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新聞部の先輩

 俺と花音は相変わらずの日常を送っている。花音と出かけた事をクラスメイトに見られていたものの、特に花音とバレることもなかったので俺は安堵していた。




 花音は俺から見られたことを聞いても「えー、そうなんですか? まぁ、ばれたらばれたで私がきー君と仲良しだっていうのを自慢するだけですけどね」と言いながら笑っていたけれど。






 あと明知にもそのことで色々話しかけられた。どうしてまぁ、そこまで気になるのだろうかとは思った。俺が女の子と仲よくしているのが不思議なのだろうか?





 そんなことを思いながら返事をしたものだ。




 そんなこんなあったものの、俺と花音が仲良しというのは特に公になることはなく、学園生活は平穏に進んでいた。

 このままの日々が進んでいくだろうと思っていたのだが、ある時、一つ上の学年の先輩に話しかけられた。




「上林君、少し聞きたいことがあるからいい?」





 的場和巳まとばかずみという名の先輩は、学園での茶色がかった髪を肩まで伸ばしている、美人系の先輩である。人当たりがよくて、目つきは鋭いけど優しい先輩だと噂されている。




 ちなみにこの先輩は新聞部に所属している。




 ……花音とは違った意味で人気な先輩が俺の名前を知っているということにもまず驚きだったのだが、一人で廊下を歩いていると急に待ち伏せしていたように出てきてびっくりした。

 なんだろうか。俺を待っていたということなのだろうか。何の用だろうと驚きながら、俺は返事を返す。






「何の用でしょうか」

「ちょっと来てくれない? 上林君って目立ちたくはないんでしょ? 私と話していると目立っちゃうよ?」

「あ、はい」





 あ、これは話をするまで俺を捕まえる気満々だなと分かったので、頷く。何の話なのかも分からないし、一先ずついて行くことにした。

 ついて行った先は近くになった空き教室である。入った瞬間、鍵を閉めていた。本当に何を話すつもりなのだろうか。

 そう思っていたら、的場先輩に座るように促されて、向かい合うように座る。






「ねぇ、上林君って、『聖母』様と仲良しでしょう?」




 そして真正面に座る的場先輩の告げた言葉に俺は言葉を失ってしまった。その態度で俺が花音と仲良しだというのが分かったのだろうか。的場先輩は面白そうに笑っている。





「ふふふ、やっぱり!! 私の目に狂いはなかったわね。上林君が出かけていたスイーツ祭り、私も行っていたのよね。それで見かけた時、雰囲気違うけどあの『聖母』――天道花音ちゃんっぽいなっては思っていたのよ。しかもかのちゃんって呼んでいたの聞こえたもの。それで『聖母』様かなと」





 うわ……、かのちゃん呼びが悪かったのか。しかしそれで知られるとは思わなかった。

 というか、これどうなるんだろう。新聞部ということは、学園新聞にでも掲載する気なのだろうか。そんな風に不安になる。





「あ、そんな顔しなくていいわよ。私は新聞に掲載する気はないから。確かに大スクープだけど」





 その後、そう言って笑われて驚いた。それなら何で俺に話しかけてきたのだろうか。





「えっと、じゃあ、何で確認を……?」

「私はスクープをとるのが好きだわ。広めてこれをスクープしたのが自分だと知らしめるのも好きだわ。でも特大スクープを自分だけ知っているというのもとても楽しいのよ」






 何だかよく分からないが、俺と花音の事をばらす気はないらしい。

 それなら別にいいけれど、ただこっそり知っていた楽しむというだけならわざわざ俺に問いかける必要ないと思うのだが。






「それでね、上林君。お願いなんだけど、私、『聖母』様と上林君が一緒に居るところを是非みたいの」

「はい……?」

「私、こっそり育んでいる実は仲が良い関係とか好きなのよ。いやもう、そういうのをこっそり見られるというだけで興奮するもの。もちろん、お願いを聞いてくれなくても折角の良い関係を崩すつもりはないからばらす気はないけど、駄目かしら?」





 期待するような目でそんなことを言いながら、的場先輩は俺の方を見る。

 俺は別に花音が良いというのならば構わないが……。





「えーっと、一旦花音に聞いてから連絡でいいですか」

「もちろん!! あ、これ私の連絡先ね」





 凄い勢いで嬉しそうに頷いた的場先輩は俺に連絡先を教えてくれるのだった。





「じゃあ、良い返事を期待しているわ」




 そう言って的場先輩は笑顔を見せて、空き教室から去っていくのだった。





 とりあえず花音に聞こうと、俺はそんな風に考えるのだった。

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