに、フクロウの人の話はどんどん進んでいく。


「あたしは看護士をしていました。」

「医療の知識は?」

「外科と内科を五十年はやっていましたから、新人の医者よりはあるつもりですよ。」


 おお!フクロウさんは人生の大々先輩でした。危うく声色に騙される(?)所だったよ。

 私はまだ社会人経験六年だ。

 後輩ができた頃から、自分もだいぶ先輩っぽくなってきたとは思っていたけど、フクロウさんからしたら私なんてまだまだひよっこだな。


「看護士か。それは良いな。」


 珍しくギルダーが誉めた。

 そして続ける。


「君は高所恐怖症ということはないかね?」


 その質問は飛べるかってことだよね。リザードマンに泳げって言うんだから、当然バードマンには飛べって言うよな。

 じゃあ、ギルダーは私に一体何を求めてくるんだろう。


「多分大丈夫です。高い所を苦手と思った事はないですよ。」

「素晴らしい。」


 ちょっと待てギルダー。

 フクロウさんはきっと七十歳前後だぞ。そんなおばあちゃん(もしかしたら、おじいちゃん?)にスカイダイビングやパラセーリングみたいなことしろって、酷じゃないか?

 体は若くても、ショックで倒れたりしないか心配だよ。


「機動力のある医療スタッフは、戦場に限らず、平時でも必ず役立ちます。」


 シェケルも誉める。


 おいおい、今までの圧迫面接はどこ行った。

 ブロンズさん涙目になってないかな。


「でもねぇ、魔法でチョチョイっと治せるんなら、看護士なんていらないでしょうに。」


 フクロウの人は鉤爪のついた指を振って、茶目っ気たっぷりに言う。


 ちょっとフクロウさん、自分から要らない子宣言しなくても。

 いや。これが、大先輩の余裕なのか。


「残念ながら、そなた達の思うほど魔法は万能ではない。」


 シェケルが言い切る。


「あたしの知識も役に立たないんじゃない?ほら、こんなに体のつくりも違うし。」


 フクロウの人は、自分の羽根を手でつかんで、ふるふると動かす。


「薬だって前世とは違うものだろうから、同じことはできません。成分も効果も別物かもしれない。だって世界が違うんだもの。」


 確かにフクロウさんの言う通り。別の世界では今までの常識が通じない。

 体の構造だって違うだろう。吸ってる空気だって、酸素じゃないかもしれない。血は赤くないかもしれない。骨もカルシウムじゃないかもしれない。


 特に私。

 なんだこの体は。

 オーガですよ。黒い血とか流れてそうだよ。骨もアダマンチウムとかかもしれん。

 マジで怖くなってきた。

 ちょっと泣きそうです、私。


 そもそも、ここにいる三人の転生者だって、同じ世界から来たとは限らないんじゃないか…。

 ブロンズさんやフクロウさんだって、人類が宇宙に進出してる世界や能力値が数値化されてる世界なんかから来たかもしれない。

 だとすると、ここに私の価値観を共有できる人はいないかもしれない。

 私は孤独なのかもしれない。


 ああ、考えがマイナスの方にしか行かなくなってきた。

 こんな面接なんてどうでも良くなって…。


 いやいや、待てよ。


 そうだ!あのウーロン茶を作った人。

 コロンさんが言っていた、前の転生者。

 その人は私と同じ世界から来たはずだ。だって食べ物の嗜好が同じなんだもの!


 よし。

 その人に会おう。

 その人の情報を集めよう。

 そのためには、もう少しこの城に居なくては。

 なんとかヤル気が出てきた。


「安心したまえ。」


 ギルダーがフクロウの人を見つめながら言う。


「エンドルの人間と君たちの世界の人間はそう変わらないのだ。あとで神話を読みたまえ。」

「「「神話?」」」


 転生者三人は同時に聞き返した。


 ギルダーみたいな効率最優先の嫌な奴(いや、この短時間で私が勝手にそう思っただけだが…)が、昔話、おとぎ話、作り話の集合体である神話なんてのを勧めるとは思わなかった。

 と言うことは、エンドルの神話というのは、信憑性がある歴史の話なのかもしれない。そして、神話の中には、きっとエンドルと私達の世界のつながりを示すものがあるのだろう。


 あ~。あの時、コロンさんから神話を聞いとけば良かったなあ。

 あの時は、コロンさんのことド天然だと思っちゃったけど、ちゃんと意味があったのか。

 あとでコロンさんに聞いてみよう。


 後ろに立ってるコロンをちらりと見ると、少し笑顔を返してくれた。


「羽毛の亜人には、飛行訓練を最優先だ。できるだけ速くな。」

「了解しました。」


 ギルダーの指示にシェケルは返事をしながら、紙に何かを書き込んでいく。


 これは採用面接と言うよりは、適正診断、研修計画じゃないかという感じがしてきた。

 なんだろう。もうシェケルのおっさんに任せて置けば、なんとかなるんじゃないかな。


 いや、ちょっと待て。

 ブロンズさんをギルダーが「使えん」って言った時に、もし、シェケルが「お任せください」と言わなければ、どうなったんだろう。


 …追放、…放逐、…監禁、…処分、

 嫌な言葉が頭をよぎる。


 ギルダーがこっちを向いた。


「最後は、お前だ。角の亜人。」


バードマンについて(エンドル設定)

 バードマンはスーパーヒーローではない。

 頭部が鳥であり、腕とは別に翼は背中から生えている。

 腕自体が翼のタイプはハーピィと呼ばれ、バードマンとは別人種である。

 フクロウ以外にも、タカやコンドル、白鳥やツバメなどのバードマンも確認されている。

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